ウーマノミクスとは!女性が活躍できる社会を作るための課題や推進方法を解説

女性の社会進出や管理職登用など、女性が社会で活躍することが求められるような時代になりました。しかし現状課題は山積みでそれを解決するための手段も少なく認知されていないという問題があります。今回はそういった課題の再認識と解決をする方法を詳しく解説していきます。

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近年、女性活躍という言葉を耳にすることが多い方もいらっしゃるかと思います。今回は女性活躍をテーマに、日本の成長戦略のひとつとして注目されているウーマノミクスについてご紹介します。

ウーマノミクスとは何か、その背景にある問題とは何か、そしてウーマノミクスを推進するためにできることは何かを詳しくご説明します。

 

なお本記事は、TechAcademyキャリアの実績をもとに紹介しています。

 

目次

 

1.ウーマノミクスとは?

ウーマノミクスとは、woman(女性)とeconomics(経済)を組み合わせて作られた造語です。

womenomics=woman+economics

日本語では「女性経済」と呼ばれることもあります。

このウーマノミクスという言葉は、ゴールドマン・サックス証券株式会社の現副会長である、キャシー松井氏が1999年に発表した研究レポートで初めて使用されました。

出典:ウーマノミクス5.0

 

<女性の力で経済を活性化!>

ウーマノミクスとは、働く女性が増えることで、会社などの組織だけでなく、日本経済全体が活性化するという考え方です。女性が労働力として能力を発揮することに加え、家庭の収入が上がり、消費の増加にもつながるとされています。

また、女性の就労が拡大することで、生活者の視点から斬新で多様なサービスや商品が生み出され、企業活動や経済が活性化することも期待されています。

最近、「女性活躍」という言葉がテレビやニュースなどでよく聞かれるようになりました。背景として、近年、急速な少子高齢化や人口減少の進展に伴う労働力不足が深刻になっていることがあげられます。人材確保のための打開策として女性が注目されたのです。

 

<成長戦略としてのウーマノミクス>

安倍政権は2014年に「アベノミクス」3本の矢の成長戦略のひとつとして、「女性の活躍推進」を掲げ、具体的な政策目標として、下記のような項目をあげました。

  • 2020年の25歳~44歳の女性就業率を73%にする(2012年68%)
  • 「3年間抱っこし放題」で育児休業期間を子供が3歳になるまで延長/その後の職場復帰を支援
  • 2020年の第1子出産前後の女性の継続就業率を55%にする(2010年38%)
  • 2020年の男性の育児休業取得率を13%にする(2011年2.63%)
  • 指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度にする

さらに、政府は2016年4月に「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)を施行し、「女性が仕事で活躍する」ことを事業主に対して義務化しました。女性の活躍推進のための数値目標を含む行動計画の策定と公表、女性の職業選択に役立つ情報の公表が、国や地方公共団体、民間企業等の事業主に対して義務付けられたのです。

安倍政権が女性活躍を推進する方針を押し出している中で、このウーマノミクスは成長戦略のひとつとして注目を集めているのです。

 

2.ウーマノミクスの課題とは?

そもそも女性活躍が叫ばれるということは、これまで女性が十分に活躍できていなかったということであり、それにはさまざまな要因があります。

<要因その1:育児>

まず大きな要因のひとつが「育児」の問題です。

出産を機に仕事を辞めてしまう女性は多くいます。第1子を出産した女性のうち、出産に伴い仕事を辞めた割合は、33.9%にものぼるということです。その数は年間20万人にのぼり、GDP(名目国内総生産)ベースで約1.2兆円もの経済損失になることが第一生命経済研究所の試算で明らかになっています。

企業などは育休制度の充実を進めており、第1子出産後に育休制度を利用して仕事を続ける人の割合は2000〜04年は15.3%だったのに対し、2010〜14年では28.3%とほぼ倍増しています。

しかし、パートや派遣などの非正規雇用やフリーで働く女性の離職率は依然として高く、出生動向基本調査によると、2010〜14年に第1子を産んだ女性の離職率は、正社員が約3割なのに対し、パート・派遣は7割を超えています。

さらに、一部の地域では保育園の入園希望者に対し、受け入れ可能数が追いつかず、保育園に入れないために仕事復帰をあきらめる女性も多くいます。勤労意欲があるにもかかわらず働けないケースというのはとてももったいないことです。

また、保育園を確保し仕事に復帰できた場合でも、問題に直面します。核家族が増加している現代では、多忙な夫に育児を頼れないことも多く、仕事と育児の両立に限界を感じ、仕事を辞めてしまう女性も多くいます。女性の職場環境だけでなく、日本特有の長時間労働の問題が、夫を長時間会社に拘束し、女性へ育児や家事負担のしわ寄せが行ってしまうケースも多いのです。

 

<要因その2:介護>

次にあげられる要因として、「介護」の問題があります。

総務省の2017年の調査によると、働きながら介護をしている人は346万人にものぼり、5年前より55万人増加しています。また、介護のために仕事を辞めてしまう「介護離職者」の数は、年間10万人にのぼり、その約8割を女性が占めています。介護離職者の数はこの数年間高止まりしており、深刻な状況が続いています。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、要介護者と同居の介護者は、40歳代から増えはじめ、50歳代が約2割、60歳代が約3割となっています。働くことのできる年代の女性たちが、介護のために働けないという問題が起こっているのです。

一旦介護離職してしまうと、再就職ができるのは約半数といわれています。また、明治安田生活福祉研究所の調査によれば、年収も半減することが明らかになっています。

介護の問題は、女性の継続的な就労の大きな妨げとなっているのです。

 

3.ウーマノミクスを推進するために

女性が活躍するためには、このような問題に対して取り組み、女性が働きやすい環境を整備することが重要です。

企業として、具体的にはどのような取り組みを行うことができるか詳しく見てみましょう。

 

<女性管理職を増やそう!>

女性活躍推進に向けて重要な取り組みのひとつが女性管理職を増やすことです。

重要な意思決定に関わったり、中心的な役割を果たしたりする女性が増えることはとても重要です。働く女性にとって、長期的にキャリアアップしていける道が開かれていることは、労働のモチベーションを保つために重要なポイントです。また、世の中の消費や購買の意思決定において、女性は大きな役割を占めています。そのニーズを正しく見出し、必要とされるサービスや商品をタイムリーに提供するために、女性が企業活動において提案や決定などの重要な役割を持って関わる必要があります。

2020年30%の目標が掲げられている女性管理職ですが、2016年の厚労省の調査では、管理職(課長相当職以上)の女性の割合は12%にとどまっています。業種別では、

  • 医療,福祉:50.6%
  • 生活関連サービス業/娯楽業:21.9%
  • 宿泊業/飲食サービス業、および、教育/学習支援業:21.0%
  • 電気/ガス/熱供給/水道業:1.8%
  • 複合サービス事業:7.1%
  • 製造業:8.4%

となっており、産業による差が大きくなっています。また、企業規模別にみると、

  • 10~29人以上:21.7%
  • 30~99人で14.1%
  • 100~299人で9.1%

となるなど、会社の規模が大きくなるほど、女性が昇進する障壁は厚いといえそうです。

管理職候補の女性に対する研修の充実化や、昇進に不安を抱える女性が相談できるメンター制度など、役職を目指して働く女性が活躍しやすい職場環境を整えることがいっそう重要になっています。

 

<取り組みを社外にアピール!>

女性活躍推進に積極的な企業は、その価値を分かりやすい形で外部に示すことができる仕組みが整備されてきています。企業としてのメリットもあるため、下記のような証明の取得を目標として企業内の取り組みを推進することは大変有効です。

 

<なでしこ銘柄>

日本では経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定しています。

東京証券取引所の全上場企業約3,500社から、企業価値向上を実現するためのダイバーシティ経営に必要とされる取組とその開示状況について評価を行い、2017年は、業種毎にカルビーやブリヂストン、ローソンなど48社が「なでしこ銘柄」として選定されました。選定企業のリストは経済産業省のHPで確認できます。

なでしこ銘柄は、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に紹介されます。選定された企業では株価の上昇に加え、企業イメージの向上を期待できるでしょう。女性が活躍できる会社への就職を希望する女性からの支持を受けやすくなり、優秀な人材の確保を期待できるでしょう。

 

<くるみんマーク>

「くるみんマーク」は、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた企業に与えられる証です。次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、 一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。2018年3月末時点で、2,878社が認定を受けています。

さらに、2015年より、くるみん認定を既に受け、相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている企業を評価しつつ、継続的な取組を促進するため、新たにプラチナくるみん認定がはじまりました。2018年3月末時点で、195社が認定を受けています。

プラチナくるみん認定を受けた企業は、「プラチナくるみんマーク」を広告等に表示し、高い 水準の取り組みを行っている企業であることをアピールできます。学生・求職者から、企業研究の指標の一つとしても活用されています。

 

<活用しよう!助成金制度>

企業でのウーマノミクスの推進に大きなモチベーションとなるのが、助成金制度です。現在、仕事と家庭生活の両立を支援する会社に助成される「両立支援等助成金」というものがあります。

助成金とは、国や公的機関(国の外郭団体など)が企業に対して行う金銭給付のことで、「両立支援等助成金」は厚生労働省が支給する助成金です。

出産や育児、介護など、さまざまなライフイベントに応じた助成金が用意されており、具体的には、下記のようなコースがあります。

 

<①出生時両立支援コース>

男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土作りのための取り組みを行った事業主に助成されます。育児休業というと女性が取るイメージが強く持たれていますが、男性も育児休業給付を取得した場合、育児休業給付が受給できます。

休業日程によっては社会保険料が免除されるなど、社会保険制度から従業員への経済的支援もあります。

 

<②介護離職防止支援コース>

労働者の仕事と介護の両立に関する取り組みを行った事業主に助成されます。

 

<③育児休業等支援コース>

育休復帰支援プランを作成し、プランに基づき、労働者の円滑な育児休業取得、職場復帰に取り組んだ中小企業事業主に対して助成されます。

また、育児休業取得者の代替要員を確保するとともに、育児休業取得者を原職復帰させた中小企業事業主に対しても助成されます。

さらに、育児休業から復帰後の従業員を支援するため、子の看護休暇制度や保育サービス費用補助制度を導入し、従業員に利用させた中小企業事業主に対しても助成されます。

 

<④再雇用者評価処遇コース>

妊娠、出産、育児または介護を理由として退職した者が適切に評価され、復職できる再雇用制度を導入し、希望者を採用した事業主に支給されます。

 

申請や詳細については、厚労省より公開されている各支給要領をご確認ください。

 

4.最後に

いかがだったでしょうか?

ひとくちに「女性活躍」といっても、それぞれの女性が直面している問題はさまざまです。子供のいる女性、子供のいない女性。結婚している女性、独身の女性。親の介護をしている女性、病気の家族を持つ女性。さらに、女性だけの問題ではなく、女性だけに負担が偏らないよう、介護や育児に関われるようにするなど、夫や父親などの立場を持つ男性の問題にも関わってきます。

会社の人事制度は、それぞれが抱える問題に幅広く対応できることが求められています。そのために、今回ご紹介したような課題と、それに対応する取り組みについて理解し、現場での実践につなげることが大切です。

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