エンジニア採用においてミスマッチをなくす方法【IT企業人事向け】
IT企業の人事ならば、エンジニア採用は必ず通る道だといっても過言ではありません。エンジニア採用を成功へと導く手段は、ミスマッチをなくすこと。そのポイントをどこよりも丁寧に解説します。
エンジニア採用において、起こりやすい問題として「企業が求めている人物像とエンジニアの能力のミスマッチ」が挙げられます。
「自社の求めている能力と採用したエンジニアの能力が違った!」という採用担当の方は少なくないです。
「採用したけど、ミスマッチだった!」なんてことがないように、ミスマッチが起こる理由からそのミスマッチを減らす方法、人事がエンジニアに歩み寄る方法までを解説していきます。
目次
IT業界のエンジニア人材市場動向と近未来予測
日本のIT業界は将来深刻なIT人材不足に陥る事が予想されます。
その要因となるのは
- IT業界の市場拡大が急速に進んでいる
- 2020年問題による組織形成の課題
- デバイス革新、技術革新による必要技術習得者の不足
- 近年顕著に表れている日本のPC離れ
によるものです。
IT業界の市場拡大が急速に進んでいる
近年ICTの発展やIoTに始まりAI、VRといった様々な概念や技術が台頭するにつれ、多くの分野でITが切ってもきれない関係になってきています。
そのため、新しいシステムの導入や既存システムの改修、新規分野への参入といった市場の拡大が急速に進み続け、需用過多になりつつあります。
経済産業省の調べでは2030年には約79万人のIT人材が不足すると予測され、市場の成長速度と人材の確保に大きなギャップが生じています。
2020年問題による組織形成の課題
現在、労働人口が非常に多いバブル・団塊ジュニア世代の高齢化に伴い企業内のポストが足りなくなる、技術者の高齢化に伴い新しい技術への挑戦が鈍感になるなど、少子高齢化の煽りを受けることが予想されます。
今後、組織に必要な人材の見極めと最良なチーム形成がより困難になるといえるでしょう。
デバイス革新、技術革新による必要技術習得者の不足
さらに技術革新がもたらす影響も甚大です。
現在はシステム開発対象のデバイスも多様化してきており、これからも様々なデバイスが誕生する事が予想されます。
それに伴いエンジニアもその種類が細かく分類されていく事でしょう。
これに加えて、”開発環境の進化”が状況に拍車をかけています。
IT業界は技術革新の速度が速く、次から次へと新しい技術が生まれるため、既存技術者の中でも着いて行けず振り落とされる方も少なくありません。
自社が取り扱っている製品によっては流行り廃れの煽りを受け、必要な人材が極端に少なる可能性もあります。
近年顕著に表れている日本のPC離れ
これだけIT業界の成長がありながら、開発の根幹となるPCを使用しない人が増えてきているのです。
現在スマートフォンの普及に従いPCを利用しない若者が増え、LINE調査ではスマホしか使わないユーザーが70%、PCを利用するユーザーが25%という調査結果が出ています。
会社に入って初めてPCを触るという人も増えて来ている状況のため、今後は新卒や中途関係なくエンジニアとしての素養が低い、足りない人材が多くなっていくでしょう。
エンジニア中途採用においてミスマッチが起こる理由
先に述べた深刻なエンジニア人手不足に伴い、より積極的に人材の確保に努めていますが、エンジニアの中途採用の際、しばしば採用後に問題が起き、早期の離職に繋がる場合があります。
こういった中途採用のミスマッチが起きてしまう主な要因として以下の4つが挙げられます。
1.過去に習得した技術や昔の実績がそのまま活用できるという思い込み
エンジニアを採用する際、過去に習得している技術や実績を鵜呑みにして採用し「自社が求めている人材ではなかった」という経験をしたことはあるはずです。
前述したように、IT業界は目まぐるしくデバイス革新や技術革新が起こっています。
そのため、過去に同種もしくは同開発環境での開発実績があってもブランクが長ければ追い付くのに時間を要してしまいます。
なので、その時自社が必要としている技術はどういうものなのかを吟味し、その技術を習得している人材を見極めることが重要です。
2.経験がある開発環境でも、開発対象が違えば戦力になるまでに時間が掛かる事への理解不足
中途採用の場合、当然即戦力となる方を求めます。
そのため、習得済みプログラミング言語や開発実績などを採用基準にする場合が多いでしょう。
しかし採用する側に開発知識が無い場合『開発対象による癖の違い』に対する認識不足が即戦力人材採用の失敗を招いてしまう事が少なくありません。
同じ開発環境で似通った物の開発経験があったとしても細かい所で必要な知識が差異がある場合が多いので、事前に自社のエンジニア等に開発環境以外の細かい必要知識の確認をとっておく必要があります。
3.開発現場の理解不足から募集要項が的外れになってしまっている
当然の事ながら企業によって必要とされるスキルや経験は違います。
ただ同じ開発環境で同種の製品開発を行っていたとしても、募集すべき人材は企業によって大きく異なります。
違いを加味せず募集してしまったがために「今本当に必要な人材でなかった」という事はよくある話です。
企業のウィークポイントを理解せず、的外れな開発スキルと開発経験を採用基準にしたために、本当に必要な人材が埋もれてしまう危険性があります。
必要なスキルは多岐に渡りますので、まずは既存エンジニアにアンケートなどを取り、今のエンジニアに不足している事や欲しい人材を調査してみると良いでしょう。
4.開発技術以外のスキルチェック不足
採用するエンジニアには指定された物を開発する能力が必須ですが、それだけではなくコミュニケーション能力やしっかりとした開発工数や納期感覚を持っているかなども重要になってきます。
コミュニケーション能力が低ければ開発仕様の認識に齟齬が生まれたり、エンジニア同士や営業などの他業務者との情報共有が上手く行きません。
開発工数や納期感覚が未熟なために仕事の安請け合いや土壇場での納期遅れを多発させてしまうなど開発スキル以外の要素も業務に与える影響は大きいものです。
エンジニア採用の際は開発能力に目が行きがちですが、多くの人と強力して進めなくてはいけない関係上コミュニケーション能力や人間性なども重要になってくるのです。
ミスマッチを減らす方法
様々なミスマッチの要因ですが、エンジニアを採用する際は正しい技術理解と組織課題の抽出、求める人物像のイメージを膨らますことで人材ミスマッチを最小限に減らす事ができます。
具体的な方法について解説していきます。
1. IT業界の事やエンジニアに対する理解の向上
エンジニアはその求められる能力の多さが特徴であり、単純な開発スキルや実績での判断は危険です。
そのため、まずはIT業界や開発業務とはどういうモノなのかを人事が知っておくことはとても大切なポイントになってきます。
技術の関連性や働き方、プロジェクトの規模感による役割など、エンジニアの仕事の一般常識を知ることが重要です。
自社のエンジニアの過去の経歴をヒアリングする、技術に関する勉強会に参加する、他社の人事にヒアリングするなど、内外に目を向け情報を得ていきましょう。
2. 必要な技術、知識、経験を事前に打ち合わせ
企業によって本当に必要な技術、知識、経験は全く異なります。
そしてそれは開発業務の表面上を見ているだけでは決して分からないモノです。
そのため、適切な人材を見つけるために既存エンジニアに対しアンケート調査や採用に関する打合せなどを行う事は必須事項と言えます。
使用しているスキルの把握はもちろん、どんな工程の経験が必要か、何に注目するべきかなどを確認しましょう。
慣れるまでは候補者の情報をエンジニアと一緒に確認するのも1つの有効な手段です。
3. 開発能力以外の部分を見極める為の環境確立
開発能力や経験だけでなく、エンジニアにとってとても重要な能力である「コミュニケーション能力」「納期感覚」「人間性」などはしっかりとそれを計れる戦略が必要となります。
それらの能力を計るための質問や筆記テストなどを事前に準備し採用基準とする事によって、採用後にトラブルを起こす可能性がある人材を見極める事が出来るようになります。
また、カジュアル面談を活用したり実際に働いているメンバーと顔合わせをしてもらい相性の良さを確認してみても良いでしょう。
人事とエンジニアが歩み寄るメリット
人事にとってエンジニアへの理解は必要不可欠な物です。
エンジニアは専門職でありそのスキルは多種多様にあるため、自社とって本当に必要な人材を探し出すことはとても難しい課題といえるでしょう。
しかし、エンジニアの仕事について理解を深め、既存のエンジニアと連携を取って人材獲得の策を立てる事によって採用活動に大きなアドバンテージを得る事ができます。
中途人材は技能教育の過程を簡略化することが出来るだけでなく、他のエンジニアに対し良い影響を与えたり、それまでに蓄えてきた知識や経験から企業に新しい風を吹かせ大きな貢献をしてくれる事さえあります。
たった1人の採用でも、その結果は多きな開きがあるため、人事とエンジニアの歩み寄りは企業にとってとても重要なポイントとなるでしょう。
人事とエンジニアが歩み寄る方法
人事とエンジニアが歩み寄る方法として有効な手段はいくつか挙げられますが、実践しやすいものは「業界の最新情報をチェックする環境作り」と「初歩でも構わないので開発を経験してみる」事でしょう。
1. 業界の最新情報をチェックする環境作り
エンジニアに歩み寄る上でIT業界について知ることはとても重要です。
というのもIT業界というのは常に技術革新やデバイス革新が起きているため、企業の将来の事を見込んで人材を見極めるのに最新の情報は欠かせません。
この時必要になるのは情報の深さより幅です。
IT業界の最新情報を紹介しているサイトは複数存在するため、読みやすく自分に合ったIT情報サイトを毎日チェックしてみると良いでしょう。
そうする事で日々IT業界は進化し続けている事やセキュリティ問題とIT業界は切っても切れない関係という事が肌で感じる事ができます。
お勧めIT情報サイト
2. 簡単なプログラミング体験
プログラミングと聞くと未経験者にとって高いハードルを感じてしまうものですが、実際に体験してみるとすんなり理解できるものです。
高いスキルを身に付けようと頑張る必要はなく、どういった仕組みか体験するだけで十分エンジニアとの距離を縮められるでしょう。
学ぶのであれば、自社の業種に合わせて1つプログラミング言語を学習し、ちょっとした機能を実装してみると良いでしょう。
また、余裕があるのであれば同じプログラミング言語を使って全く違うジャンルの物を開発してみると開発内容によってやるべきことが全く違う物だと肌で感じることが可能です。
プログラミング言語に関しては、自社開発なのか常駐/受託なのかによって学んでおきたい内容が異なるため、以下にそれぞれのお勧めの言語を記述しておきます。
自社開発系
Web系の代表的な言語とはしてWebページの外観などを構築する「HTML」とよくWEBアプリケーションに使用されている「Ruby」を学んでみると良いでしょう。
まずは、簡単に文字とボタンが用意されているWebページをHTMLで作り、次にRubyによってボタンを押した際の機能を実装すれば、Webエンジニアがどのような仕事をしているのか大まかに把握する事ができます。
更に、このHTMLとRubyを学ぶ事は他にも大きな利益を与えてくれます。
常駐/受託系
常駐/受託系の開発を試すのであれば言語はJavaがお勧めです。
Javaは古くから存在する言語でありながら愛好者も多く、なおかつ多くのプラットフォームで活用されているため、汎用性の高さでは群を抜いているプログラミング言語です。
Javaを習得する事によってPC用ツール、ゲーム、WEBツール、スマホアプリなど多種多様なシステムを開発することができます。
多くの方が使っている人気ある言語のため、インターネット上にJava入門サイトやJavaへの疑問を解決してくれるプログラミング指南サイトなどが充実していることも魅力の1つでしょう。
Javaでのシステム開発を体験するためのおすすめ開発支援ツール
おすすめは、NetBeansという物です。
NetBeansには直感的且つ簡単に画面作りを行える機能が備わっているので、このツールを利用し真ん中にボタンを1つ設置した簡単な画面を作り、ボタンをクリックした際の動作を作るのが良いと思います。
WEB系の場合、画面構成はHTMLという言語で作らなくてはいけませんが、Javaの場合は開発支援ツールのアシスト機能が充実しているため、簡単なマウス操作だけでハイクオリティな画面を作る事ができます。
こうして画面や動作を作りこんでいくことでシステム開発がどのような事をやっているのかを学べますし、その後にスマホアプリで同じような機能を実装してみれば、言語が同じでも環境によって癖や覚えるべきことが多い事が実感できる事でしょう。
WEB系にしろシステム系にしろ人事の方に感じて欲しい事はエンジニアはどのような事をしているのか、そして開発能力の評価は単純ではないということです。
IT業界の進歩や流行の変化の速さを知り、簡単なプログラミング体験を通して同じ言語でも業務によって必要とされるスキルや経験が細かく分かれることを知れば、エンジニアに対してしっかりと歩み寄ることができます。
その上で既存のエンジニアとしっかりとコミュニケーションを取り連携していく事で、自社に大きく貢献してくれる優秀な人材を発掘する事に繋がります。
まとめ
IT企業の人事ならば、エンジニア採用は必ず通る道だといっても過言ではないでしょう。
エンジニアを採用する上で、自社の求める人材を的確に採用することが重要であり、ミスマッチをなくすことで成功率を高めるでしょう。
多くの人材と接点を持つ人事だからこそ、エンジニアや業界に対しての全体的な知識が必要になってきます。
より効率的で確実な採用活動をすべく、ミスマッチをなくすためには、以下3点が大切です。
- 自社に必要な技術、知識、経験を把握しておく事
- IT業界や開発業務について知っておく事
- プログラミングを体験してみる事
この3点を意識し、エンジニア採用のミスマッチをなくしましょう。
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