研修期間とは?試用期間との違いと研修期間の内容例、よくある質問を解説
「研修期間と試用期間の違いは?」「研修期間は何をするの?」など、研修期間について知りたい人も多いでしょう。研修期間と混同されやすい試用期間の違いや、研修期間の内容例、そしてよくある質問「研修期間中の解雇」について解説していきます。
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皆さんは「研修期間」と「試用期間」の違いをご存じでしょうか。2つの期間は混同されやすいため、研修期間と試用期間の細かい違いを知らない人もいらっしゃるでしょう。
しかし、この2つには大きく分けて4つの違いがあります。本記事では、研修期間と試用期間に関する違いや、実例を基にした研修期間の内容例、また「研修期間中の不当解雇」に関するよくある質問を解説します。
目次
研修期間とは
研修期間とは、いわゆる見習い期間のことで、入社後に会社の業務を行うにあたり、必要となる知識や技術を習得するための期間です。
研修期間中の働き方は常用雇用のケースと同じである場合が多く、雇用期間が31日以上かつ週20時間以上労働という基準を満たしていれば、雇用保険に加入できます。
研修期間の目的
研修期間の目的は、今後企業で働いていく際に必要となる知識や技術を覚えることです。特に未経験の職種で働く場合は、ある程度の期間の中で会社や業務内容への理解、必要とする知識や技術を身につけていくものです。
また、企業側にとって研修期間は、新たに入社した人材の性格や特徴、強みを理解するために大切な期間となります。
研修期間の平均的な期間
研修期間の平均は雇用形態にかかわらず、1〜3ヶ月です。また、大企業の場合は1ヶ月の研修期間が主流となっています。
ただ、企業や配属される部署、働く職種によって研修期間は異なります。例えば、専門的な知識や技術を必要とする企業や部署の場合、当初伝えられていた研修期間を超える場合もあるでしょう。また、研修の進捗状況によってはさらに研修期間が延長されることもあります。
「研修期間」と「試用期間」の違いは
研修期間と試用期間には大きく分けて以下の通り、4つの違いがあります。
- 目的
- 業務内容
- 定められている期間
- 給与
研修期間の目的は前述した通りですが、試用期間の場合は研修期間とは異なる目的を持って設定されています。
そのほか、2つの違いとして業務内容や期間、給与も異なります。ここでは、それぞれの違いについて解説していきます。
1.目的
「今後企業で働いていく際に必要となる知識や技術を覚えること」が研修期間の目的であることに対して、試用期間の目的は「人材の資質や能力、性格など、労働者としての適性を判断するため」とされています。
「実際に業務をこなす能力があるか」「会社の社風に適用できるか」「企業の戦力になれる適性があるのか」を判断するために、試用期間は設けられています。
これらを踏まえると、研修期間は仕事に必要となる知識や技術を覚えることが目的、試用期間は、企業で働く際の適性を判断することが目的ということですね。
2.業務内容
研修期間に行われる業務内容は「マナー」や「ロールプレイング」「座学」など、これから通常業務を行う上で基礎となる知識や技術を習得するためのものです。
一方、試用期間に行われる業務内容は「通常業務」であり、研修期間と試用期間の大きな違いといえば、通常業務を行うか否かでしょう。
ただし、企業の中には研修期間と試用期間を併せて行うところもあります。この場合、基礎となる知識や技術を学びながら、実際に通常業務を行い、適性をチェックします。
3.定められている期間
研修期間の平均的な期間は数週間〜1ヶ月です。一方、試用期間の場合は1~6ヶ月が一般的とされています。この試用期間中、採用責任者などの判断でもう少し期間を延長したいとなった場合、最長1年までは許容範囲とされています。
4.給与
働く企業やお店などによって給与の基準は異なります。また通常業務を行う試用期間中は、基礎や知識を学ぶ研修期間と比べて、給与は高めに設定している場合が多い傾向にあります。これらはすべての企業やお店に共通することではありませんので、1つの指標として捉えておきましょう。
実際の研修期間の内容例
研修内容は働く場所によって多少異なりますが、基本的な部分「企業への理解を深める」「社会人としてのマナー」など共通する場合が多いでしょう。
初めて働く職種となると「どんな研修が行われるのか不安」という人も少なくないでしょう。そんな方に向けて、研修期間の内容例をご紹介します。
会社への理解を深めていく
どの企業、お店でも必ず研修期間に行われるものは「会社や店への理解を深めること」です。働く上でのルールはもちろん企業や店の歴史、自社に関連する市場傾向など、これから働いていく上で必要な基礎知識を学びます。
研修期間中に会社への理解を深めることで、新しく働く社員などの不安や疑問を解消し、上司や先輩との円滑なコミュニケーションを取れます。
また、自社の社風が合っているのかという点は、その会社で長期的に働く上でとても重要視される点です。
基本的な社会人のマナーを学ぶ
これから社会人として生きていくためには、社会人としての基本的なマナーを学ぶ必要があります。そのため、研修期間中は、身だしなみや言葉遣いはもちろん、コミュニケーションスキルなど、社会人として最低限身につけなければいけないマナーを学びます。
また企業で働く際は、名刺交換の方法や社内メールの書き方など、ビジネスマナーも学んでいく必要があるでしょう。
その他にも、昨今増えているリモートワークでの対応方法やプレゼンテーションの方法に関しての研修を取り入れている企業もあります。
思考力について学ぶ
社会人になるとよく耳にする「ロジカルシンキング」は、日本語にすると「論理的思考」という意味です。
このロジカルシンキングは、社会人としてぜひ身につけておきたい思考で、物事を整理し筋道を立てて、矛盾なく考えられるようになります。
また、仕事の全体像を見通す見方として利用できる「俯瞰力(ふかんりょく)」や、意思決定や分析、解決したい問題を特定の型に押し込むことで、手順に沿って整理していく「フレームワーク」も併せて身につけておきたいスキルです。
社会人としてのマインドを学ぶ
社会人として働く上で、社会人としての「マインドセット」を学ぶ必要があります。マインドセットとは「考え方や物事の見方の癖」などを意味しており、生まれ育った環境や性質、経験によって形成されるものです。
そして社会人として学ぶべきマインドは「成長マインドセット」と呼ばれるものです。
成長マインドセットがある人は「自身の能力や経験は努力によって成長できる」というポジティブな思考を持っているので、積極的にチャレンジする傾向があります。
この成長マインドセットを身につけることは、仕事への向き合い方やモチベーションの維持にも繋がるので、とても大事なことといえるでしょう。
専門的なスキルや知識を学ぶ
研修終了後に、エンジニアや営業、事務の経理などの専門職で働く予定がある場合、実際の現場で必要となるスキルや知識を身につけておいた方がよいです。
例えば、経理で働く場合はパソコンスキルはもちろん、頻繁に使用する会計ソフトの使用方法などを事前に学んでおかなければなりません。
その他にも、エンジニアならばプログラミング知識、営業ならばヒアリング力やロジカルシンキング、マーケティング力などが挙げられるでしょう。
また、専門的なスキルや知識について学ぶ際、実際の業務では使用しないスキルや知識が必要なので、個々の勉強や企業によるフォローアップ制度も重要です。
よくある質問「研修期間中の解雇は不当?」
研修期間中、雇用側に対して企業側が法律の観点から見て正当だと感じる理由がある場合、雇用側が不当解雇だと主張したとしても、法律的には違反ではないので解雇できます。
では、どのような状態での解雇は正当解雇または不当解雇になるのでしょうか。ここでは、正当な解雇と、不当解雇について解説していきます。
解雇できる正当な理由
企業側とあらかじめ結んだ雇用契約書に記載されている規約を破ったり、法律の観点から見ても解雇が正当だと判断される場合、解雇されても文句はいえないでしょう。
ただし、正当な解雇であったとしても解雇を行う際、少なくとも30日前に解雇予告を行う必要があります。仮に解雇予告を行わなければ企業は30日以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないのです。
正当な理由①勤怠不良
正当な解雇理由の1つめは「勤怠不良」が挙げられます。ただし、遅刻や欠勤が続いているからといってすぐに解雇できるわけではありません。労働契約法同法16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(乱用)したものとして、無効とする」と記載されているからです。
そのため以下の条件をすべて満たしたとき、勤怠不良が正当な解雇理由として認められます。
- 再三勤怠不良について注意・指導を行ったが改善が認められない
- 軽い懲戒処分にとどめたが、その後も改善されない
- 将来的に改善の見込みがない
正当な理由②怪我や病気
正当な解雇理由の2つめは「怪我や病気」です。身体や精神の障害などによって業務に耐えられないと認められると、正当な解雇理由として認められます。
ただ、怪我や病気で解雇する場合にも、勤怠不良と同様に条件があります。基本的には、以下の条件を満たしたとき、怪我や病気が正当な解雇理由として認められます。
- 就業規則に定められた休職期間を経過したが、復職できる状態にならなかったこと
- 休職期間経過後、しばらくの間、短時間勤務や負担の軽い仕事につけるなどの配慮をしたとしても、復職可能になる可能性がないと判断されること
正当な理由③経歴詐称
正当な解雇理由の3つめは「経歴詐称」です。経歴詐称にはレベルがあり、職歴の一部を省略しただけなど内容によって認められないケースもあります。
正当な解雇理由になるケースは以下の2つです。
- 重要な職歴や学歴の詐称があったこと
- 事実の職歴や学歴を採用時に聞かされていれば、採用しなかったといえること
重要な職歴や学歴の例を挙げると「プログラミング知識があると偽ってIT会社へ入社したが、そもそもプログラミングに触れたことは一度もなかった」「申告した学校に通ったことがない」などです。
また、「実際の職歴や学歴を採用時に聞かされていれば、採用しなかった」と企業がいえる場合も経歴詐称として正当な解雇理由になります。
労働保険(社会保険)はいつ入ればいい?
労働保険(社会保険)は、以下の条件が揃うとき、研修期間・試用期間を問わず入社時から加入する必要があります。
- 期間の定めがなく雇用される場合
- 雇用期間が31日以上である場合
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇い止めの明示がない場合など
これらの条件が揃っていながら労働保険に入っていないことは、法律違反になる場合がありますので、注意が必要です。
研修期間中の解雇でトラブルを起こさないためのポイント
企業側は正当な理由だと判断して解雇したけれど、雇用側は納得が行かずに大きなトラブルが発生するケースは少なくありません。
このように研修期間中の解雇でトラブルを起こさないためには、企業側は事前に対策を講じておくとよいでしょう。
ここでは、研修期間中の解雇でトラブルを起こさないためのポイントを紹介します。
解雇する場合、本人と直接話し合う
企業側が解雇を決めたとき、いきなり雇用側に対して「解雇」と伝えても納得はしません。
逆に、理由を明確に伝えてくれない企業に対し不満を感じてトラブルを引き起こす火種になる可能性もあるでしょう。
何らかの理由で解雇する場合、まずは本人を会議室などに呼び出してしっかりと解雇理由を伝え、解雇は決定事項だと納得してもらえるようにしてください。
解雇理由証明書の作成・発行
解雇のとき、ただ口頭で理由を伝えるだけでは、雇用側も納得が行かず、トラブルに発展してしまうケースが考えられます。
このようなトラブルを回避するためには、解雇理由を文章として証明する解雇理由証明書の作成・発行をして、相手に納得してもらう方法もおすすめです。
解雇理由証明書に記載する内容としては「会社都合による不当解雇ではない」「解雇する人物名」「解雇通知の日付」「解雇理由証明書の発行日」「責任者の名前と印鑑」を記載します。
解雇理由証明書を発行しておけば、今後何らかのトラブルが起きたときの対応を迅速に進められますし、不当解雇ではないという証明にもなります。
まとめ
研修期間はこれから働いていく上で基礎となる知識やスキルを身につけるために大切な時間です。研修期間の意味や目的を理解することで、有意義に研修期間を過ごすことができます。ぜひ、研修期間を利用してご自身のスキルアップを目指してみましょう。