コーチングスキルとは?身に着けられる書籍やセミナーもご紹介

コーチングとは、「クライアントが目標を達成するために必要なスキル・知識・考えを備え、行動することを支援するプロセス」です。では、コンサルティングとなにが違うのかということです。今回はコーチングならではの特性やメリット・活躍する場面と具体的なスキル習得の勉強法などを解説していきます。

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ここ最近、ビジネスの場面で「コーチング」という言葉を聞く機会が多くなったという人もいるのではないでしょうか?コーチングとは、「クライアントが目標を達成するために必要なスキル・知識・考えを備え、行動することを支援するプロセス」です。

ここで疑問に思うのがコンサルティングとなにが違うのかということです。今回はその辺りの違いやコーチングならではの特性やメリット・活躍する場面と具体的なスキル習得の勉強法などを解説していきます。

 

なお本記事は、TechAcademyの法人向けIT・プログラミング研修での実績をもとに紹介しています。

 

目次

 

コーチングスキルとは

コーチングをより効果的かつスムーズに進めるための技術のことを「コーチングスキル」と呼びます。そもそも、コーチングとは何でしょうか?

コーチングとは、「クライアントが目標を達成するために必要なスキル・知識・考えを備え、行動することを支援するプロセス」です。

上であげたプロセスを効率よく進めるために、コーチはコーチングスキルを活用してクライアントの目標達成を支援します。

ここでは、コーチングについてもう少し詳細に掘り下げて説明します。

 

コーチングの特徴

コーチングは、クライアント自身が求めている答えるにたどりつけるよう、コーチがクライアントを支援することが特徴的です。

クライアントが目標達成のために持っている課題をともに見つけ、対等な関係として目標までの道のりを歩んでいく存在、それがコーチングを学んだ人がやることです。

一般的に、クライアントの目標達成や課題解決を行う職業の代表格として、コンサルタントやカウンセラーがいますが、これらの職業とコーチはどの点が異なるのでしょうか?

カウンセラー/コンサルタントとの役割の違い

カウンセラーはメンタルをケアすることに特化しているのに対して、コンサルタントは課題を解決できる知識やノウハウを提供することを生業としています。

そこで、「メンタルへのアプローチ」と「課題解決へのアプローチ」の2つの視点から見てみることにします。

メンタルへのアプローチの違い
  • コーチ:より困難な目標・課題へ挑戦することがワクワクするようなメンタルにする
  • カウンセラー:傷ついたメンタルを癒し、課題へ挑戦できるラインまで回復させる

こう見てみると、コーチはクライアントの成長を促すことを主目的としているのに対し、カウンセラーはクライアントのメンタル回復が仕事であると言えます。

課題解決へ対する考え方の違い
  • コーチ:目標達成をクライアント自身の力のみで成し遂げるように支援する
  • コンサルタント:目標達成のための答えをクライアントへ提供する

コンサルタントは、答えをクライアントへ提示し、道しるべを指し示す存在です。かたやコーチは、クライアントが自ら答えを見つけることを重視する存在であることがわかります。

コーチングは、あくまでクライアントが抱えている目標への達成を支援するものです。

 

コーチングの目的

コーチングの目的は「クライアントが自らの力で目標達成をする力を育むこと」にあります。これは言い方を変えると、クライアントがつね主導権を握っている状態を示しています。いつも中心にいるのはクライアントであり、コーチはあくまで支援役というのがコーチングの基本スタイルです。

では、コーチングのゴールはどこにあるのでしょうか?コーチングのゴール、それは「クライアントが自分自身をコーチングできるようになり、継続的に目標達成し続けれる状態になること」です。

端的に言えば、クライアントが「自走できる状態」になることがコーチングが目指す最終目的地になります。別の言葉を借りるならば、「成果を上げ続ける人材」に成長した状態です。

「自走できる状態」とは、

  • 自分の考えを自分自身で客観的に見直せるようになる
  • 自分で自分をコントロールできるようになる

を指します。

この状態になったということは、クライアントが成長し、自分自身をコーチする能力が身についたことを意味しています。なので、短期的な成功を収めることは、コーチングにとっては通過点に過ぎません。

コーチは最初は並走してくれるが、クライアントは徐々に自立することを求められます。

 

コーチングの原則

コーチングでは「人は生まれながらにして、欠けるところがない存在である」という信念をもとに、クライアントとの関係を築いていきます。

つまるところ、クライアントには現在目の前にある困難を乗り越える力がかならず備わっているという前提をもとにコーチングを行うことになります。

とはいえ、何の原則もなしにクライアントと良好なコミュニケーションを実現することは困難です。コーチングには、クライアントと良好なコミュニケーションを取るために必要な3つの原則があります。

3つの原則を順番に見ていきましょう。

双方向

会話のキャッチボールを行います。

頭ごなしに話を進めたり、答えありきの誘導的な質問をするような会話は、双方向であるとは言えません。

双方向の会話の有効なポイントは、無意識を顕在化させることにあります。つまり、クライアントが無意識的に行っている考え方やモノの捉え方を顕在化させ、無意識的に行っている事柄がクライアントの成長に必要なものか調べることに役立ちます。

継続性

継続性が原則に盛り込まれている理由は、日々と変化し続けるビジネスや社会の環境に対応するためです。

ITが発展し始めてから、ビジネス・社会環境の変化はどんどん速くなっています。このような環境変化が早い状況下では、次に何が起こるのかを完全に予想して計画を立てるのは、ほぼ不可能と言っても良いでしょう。

しかし、コーチは否応なしに変化し続ける環境の中で、クライアントの目標達成を支援し続ける必要性があります。つまり、コーチはクライアントに継続的に働きかけるからこそ、共に環境変化に対応することができるのです。

個別対応

個別対応とは、クライアントの考え方・行動パターン・性格などを捉えながら、個々のクライアントに対して最適な関係性を築くことです。

当たり前のことですが、クライアントはひとりひとり違う人間です。そのため、目標達成をより早く実現させるための指導ポイントやモチベーションがあがる方法、すべてが異なると言っても過言ではありません。

クライアントをよく知ることが、個別対応で求められることです。

 

コーチングのプロセス

ここでは、基本的なコーチングのプロセスについて説明します。

  1. セットアップ(リサーチ・プランニング)
  2. コーチングの実践
  3. 振り返り(結果の評価)

セットアップ(リサーチ・プランニング)

まずは、以下のポイントを明確にするために、クライアントとその関係者に面談を行います。場合によっては、テストなどによる調査・測定をすることもあります。

  • 目標
  • 目的
  • 成長課題
  • 達成基準

さらに、コーチングの実施方法を決定めます。

例えば…

  • どれくらいの頻度でコーチングを実施するか
  • 面談方式は電話か、それとも面談か

などです。

コーチングの実践

文字通り、コーチングを実践していきます。

このプロセスで大事なことは、小さな行動、小さな成果、自信の積み重ねを作ることです。また、軌道修正とフィードバックは必須です。継続性のところで少し触れましたが、はじめの方法に固執しないことが、コーチングの原則です。

振り返り(結果の評価)

コーチングでは、最後に振り返りを必ず行います。

振り返りを行うことで、成長実感や自己効力感を得ることに繋がります。結果、クライアントに「自分は周囲に働きかけ、影響できる存在であり、価値ある存在である」という実感がついてきます。この実感が自主性や主体性を支える基盤となり、次の課題へトライする原動力となるといった、正の成長サイクルを生みます。

 

代表的なコーチングスキル3つ

ではコーチングに必要なスキルとは何でしょうか?代表的な3つを紹介します。

傾聴

傾聴とは、クライアントの話をしっかり聞くことです。

単純に話を聞くだけに留まらず、クライアントが何を言おうとしているのか、また言葉の裏側にある本音はどこにあるのかを聞き分け、クライアントの「本当にやりたいこと」を正しく理解することが求められます。

聞くためのポイントはいくつかありますが、大事なポイントは「集中して聞くこと」「話の先読み、結論の先取りをせずに最後まで話を聞く」の2点です。

質問

質問する目的は、コーチが情報を集めることではありません。

クライアントの視野を広げ、クライアント自身が「問題点をクリアにする」「考えを整理する」「気付きを促す」ことを成し遂げるためです。

また、質問には以下の2つのタイプが存在します。

  • クローズド・クエスチョン:Yes/Noで回答できる質問
  • オープン・クエスチョン:Yes/Noで回答できない質問

クローズド・クエスチョンは「事実や内容の確認」「コミットメントを高める」ために使われます。

一方、オープン・クエスチョンは「広く情報を集める」「相手に考えさせる」ために使われます。

承認(アクノレッジメント)

承認は、「相手のことを認める」ことを意味します。

もう少し具体的に説明すると、承認を使うことで、クライアントの自己成長に対する認知を促進させる効果があります。

コーチは、以下の3つのポイントをクライアントに伝えることで、クライアントを承認します。

  1. 存在承認:あいさつやクライアントの状態を具体的に伝える
  2. 成長承認:変化や成長したポイントを伝える
  3. 成果承認:成果を伝え、ほめます。また、クライアントの成功体験を言語化する働きもあります

 

コーチングが必要な理由

リーダーやマネージャーといった管理職の方々は、以下のような疑問をもつことが多いのではないでしょうか?

  • 後釜がなかなか育たない
  • 社員全体にビジョンが浸透しない
  • チーム内で一体感を感じる機会が少ない

そして、上の問題に対する解決策を頭の中で持っていることが多いです。にもかかわらず、目標達成できない…。こんな風に思ったことはありませんか?

「わかっているけど、行動できない」

実は、人間は自分自身に対してすら「本音で語る」ことができていません。つまり、他者の助けを受けることなしに自身の本音を見つけることは、非常に難しいことなのです。

コーチングでは、まずクライアントに質問を促し「本音で語る」ことを1つの手段としています。本音を引き出すことで、はじめて現状と理想のギャップを把握できる余裕が生まれるのです。

このように、自分でさえわからない「本音」の部分を浮彫にするため、コーチングが必要なのです。

 

コーチングスキル活用のメリット

コーチングスキルを活用することで、様々な能力を身に着けることができます。順番に見ていきましょう。

目標達成に足りないものを客観的に判断できる

目標達成に当たって、いまクライアントに何が足りないかを測る視点がコーチングには存在します。

コーチが持つ3つの視点(PBPの視点)

Possession(身につけるもの)

目標達成に必要な身につける必要がある知識・情報・スキルを意味します。

例えばマネージャー職であれば、定例業務の進め方、部下の観察方法、月次計画の立て方、評価面談のやり方、クレーム対応の方法などが挙げられます。

Behavior(行動)

Possessionで身につけた知識・情報・スキルを生かして行動を起こすことです。目標を達成するためには、どれくらい行動しているかが大事なポイントになってきます。

目標を達成するために必要なアクションと期日が明確になっているかを判断するのが、このBehaviorのでやるべきことです。

Presence(考え方、信念)

Presenceは「人のあり方」とも言われています。

言葉を変えて言うなら、無自覚な行動原理のようなものだと考えてください。この行動原理を変えないと目標達成できないケースが存在するため、コーチはPresenceに着目することがあります。

Presenceはクライアントにとって無自覚な部分であるため、変えるには時間がかかります。まずは以下のような質問を投げかけ、Presenceをクライアントに認識させるアプローチをとることが多いです。

認識させるための質問例

  • 価値観や座右の銘は何ですか?
  • いつからその価値を大事にしていますか?

コーチは、このPBPのどれが今クライアントに欠けているのかを判断し、コーチングのプランを練ります。

行動するまでに超えるべき4つの壁

1つ目の壁:やる気・決断が低い

目標を立てた時点での決断の度合い(コミットメント)が低いため、行動が起こせない状態です。

クライアントの目標が明確でない、もしくは実施していない現状に危機感を覚えていないため、行動する必要を感じていません。

2つ目の壁:やる気は十分だが、何をしていいかわからない

Possession(知識・情報・スキル)が不足しています。

この壁を突破するには、スキルや知識を指導しながら補填するか、勉強を促す必要があります。

3つ目の壁:実務で、知識・スキルの使い方がわからない

Possessionはあるが、実務でどう適用したらいいかがわからない状態です。本で勉強したり、研修を受けた直後に見られます。

使い方がわからないのは、実務でスキルを使う対象とタイミングが明確でないためです。まずは、対象とタイミングを明確にすることがポイントです。

4つ目の壁:変化を起こせない

実務でスキル・知識を使うこなせるレベルだが、あと一歩踏み出すのが怖い状態です。

人間は変化を恐れる生き物であるため、新しい試みを怖いと感じる傾向があります(これを「現状維持のバイアス」と呼びます)。

対策のひとつとして「クライアントに行動を宣言してもらう」ケースがあります。行動を宣言するメリットは以下の通りです。

  1. 約束を守ろうとする気持ちが働く
  2. 行動が具体化する
  3. コーチがクライアントのコミットメントを知ることができる

 

クライアントが自力で成長する方法を理解する

上で挙げた「コーチが持つ3つの視点(PBPの視点)」「行動するまでに超えるべき4つの壁」への理解を深め、コーチングスキルと併用することで、クライアントは自力で成長する方法を学び・理解できるようになります。

また、コーチングに最も重要な資質は「諦めないこと」と言われています。「目的」「目標」から目をそらさず、前進できる「可能性」を見続けることが、コーチにとって一番大切なことなのです。

 

コーチングスキルを身につける方法

ここでは、おススメのセミナーを紹介していきます。

コーチングのセミナー

コーチングがマネジメント領域で有効だと注目されることで、研修もよく見るようになりました。もともとは教育指導の場で使われることが多かったコーチングですが、最近は職場におけるコミュニケーション活性化の目的で参加される方をよく見ます。

本記事では、例として3つのセミナーを紹介します。

日本能率協会/コーチング・スキルトレーニングセミナー

特徴:コーチングの基本知識をはじめとして、実践形式でコーチングのスキルを理解・体験する2日間のセミナーです。初日はコーチングが注目されている背景やスキルについての説明を行い、2日目は実践的なロールプレイを行うことで、より理解を深めることを狙いとしています。

料金:104,000円

日本能率協会/コーチング・スキルトレーニングセミナー

 

株式会社インソース/OJT研修~コーチングスキル強化編

特徴:OJT研修という名前の通り、ビジネス現場での教育に重きを置いた研修になっています。2日目のケーススタディやペア・コーチングといった、ワークショップによる実務を想定した研修は魅力的です。初日の座学も含め、非常に充実したセミナーです。

料金:要お問合せ

株式会社インソース/OJT研修~コーチングスキル強化編

 

株式会社コーチ・エィ/コーチング・プログラム説明会

特徴:日本最大規模のコーチングファーム、株式会社コーチ・エィが主催する説明会です。コーチングの基本・資格の取得方法・セミナー受講生の体験談といった、有益なコンテンツを無料で聞くことができます。

料金:無料

株式会社コーチ・エィ/コーチング・プログラム説明会

 

コーチングスキルが効果を発揮する場面

最後にコーチングスキルが活かされるケースを紹介します。もし仕事で同様のケースに多く直面する場合はコーチングスキルを得るために勉強すると、より自分のキャリアが広がるので取り組んでみましょう。

シーン1

仕事上において、目標か課題を設定・達成までのフォローアップ時

効果

  • 目標の達成条件を具体的なイメージにできる
  • 現時点での、部下の能力レベルを複数の視点から評価できる
  • モチベーションを高める・維持できる
  • 目標達成まで諦めないマインドセットが身につく

 

シーン2

ある行動に対してフィードバックおよび振り返りするとき

効果

  • 行動の結果を振り返る習慣が身につく
  • 考えや感情・感覚を言語化する能力が磨かれる
  • 行動して終わりではなく、改善し続けるサイクルが生まれる

 

シーン3

職場などで、悩み相談を受けるとき(とくに部下と)

効果

  • 相手の悩む原因・解決策を一緒に考え、かつ支援する
  • 相手が困難を乗り越えれる可能性を信じ続ける
  • 自分の観察眼およびコーチングスキルの向上が見込める

 

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