マインドフルネスとは!効果や実践法、研修セミナーを紹介【IT業界人事向け】
ビジネスにおけるマインドフルネスについて徹底解説したハウツー記事です。モンキーマインド法やメタ認知法などの手法も紹介しています。初心者人事の方へ向けてわかりやすくお伝えします。
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禅や瞑想の要素を取りいれた研修をGoogleが導入していることが話題になりました。
マインドフルネスと呼ばれる研修です。
Googleだけではありません。
Intel、Facebook、Microsoft、SAP、vmWareなど大手IT企業が、マインドフルネス研修を導入しているというのです。
IT企業に禅や瞑想が、どう関係するんでしょう?いったいどんな効果があるんでしょうか?
なお本記事は、TechAcademyの法人向けIT研修での実績をもとに紹介しています。

今回は、マインドフルネスに関する内容ですね!

どういう内容でしょうか?

効果や今日できる実践法、研修セミナーについて詳しく説明していきますよ!

お願いします!
目次
マインドフルネスとは?
日本マインドフルネス学会では、マインドフルネスとは「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義しています。
簡単に言うと、「思い込みを取っ払って、今の自分を客観的に見ること」と言えるでしょう。
マインドフルネスのスキルを身に付けると、自分自身の心をリラックスさせ、意図的に精神が安定した状態にすることができます。
余計なことを考えずに、仕事に集中できる状態と言えるでしょう。
部下や上司やクライアントのクレームにイライラし、仕事が手に付かない状態を、自分の意志だけで解消できるんですね。
Appleのスティーブ・ジョブズも、自分の中のマイナスの衝動を抑制し、画期的な製品を生み出すことに集中するためにマインドフルネスを利用していたのだそうです。
マインドフルネスは、特にリーダーに必要なスキルと言われています。
リーダーがイライラしていると、チーム全体の生産性が落ちますし、メンバーも萎縮してコミュニケーションが取りにくくなるからです。
もし、リーダーがマインドフルネスによって、意図的に心を安定させることができれば、自身のストレスを減らすとともにチームの生産性もあがると言えるでしょう。
マインドフルネスのメソッドは多数ありますが、スピリチュアル感の濃いものは技術者には受け入れにくいものです。
そこでGoogleでは、エンジニアに受け入れやすいように、技術者向けにマインドフルネスを再構築し「SIY」と名づけました。
Search Inside Yourselfの略です。
「大自然の流れが」とか「エネルギーが高まっていくのを感じて」など神秘的な言い回しを避け、心の動きを1つの生理現象と捉えて、理論立てて学べるようにしたんですね。
作り出したのは、初期のグーグル検索アルゴリズムの開発者、チャディー・メン・タン。
SIYはエンジニアが作った、エンジニアのためのスキルなのです。
マインドフルネスと瞑想の違い
「マインドフルネスって、要するに瞑想の研修のことでしょ?」
実は、ちょっと違います。
マインドフルネスは自分の心を客観的に見つめ、安定した心の状態を作り出すメソッドです。
リラックスしていて、精神が落ち着いている、仕事に集中できる状態を作り出します。
マインドフルネスで、忙しくて、ストレスもたまっており、つい部下を怒鳴りつけてしまいそうな状態から、精神が安定した状態へと変化させられます。
その1つの方法が瞑想です。
マインドフルネスのためにおこなう瞑想を、「マインドフルネス瞑想」と呼びます。
マインドフルネスの効果
マインドフルネスを実践すると、どういう効果があるんでしょう?
生産性があがるだけ?
企業側だけでなく研修を受ける本人にもメリットがないと、本気で学んでくれませんよね。
マインドフルネスには、以下の様な効果があるとされています。
- 慢性疼痛(とうよう)、喘息、糖尿病などの身体的な状況を改善
- 不眠、恐怖症、摂食障害など精神的に困難な状況を改善する
- 感情コントロールができるようになる
- 思いやり、共感の能力があがり、チームワークが向上
- 交感神経を落ち着かせ、副交感神経を活性化
- 免疫システムの働きが向上
- ストレスが軽減。仕事の生産性アップ
- 想像力が高まる
普段からエビデンスやデータを大事にするエンジニアに話したら、「そんなことあるわけないだろ、バカバカしい」と全否定されそうな内容です。
実はマインドフルネスというのは、もともとMBSR(マインドフルネス・ベースド・ストレス・リダクション)という慢性疼痛という体の疾患に関する研究でした。
マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士が、ストレス低減のために開発したプログラムだったんですね。
慢性疼痛は、原因がわからないことが多い、ずきずきした痛みを指します。
痛いから医者に行ったら「正常ですね」と言われてしまう痛みの症状です。
博士が研究を進めるうちに、MBSRは慢性疼痛だけでなく、ストレス性胃腸炎、頭痛、高血圧、不安障害などの精神障害にまで幅広い効果が認められました。
注目を集めた結果、脳科学者の目にもとまり、脳科学の面からも急速に効果の検証が進みます。
マインドフルネスをおこなうと、学習や記憶や感情コントロールにかかわる脳の部分が活性化されることが科学的に証明されました。
また、実践を続けることで、側頭頭頂接合部という脳内にある思いやりや共感など、優しい感情に関する重要な部分が大きくなることが明らかに。
同時に、闘争本能を起こす扁桃体の灰白質が減少していることも明らかに。
つまり、マインドフルネスを実践していくと、
- 学習力、記憶力がアップ
- 共感力がアップし、チームワークが向上
- 怒りが抑制され、イライラが減る
ということが起こるんですね。
そして、脳内が改善されれば、体調も改善するというのです。
2000年以降、マインドフルネスは信頼できる心理療法として受け入れられるようになりました。
瞑想と科学が融合した、画期的な方法と言えるでしょう。
【今日からできる】マインドフルネスの実践法
注意力の基礎トレーニングで、マインドフルネス瞑想というものがあります。
以下のサイクルを繰り返すシンプルなものです。
- 静かに呼吸し、呼吸に注意を向ける
- 注意がそれて、自然と雑念が湧く
- 注意がそれたことに気づく
- 雑念を手放す
慣れてくると立ったままでもできるのですが、最初は椅子を1つ用意して、座っておこなうのが良いでしょう。
座り方は以下のようにします。
- 椅子に座る。
- 背筋は伸ばし、良い姿勢を保つ。
- 両足はしっかり床につける。
- 両手を自分の膝の少し太もも寄りのあたりに乗せる。
- 手は開く。手のひらは上でも下でもリラックスできる方向を向ける。
以下の要領で、呼吸します。
- 姿勢ができたら、ゆっくり目を閉じる
- 鼻から吸って鼻から吐く要領で、2~3回大きく呼吸する。
- 吸ったり吐いたりする空気の流れを感じる。
- お腹や胸、肺の動きを感じる。
- 自分を客観的に観察する。
雑念が出てきたら、以下のようにします。
- 雑念が湧いたり、注意がそれたら、そのことにただ気づきます。
- 無理に雑念を抑えるのではなく、自然に任せる
- 気づいたら、雑念を意識の脇にそっと置いて、意識を呼吸に戻す
コツは雑念が湧いても、「だめだうまく出来ない!」とか「雑念を出さないようにしよう」など、自分のことを評価、制御しようとしないこと。
呼吸を観察して、雑念が湧いたら、意識の脇においてまた呼吸を観察。
これを繰り返します。
「ああ、雑念が出てきたな。これは脇に、置いといて…っと」と、当たり前に起こる現象として対処するのです。
まずは、1日の中で時間が空いたら5分から10分を目安にはじめましょう。
毎日実践することが重要です。
慣れてくると立ったまま信号待ちの数十秒で、薄目を開けた状態でマインドフルネス瞑想が可能になります。
マインドフルネス瞑想による効果
マインドフルネス瞑想で、今起こっている物事や自分の感情をそのまま受け止められるようになります。
過去のトラウマや、未来の不安を切り離して、今の状況だけを冷静に考えることができるようになるんですね。
絶対怒られる、あんな失敗するんじゃなかった、これからいったいどうなってしまうんだ…などと、気ばかりが焦って仕事が手につかない状態のときに、マインドフルネスを使ってスッと心を安定させることができれば、難しい仕事の成功確率もあがることでしょう。
モンキーマインド解消法
モンキーマインドとは頭のなかでキーキーと騒ぐ雑念のことです。
忙しいなか、たまに休みを取っても、仕事のことや過去の失敗、未来の不安で頭がいっぱいになって、「全然休んだ気にならない」ということがあります。
モンキーマインドを頭から追い出すことができれば、心身ともにゆっくり休養を取れるんですね。
どうやって追い出せばいいんでしょう?心を無にして雑念を消す?
いいえ、マインドフルネスを使って、自分を客観視するんですね。
頭の中でぐるぐると渦巻く悩みや雑念を、頭の中で起こっている単なる現象と捉えるんです。
「雑念が騒いでいるな」
と、客観的に、他人ごとのように観察します。
すると不思議なことに、思考のループが止まり、落ち着けるようになります。
「ケガをしたら消毒をして止血する」「肩が凝ったらマッサージする」
体に対する対処と同じように、心のなかで起こるモンキーマインドにも、ただの生理現象の1つと考えて対処しましょう。
効率よく休息を取り、リフレッシュして仕事をするために、また、不意のトラブルに落ち着いて対処するために使えるテクニックです。
メタ認知法
メタ認知とは、自分を客観的に見ることです。
例えば、「アイツすごいムカつく!」「なんなんだアイツの態度!馬鹿にしてるのか!」と、同僚の発言に激怒している状態だったとします。
感情が湧き上がること自体は止められません。
ここで、ただただ自分を客観的に観察して「腹を立てているな」「胃のあたりが熱くなっているな」と自分自身を見つめます。
「腹を立てちゃダメだ」とか「なぜあいつはあんなことを言ったんだろう」とか考えずに、ただ観察します。
すると不思議なことに、一瞬怒りがスウッと収まり、感情で行動することなく、自分をコントロールする余裕が生まれます。
大事なポイントは、感情を止めることではなく、感情に行動を支配されないことです。
絶体絶命のピンチの中、怒りや悲しみに支配されていても、一瞬冷静になれるスキルがメタ認知なのです。
ジャーナリング
自分について、テーマを決めて、一定時間の間ひたすら書くことです。
「私にやる気を起こさせるものは…」「私の心を傷つけるのは…」「今、気になっているのは…」などを、紙にペンで書き出していきます。
人に見せる必要はないので、正直に書いて無意識の中にあるものを言語化していきます。
きっちり文章にしなくても、単語を並べて箇条書きにするような、書きやすい方法でよいです。
漠然と感じていた無意識の感情を文字にすることで、具体的・客観的に感情の正体を見ることができます。
この実践を繰り返すことで、心の中にあるモヤモヤを自分と切り離して考えることができるようになります。
さらに自分を客観視でき、自己認識力の向上にもつながります。
具体的には、どういう効果が出るんでしょう?
失業した人に毎日20分5日間、自分の気持ちについて書いてもらったグループは、書かなかったグループに比べて新しい仕事を見つけられる確率が高くなったということがわかりました。
また、毎日15分ずつ何日か連続で学生にジャーナリングしてもらったところ、しなかった学生に比べて体調と血行が良くなり、成績があがる効果があったといいます。
企業での実践事例
100万人が使う名刺アプリEightを開発した会社、Sansan株式会社でも、Google発のマインドフルネス研修SIYを導入しています。
人事部主導で導入を進めた事例です。
CEOの寺田氏は、起業前にシリコンバレーで勤務経験があり、瞑想の実践者であったとか。
会社のトップがマインドフルネスの効果を実感していたのは導入成功の大きな要因でしょう。
2017年にSansan株式会社のマネジャー55人全員が2日のSIY研修を受けました。
このとき、マネジャーたちは、不快な刺激、不安な状況に置かれた時にカッとなって感情で行動してしまう「感情ハイジャック」が起きること、メタ認知の方法を学び共有しました。
何があっても一旦落ち着いて行動できるようになり、より俯瞰した視点から人の話を聞くことができるようになったんですね。
その結果、メンバーとのコミュニケーションがよくなり、チームワークの向上が感じられたため、全社員約400名に半日の短縮プログラムを導入。
人事部では「すぐに目に見える結果は出ないだろう」と考えていたところ、良い意味で予想を裏切られた形になりました。
研修実施後には、効果を実感できたのか、営業系メンバーが「聴くランチ」を自発的に開催。
相手を説得するコミニケーションではなく、相手の意見や歴史を聞くための時間を作ったんですね。
すると、相手の話をしっかり聞いて素直に受け止められるようになり、メンバー同士の関係も良くなったとのこと。
また、人事部でも、自由参加型のジャーナリングイベントを始めました。
ハーブティやお菓子も用意したカジュアルなもので、毎回違うメンバーが集まってきているそうです。
Sansan株式会社は、全メンバーがSIY研修を受けています。
マインドフルネスを会社にうまく取り入れるには、コミュニケーションを取るメンバー同士が「マインドフルネスとはどういうものか」を知っていることが重要なのかも知れませんね。
マインドフルネス研修セミナーの紹介
GoogleのSIY(Search Inside Yourself)を日本の企業に合わせてカスタマイズした研修を提供しているのが、 マインドフルリーダーシップインスティテュート。
グーグル本社のSIY開発チーム、SIYLIと連携しています。
研修は、7週間コース、6時間(1日)コース、3時間(1日)コースなどがあり、目的に応じて内容をカスタマイズ可能。
例えば、6時間コースだと以下のテーマに沿って研修が進められます。
- マインドフルネスによるエモーショナルインテリジェンス(EI)の高め方
- マインドフルネスによるメンタル力(レジリエンス)の向上
- マインドフルネスによる観察力(気づきの力)の高め方
- マインドフルネスによるインナーモチベーションの鍛え方
- マインドフルネスによるセルフリーダーシップの築き方
マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)では、月に1度マインドフルネスに関するセミナーをおこなっています。
マインドフルネスの基礎を聞くことができます。
SIYは、エンジニアのために作られましたが、決して専用というわけではなく、論理的な考え方をする人に受け入れやすく作られたメソッド。
まずは、人事担当のあなたがメンバーに先駆けて研修を受けることで、ご自身の仕事のストレスを減らすのに役立てつつ、効果を実感してみるといいかも知れませんね。
監修してくれた方
田上 敏光
キラメックス株式会社 ビジネス事業部 人材系企業で採用支援・人材育成事業・toB向けクラウドサービス事業に従事。 その後、「弁護士ドットコム株式会社」にて新規事業の企画立案・運用に携わる。 現在は、キラメックス株式会社にてプログラミング教育を通して「個の選択肢、可能性を広げること」「新たなキャリアに伴走すること」をミッションとし法人向けに「IT人材採用支援」および「IT研修」を担当している。 |

内容分かりやすくて良かったです!

田島君も、今日から実践して組織づくりに役立てましょう!

分かりました。ありがとうございます!
TechAcademyでは、従来の講義型研修とは違い、実務を想定したカリキュラムで実践的スキルを短期間で確実に身につけられる法人向けオンラインIT研修を展開しています。
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