インバスケット思考とは?身につく力や書籍をご紹介【人事向け】

インバスケット思考という言葉をご存知でしょうか?インバスケット思考は具体的な案件を通して、実務で役立つ課題解決力を強化することに長けています。このトレーニングを定期的にすることで、具体的な解決策をスピーディーに出すことができます。今回はトレーニング方法も含め詳しく解説していきます。

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インバスケット思考という言葉をご存知でしょうか。書店や、テレビ、あるいは就職活動などで聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、その定義や行う際のルール、身につけるための方法などを具体的に知っている方は少ないかもしれません。

世の中には、働き方の本や社会人として力をつけるためのビジネス本はたくさん出ており、新卒の方向けのビジネス本なども多く出ています。しかし、技術論やマナーなどを定義し伝えている本は多くても、実際に知識や技術をどう使いこなし、自分のものにしていけばいいかという事や、具体的な力として定着させるノウハウが、あまり語られていない現状があります。

そうした中、このインバスケット思考は具体的な案件を通して、実際に役立つ訓練をすることに特化しています。今回はこのインバスケット思考について、誰が読んでもわかりやすいように噛み砕いてご紹介致します。

 

なお本記事は、TechAcademyの法人向けIT・プログラミング研修での実績をもとに紹介しています。

 

目次

 

インバスケット思考とは

インバスケットとは、直訳すると未処理箱という意味です。

以下の写真を見ていただくとわかりやすいのですが、メールが来た時にまだ開いていない未読のメールがたくさんある受信ボックスをイメージしていただければと思います。

そして、その未読のメールのどれから開いていけば一番効率的なのかを考え、判断し処理するゲームをインバスケット思考と言います。そして、このゲームを行う事で身につくのが、究極の選択を迫られた時に咄嗟に判断する判断力です。

ルーツはもともとアメリカの空軍で作られた教育ツールです。教えてもらったあるいは身につけたスキルや能力の応用ができるかを試す事ができます。

敢えて短時間やストレスがかかる状況で判断問題を設定し、より正確にアウトプットができるかを試すツールです。

現在では、企業の採用試験や教育研修ツールとして活用されています。

インバスケット思考を行うときのルール

インバスケット思考には主に以下の4つのルールがあり、このルールに沿って実施されます。4つのルールにはそれぞれ判断力を磨くための目的があります。目的と合わせてご紹介します。

ルール1.架空の人物になりきる

インバスケット思考では、ある特定の架空人物を設定して、その人とその人の立場になりきって、与えられた案件を処理します。

ルール2.制限時間を設ける

インバスケット思考では、限られた時間を設けて、敢えてぎりぎりの状況で正しい方法を選択して判断し処理する力が問われます。

ルール3.多くの問題を自分自身の実力で解いていく

インバスケット思考では、より多くの問題を設定する事で、負荷をかけられた状況下でストレスが発生しても問題を放置せずに、優先順位を設定して処理する力が問われます。しかも、それらの問題は全て自分自身の実力で考え、処理する必要があります。

ルール4.自由回答で絶対的な正解はない

インバスケット思考は自由回答形式です。自由だからこそ、判断までのプロセスには正解がなく、判断スタイルに個性が出ます。その個性を客観的に見つめる事で、パフォーマンスを大きくアップさせる事ができます。

 

以上4つのルールを遵守してインバスケット思考は実施されます。どのルールもきちんと目的があるのですが、実施する方は必死です。

 

インバスケット思考を身につける方法

ここまで、インバスケット思考の定義や意味、そしてルールなどをお伝えしてきました。それでは、具体的にインバスケット思考を身につけるにはどのようにすれば良いでしょうか。ここでは、具体的なインバスケット思考の問題を通して、どのような力をつける事ができるのかご紹介します。

実際のビジネスシーンでは、試験のように選択肢は準備されておらず、ご自身で選択肢を作って行動していかなければなりません。つまり、学校の試験のようなマークシート式の問題集で選択肢を選ぶトレーニングや、ましてや消去法で選択肢を選ぶようなトレーニング方法では効果がありません。

しかし、インバスケット思考における問題は従来型の試験とは異なります。取り組む際には、いきなり選択肢を選ぼうとするのではなく、どのような行動をとるのがベストなのかを考えて、それに近い選択肢を選びます。

以下で、インバスケット思考の問題の具体例を御覧ください。

前任の仕事の不手際の処理

あなたは、衣料品チェーンの東京地区A店の店長に着任しました。ところが、前任の店長から引き継ぎを受けていると、大きな問題を抱えていることに気がつきました。

もう既に季節は春になろうとしているのに、大量の冬物のコートが200着ほど在庫として残っているのです。

前任者は、九州地区の店長として赴任するので、店舗運営の負担になるのであれば、自分が新しく着任する店に在庫を振り替えることも考えると言い残して引き継ぎを終えました。

この200着の在庫は一刻も早く処分しなければ、損失額は膨れあがる一方です。しかし、処分をすることで、あなたが着任した初めての月は赤字になるおそれがあります。

つまりあなたの責任となるのです。あなたならどう判断しますか。

あなたの考えに一番近い選択肢を選んでください。

【選択肢1】

自分はこの件に関与していないので、現在いる従業員で検討させ決めさせる。

【選択肢2】

自店で処分を実施する。上司や関係部署には自分の責任で処分を実施する旨を連絡する。

【選択肢3】

前任の店長が責任を感じて、在庫を引き取ると言っているので、その言葉に甘えて在庫を九州の店に送る。

【選択肢4】

自分の着任前にこのような問題があり、処分に悩んでいることを上司に報告し、判断を上司にゆだねる。

※引用:http://www.in-basket.jp/ankeito_old1.html

上記のように、先ずは事例が示され、その後に選択肢が並びます。この事例を見た段階で、自分で考え、自分で判断を先ずは頭の中で、あるいは書いて作ります。そして、その後に選択肢を見て、自分の判断に近いものを選んでいくという流れになります。

以上のような設問が60分で20個ほど設定されるのですが、研修ではなんと40分程経過したときに残り10分ですといきなり言われるなど、まさかの時間短縮などがあります。これも予定通りの設定で、実際のビジネスでもありがちな、ある重要なことを忘れていて、どうしても残り10分程度しか残らない場合を想定したものです。

また、インバスケット思考に正解はありませんが、いわゆる回答を書くためのアクションシートには、以下のような事も書いて欲しいと問われます。

  • 選択したアクション
  • なぜそのアクションを選択したのか
  • 重要性・緊急性を判断する項目
  • 関連資料などを記入する項目
  • 優先順位を記入する項目

これらを書かせることで、判断力を細かく評価することができます。具体的には、以下の8つの判断指標について評価されます。

【8つの判断力評価指標】

1.承認力

ある問題が起こった際に、その問題を受け止め、許可を与える判断です。安易に承認判断だけすると、足元をすくわれることがあるため、必ず一定程度時間を置いてから必ず補足をつけて判断するようにします。

2.否認・却下

間違っているものは、間違い。正しいものは正しいと言うことや、総合的にみた場合にあるものを不採用にしなければならない事がある。そういう際に否認、却下をする判断です。

否認や却下が下手だと、部下のやる気を削ぐ結果になったり、禍根を残すことになるため、必ずその提案に対してお礼を言うなど、マイナス判断をする際にはプラスを添えるフレキシブルさが問われます。

3.条件付承認

インバスケット思考では最も使用頻度の高い判断です。

ある条件さえ満たせば良いという判断なため、その後に多くの行動や思考が発生し、途中で方針を変更したい場合もフレキシブルに対応することも可能です。

例えば、「コストを減らす」「代替案を考える」などの条件を付与する場合です。

4.保留

日本人管理者が取る最も多い判断です。この判断の良さは状況が変われば即座に方針をそこに合わせることができ、傷が少なくて済むという点です。

逆に悪い部分としては、いつまでも物事に変化が起こりづらく、進まないという点です。

5.延期

延期してもリスクが少ないものは、自らが到着し指示が出せるまで延期した方が良い場合があります。ベストタイミングで仕事を進めるために、この判断を選ぶ場合もあるでしょう。

ただし、延期の判断をしたとしても、準備の指示出しはできない場合を除きしておいた方がいいでしょう。

6.無視

これは一番使ってはいけない判断です。結局最終的に自分が責任を取ることになります。人に責任を転嫁するなど、あってはならない事です。

7.一任

諸刃の剣になる可能性がある判断ですが、インバスケット思考では評価される事が多い判断です。

一任は、「部下の方が現場を、わかっていて適切な判断ができる」場合や、「部下の育成、組織の育成を目的」とする場合などに有効です。

しかし、そういった場合でも、「激励」「アドバイス」「周りのサポート体制の援助」「判断の後押し」そして「事後報告」はする必要があります。

8.上司の指示を仰ぐ

信頼できる上司に対して、この判断が正しいのかを問い合わせるという判断です。自分1人の思考で判断するだけだとどうしてもバイアスがかかる傾向にあるため、信頼でき指摘を的確にしてくれるような方に意見を聞き、二重チェックをかける事ができれば、間違いは劇的に減るでしょう。

しかし、この場合も単に全てを伺い立てるのではなく、自分自身の思考プロセスまでしっかりと提示した上で、伺いを立てる必要があります。

以上8つの指標をもとに具体的な事例を思考し、そして自ら選択判断することで、インバスケット思考は身につける事ができます。

 

インバスケット思考でどのような力が身につく?


インバスケット思考で身につける事ができるのは、冒頭で判断力であるとお伝えしました。しかし、もちろん判断力も身につくのですが、それ以上に総合力を身につける事ができます。

例えば、仕事以外でも、さまざまな局面でリーダーをされている方は多いでしょう。リーダーにこれからなる方や、すでにリーダーの方などで中々成果が出ない、あるいはすごく忙しいという方が、インバスケット思考に取り組む事で、ご自分の判断の癖や仕事の癖を発見する事ができます。

インバスケット思考は鏡のような存在です。60分間で20個ほどの苦しい案件を処理し、あとで処理した案件を振り返ると、自分自身が表面的な物事で判断していることや、判断していることに一定の傾向があることなどが鏡に映る自分を見るように見えてきます。

そして、今まで自分がしてきた仕事のスタイルなどを見つめ直し、整える事ができます。そうする事で、時間に余裕を生み出す事ができ、うまく部下や組織を活用できるようになります。

さらには、問題解決力や危機回避能力を身に付ける事ができ、判断に自信を持つ事ができます。つまりインバスケット思考は、自分をどんどん上に引き上げる事の出来る成長ツールなのです。

 

会社でのインバスケット思考活用術


それでは、ここまでインバスケット思考について身につけ方までをお伝えしてきましたが、インバスケット思考は会社でどのように活用できるでしょうか。
具体的に以下の3つのケースで活用できます。

1、仕事上でトラブルが発生した際

インバスケット思考はトラブルを想定して行う訓練でもあります。情報漏洩やお客様へのトラブルなど最悪の自体が起こった時に、その力は最大限にはっきされるでしょう。

2、成果がなかなか出せない時

仕事には成果が付き物です。しかし、成果を出すには根気強く思考を続け、最大限顧客ベネフィットを求めていかなければなりません。また、上司や同僚などの社内調整も重要な任務です。そういった際に、あらかじめ何がベストな選択なのかをインバスケット思考で訓練しておけば、顧客にも社内でも最適な選択をしていく事が可能です。

3、経費を削減する必要が出た時

会社は利益を生み出していかなければ存続していくことはできません。利益はお客様から得るだけでなく、経費を削減することでも生み出す事ができます。インバスケット思考は、最適な選択力を身につける事ができるため、最も最適な経費の使い方の選択にも寄与します。

このほかにも様々な局面で相対的に寄与するのがインバスケット思考ですが、主に以上の3点、会社で活用することができます。

 

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