HRMとは!新時代に求められる人材マネジメント法【人事向け】

人事向けにHRMとは何か詳しく解説しています。人材のマネジネント手法として話題になっているHRMですが、具体的にHRMは何を行うのか、どういった効果があるのか解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

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大学や高校を卒業した後は地元の企業へ就職のが当たり前だった時代とは違い、今は日本全体が市場化したことで多種多様な人材が一つの企業に集まっていく傾向にあります。またグローバル化が進んでいることもあり、日本企業の中で外国人が働くことも珍しいものではなくなりました。

今はコンビニでも外国人を見かけることがよくありますよね。一世代前の時代からすれば信じられないほどの変化といえるのではないでしょうか。 社会がこうした状況下におかれたことで日本企業は従業員の多様性を受け入れる必要に迫られています。

これまで通りの日本型マネジメントでは周りの企業に大きく遅れをとってしまうでしょう。 そこで注目されているのがHRMという人材マネジメント法。今回はHRMとは何か、具体的にどう取り組んでいけばいいかなどについて解説します。

 

なお本記事は、TechAcademyの法人向けIT・プログラミング研修での実績をもとに紹介しています。

 

目次

 

HRMの概要

HRMという名称は「Human Resource Management」の頭文字を取ったもの。日本語にすると人的資源管理と訳され、一言でその内容を説明すると従業員を会社の資源と考えてマネジメントすることだといえます。 従業員を資源として考えるというとなんだか聞こえが悪いと感じる方もいるでしょう。

ですが、これは人をモノのように扱うという意味ではなく、むしろこれまで以上に従業員を大切にしようという考えに基づいたマネジメント法なのです。 かつて会社が経営を行う際には商品や設備などのモノ、現金や株式などのカネこそが資源だと考えられていました。

しかし、HRMの根底にあるのは従業員、すなわち人材こそが会社を動かしているのだという意識です。この考えは会社の経営戦略に良い影響をもたらすだけでなく、そこで働く従業のためにもなる考え方といえるでしょう。

 

人材は育てられる資源

先ほども説明したように従来型のマネジメントで最も重要視していたのがモノやカネという資源でした。

しかし、これらの資源は手にした段階で価値が決まり、市場の動きなど外的な要因で価格が変動する場合を除き自ら価値を増やすことはありません。 一方で人材は教育を施したり業務を通じて成長したりすることでもともと持っていた価値を大きく引き上げられます。

入社時にまったくできる気がしなかった仕事を、数年後いつの間にかできるようになっていたということはおそらくこれを読んでいるあなたにも覚えがあるでしょう。 人材は今以上に成長する可能性を秘めている。

HRMはこれを前提とするマネジメント理論であることは忘れないようにしてください。

 

HRMとPMの違い

HRMに興味を持っている方の中には「PMなら聞いたことがある」という方も多いでしょう。PMはPersonnel Managementの頭文字を取ったもので、日本語では人事労務管理、もしくは単に人事管理ということもあります。

PMはHRMが世に知られる以前で主流とされていたマネジメント法です。 このマネジメント法の特徴は従業員をコストと考えること。例えば何か大きな事業を始める時、経営者一人の力ではとても達成できませんよね。

事業を成功に導くための戦力、つまりモノやカネ、人材が必要となるわけですが、これらすべてをまとめてコストと考えていたのが従来の考え方。この中でも人材を管理するために生まれたのがPMというわけです。

具体的な業務内容としては人材の採用や給与の支払い、人事異動などの再配置が挙げられます。従業員一人ひとりに目を向けるというよりはあくまで従業員という集団を管理する手法だったと考えてください。

そのため従業員個々の成長はそれぞれの現場に任せるという形がとられていました。 これに対しHRMでは人材を成長する資源と考えるので、一人ひとりの特徴や個性に目を向けて教育・研修といった投資を行います。

 

HRMの2つのモデル

単にHRMといっても、その中には大きく2つのモデルが存在します。そのモデルとはハーバードモデルとミシガンモデルというもの。それぞれの基本概念や違いを学び、HRMについての理解を深めていきましょう。

ハーバードモデル

ハーバード大学の経営大学院であるハーバード・ビジネス・スクールの経営学修士課程、いわゆるMBAの必須科目の中で登場するHRMモデルがこちらのハーバードモデル。一般的にHRMの話をする時はハーバードモデルを採用することが多いため、あえてハーバードモデルとは表記せず単にHRMモデルと表記することもあります。

ハーバードモデルの基本となるのは経営層と人事部の働きかけにより、その他従業員と協調的な関係を築き上げようとすること。ここで生まれた信頼関係によって養われる従業員の能力やポジティブな発想を経営に活かし、組織全体としての能力や他企業との競争力を高めることを目的としています。

ハーバードモデルで大切にされるのは従業員が働くことに対するモチベーションを高めること、会社という組織への帰属意識をもたせること、一人ひとりのメンタル面を十分にケアすることなどが挙げられます。

人事労務管理や組織行動論など、これまではバラバラに考えられていた分野をHRMとして一元的にまとめて考えるべきと提案したことで経営学の世界に大きな影響を与えました。ハーバードモデルは以下4つの領域から構成されます。

  • 従業員からの影響
  • ヒューマン・リソース・フロー
  • 報酬システム
  • 職務システム

従業員からの影響

これは従業員からの意見や提案を受け入れ、これをHRMシステムに反映させること。社内の状況や企業が業界内で置かれた立場を考慮し、その時々にあった最適なシステムを経営します。

具体的には現場で働いている従業員と面談をしたりアンケートをとったりすることで経営層と従業員の関係を改善する手がかりを探ります。

ヒューマン・リソース・フロー

従業員を成長する資源と考えて人材募集、採用、配置などを行うこと。それぞれの従業員が入社してから退職するまでの一連の流れを含んでいます。

報酬システム

外的報酬だけでなく内的報酬を充実させること。もっと簡単にいえば働くことに対するモチベーションを高めることです。給料や福利厚生だけを目的にするのではなく、仕事を完了させた時に感じるやりがいや達成感を得られる仕組みを作るよう取り組むことをいいます。

職務システム

従業員が自発的に行動できるようになることを目的とした領域です。それぞれの従業員に適切な目標を設定させ、業務を通じて自己実現欲求を満たさせることを目的としています。

 

ミシガンモデル

こちらもハーバードモデルと同様に大学名に由来しています。ミシガンモデルのもととなっているのはミシガン大学やコロンビア大学、ペンシルベニア大学のメンバーからなる研究グループが生み出したStrategic Human Resource Managementという本。

この本の名前をとってSHRMモデルと呼ぶこともあります。 ミシガンモデルの特徴はHRMを戦略的経営の一環として考えているということ。その構成要素は以下の3つです。

  • 使命と戦略
  • 組織構造
  • HRM

このようにミシガンモデルにおけるHRMはあくまで経営戦略があってのもの。企業の利益があってこそ人材マネジメントができると考えている点で人材をコストとして考えるPMと似ています。

ただし、ミシガンモデルにおいても人材は成長する資産という考えを採用しており、やはりこれまでの戦略的経営とは大きく違う意味を持っています。

 

HRMは具体的に何をするか

現在日本にある企業のほとんどは営業部、開発部など業務ごとに部署が分かれているかと思います。その中で人材の管理を行うとされているのが人事部や人事課。HRMを自社に取り入れるとなれば彼らが大きな役割を果たさなければいけないことは言うまでもないでしょう。

では人事部、人事課の従業員は具体的にどのような仕事をするべきなのか?大まかには以下の3つに分類されます。

  • 各従業員と信頼関係を構築する
  • 従業員の多様性を受け入れる
  • 各従業員への定期的な研修・面談

 

各従業員と信頼関係を構築する

記事の冒頭でも述べた通り、現在の日本社会では就職・転職活動の市場化やグローバル化が進んでいます。

多種多様な人材が一つの企業にあつまっていることから、これまでのように画一的な管理をするわけにはいかなくなりつつあります。無理やりこれまでのやり方を押し通そうとすれば従業員が不満を爆発させる結果となるでしょう。

人事担当者は人材をマネジメントする以前に人材を募集する段階から信頼関係の構築に努める必要があります。雇用契約を結ぶ前に会社側と労働者でお互いに何をしてほしいのか、何をしてほしくないかを明確にしておかなければいけないのです。

当然一度約束したからにはこちらからその約束を反故にしてはいけません。その従業員との信頼関係がなくなってしまうだけでなく、その他の従業員の間でも会社への不信感が醸成され、結果的に従業員からの不満を買ってしまうでしょう。 信頼を築き上げるまでには長い時間がかかりますが、その信頼が壊れてしまうのは一瞬。会社は従業員と常に真摯に向き合う必要があります。

 

従業員の多様性を受け入れる

会社が従業員の多様性を受け入れるためには、まずは経営層や人事担当者たちがそれぞれの個性を認めなくてはいけません。

その上で従業員の個性が会社にどのようなメリットをもたらすのか説明できるようにしておきましょう。

上に立つ人間が部下に対して説明できるようになれば他部署の従業員も納得感をもってHRMを受け入れられます。少しずつでも理解を広げていき、個性的な従業員でも働きやすい会社を目指しましょう。

 

各従業員への定期的な研修・面談

先ほど、会社と従業員の間で信頼関係を構築するにはお互い何をしてほしいか、何をしてほしくないかを明確にする必要があると説明しました。

とはいえ相手に求めるものが何年、何十年経っても同じであるとは限りません。むしろその時々によって変化していく方が自然だといえるでしょう。

しかし、だからといって勝手に会社の方針を変えてしまうと従業員から「前に言っていたことと違う」と反感を買ってしまいます。従業員とは定期的に面談や研修を行い、信頼関係の在り方を見直すようにしましょう。長期的に有効な関係を築くためには欠かせない取り組みです。

 

HRMを活用する上で気をつけたいポイント

HRMには戦略的に経営を進めていける、従業員の満足度を高められるといったメリットがあります。しかしまだまだ完璧なマネジメント法というには遠く、以下のような問題も抱えています。

ハーバードモデルの問題点

  • 企業としてのの競争優位性を重視しがちで人材をモノなどと同じように考えてしまう
  • 従業員が不満を表に出さない状態を良好な関係を築けていると勘違いしてしまう
  • 経営層や人事が労使関係を作り上げることが基本となるため労働組合が軽視されやすくなる

 

ミシガンモデルの問題点

  • あくまで企業目標の達成を最も重視するため、従業員への対応が後回しにされがち
  • 各従業員のポテンシャルを客観的に把握しにくい
  • 大まかなデータをもとに人事計画を策定しなければいけない

 

日本企業でHRMを取り入れる際の注意点

注意点を説明する前に、まずは日本における雇用システムについて理解しておく必要がありますのでこちらを先に解説します。 日本では高度経済成長期に自動車産業などさまざまな産業で躍進を遂げ、世界に力強い姿勢を見せつけました。

世界の経営学者たちはなぜ日本企業がこれほどまでに高いポテンシャルを持っているのか分析したところ、終身雇用制や労働組合、QCサークルなど、従業員の生活を重視し人材を大切に扱う姿勢があることに気づきました。

この考え方とPMを組み合わせて生まれたのがHRM。つまりHRMの誕生には実は日本企業が大きく関わっていたということです。 HRMのもともとの発想が日本企業にあったといえば、日本企業にHRMを取り入れるのは簡単なのではないかと感じるかもしれません。

しかし、日本企業は海外の企業と比べ、他社と競争するために必要な戦略的経営が苦手な傾向にあります。基礎的な能力がない状態で新たな能力を習得しようとしてもなかなか上手くいかないのは当たり前。HRMを取り入れるにはまず社長や経営層など会社のトップ陣が自らのスキルを磨く必要があるのです。HRMに限らず、新しい仕組みを取り入れる前にはまず盤石な土壌を作り上げなければいけません。

 

以上、HRMについて詳しく解説しました。

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