新入社員研修がきついと感じるのはなぜ?原因や企業ができる対策方法
新入社員研修について多くの企業が抱える悩みは、研修に対する新人の「きつい」という感覚と、それに起因する目標達成の難しさです。新人の気持ちに寄り添った研修を実施している企業事例からも学び、自社にできる範囲で適切な研修計画を立てましょう。
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新入社員研修について多くの企業が抱える悩みは、研修に対する新人の「きつい」という感覚と、それに起因する目標達成の難しさです。対応に悩む人事育成担当者の方もいるのではないでしょうか。
新人が新入社員研修をなぜきついと感じるのか、これに企業はどのように対策・対処すべきなのかを理解することで、研修の目標達成を目指しやすくなります。新人の気持ちに寄り添った研修を実施している企業事例からも学び、自社にできる範囲で適切な研修計画を立てましょう。
この記事では、新入社員研修がきついと感じる理由や対策、企業事例5選についてご紹介します。
目次
- 新入社員研修がきついと感じる5つの原因
- 新入社員研修についていけないと起こり得るリスク
- 新入社員研修がきついと思われないための対策方法
- 新入社員がきついと訴えてきた場合の対処法は?
- 新入社員研修の「きつい……」に対策している企業事例5つ
- まとめ
新入社員研修がきついと感じる5つの原因
新入社員研修は主に、社会人経験のない新卒人材に対して実施されます。企業で実施される研修で初めての経験を積み、さまざまな原因できついと感じる新人は多いです。まずは新人が新入社員研修できついと感じる5つの原因を見ていきましょう。
環境の変化による影響
社会人としての生活スタイルや習慣は、新卒人材がそれまで体験してきた学生生活やアルバイトとは大きく異なります。毎日定時に出社し、場合によっては満員電車に揺られ、遊びや気分を優先して気軽に休むこともできません。
新入社員研修の期間中はホテルや寮に泊まり込みとなるケースもあり、学習を強制させられるような気持ちになることもあり得ます。環境の変化や行動の制限がストレスとなり、それまでの生活との大きなギャップをきついと感じる新人は多いでしょう。
情報量の多さによる影響
新卒向けの新入社員研修では、正社員として最低限のマインドセット・知識・スキルを学びます。例えば企業の理念やビジョン、ビジネスマナー・ビジネスマインド・コンプライアンス、OAスキルやビジネス文書の作成方法などです。業務に必要となる専門的なスキルの基礎、自社独自の業務プロセスなども学ぶことになるでしょう。
こういった多種多様な情報を詰め込むようなカリキュラムになっている場合、負荷を感じるケースもあるようです。
指導者が厳しいことによる影響
指導担当者は新卒人材に対して、学生生活やアルバイトとは違うということを深く理解させるために、わざときつく当たる場合もあります。これはビジネスパーソンに必要なストレス耐性を育む意味もありますが、言い方によっては人格を否定されたと感じる新人も出るでしょう。
新人時代の気持ちを忘れた担当者がコア業務の合間に指導することで、新入社員に対してぞんざいな扱いになることもあり得ます。そのような状況では新入社員は萎縮してしまいます。
適切なコミュニケーションが取れないことによる影響
指導担当者と新人の間には知識・スキル・経験に大きな差があり、教える・教えられるという立場が固定的になりがちです。研修外で会話したこともない指導者が延々と講義を続けると新人は心理的な壁を感じ、「分からないことがあっても聞けない」という状況に陥りやすくなります。
学習のつまずきもフォローしてくれない指導者だと合わないと思ってしまい、学習意欲は低下する一方です。雑談も相談もできない指導者との関係をきついと感じる新人もいます。
研修内容による影響
研修の価値は企業側が決めるものと考えがちですが、新人も研修の意味を考えます。研修で学ぶ知識・スキルが実務に必要なものであっても、新人にとって生かし方をイメージできない場合、やりがいや成長につながらないと感じるかもしれません。
価値がないと感じる研修を延々と受講し続けることはストレスとなり、精神的にマイナスな状態となる新人も珍しくありません。
新入社員研修についていけないと起こり得るリスク
新入社員研修をきつい感じ、新人がついていけなくなるケースがあります。この問題を放置すると、新人のモチベーション・理解度の低下や早期退職、今後の採用活動に対する悪影響など、さまざまな問題が生じます。ここでは、リスクや懸念点について解説します。
モチベーションや理解度の低下
研修期間が終わればカリキュラム通りの研修プログラムは終了します。企業側は「十分に教育できたはず」と考えるかもしれませんが、新人自身が自発的に学び取ろうとする意識がなければ高い学習効果は期待できません。
研修期間中にきついと感じていた新人は学習意欲が低く、理解度や学習定着率は想定を大きく下回る場合があります。結果的に実施しただけの研修となるリスクは小さくありません。
新入社員の早期退職
新入社員研修の期間中に新人がきついと感じていると、学習意欲だけでなく、働くこと自体の意欲を喪失することもあります。入社後まもなく実施される新入社員研修の印象が悪ければ、「入社する企業を間違えた」と考え、早期退職を選ぶ新人が出てもおかしくありません。
将来的に企業を背負うような人材の育成を目指していたとしても、スタートラインで人材戦略が失敗し、貴重な人材を失う結果になる恐れもあります。
今後の採用活動に影響が出る
新人が新入社員研修で体験するきついという感覚は、企業側が考えるより重大なものです。受けたショックやストレスを自己解決できない場合は、その体験を友人知人などと共有することもあるでしょう。
TwitterやInstagram、転職サイトなど企業の口コミ情報を書ける媒体は数多くあります。Web上に公開された口コミ情報は簡単に検索可能です。企業研究をする求職者が「あの企業は〇〇らしい」という悪評に触れる機会が増えてしまうと、今後の採用活動に影響が出てしまいます。
新入社員研修がきついと思わないための対策方法
新入社員研修は企業側が適切な対策をすることで、新人にきついと感じさせることを回避しやすくなります。例えば研修の目的を理解させることやマンツーマンサポート、グループワークの実施などです。新人の悩みを払拭するための対策方法を見ていきましょう。
何のために研修をするのかを伝える
研修で学ぶマインド・知識・スキルがなぜ必要なのかは、ビジネスのあり方と関連付けて考えなければ分からないことも多いでしょう。企業側からすれば当然のことでも、多くの新人はビジネス自体が未経験です。新人が研修や学習内容に意義を見いだせなければ、前向きに取り組むことは期待できません。
研修がなぜ行われ、学ぶ内容はどのようにビジネスに影響するのか、その目的・重要性・価値などを研修前に伝えることが重要です。
一人ひとりを観察する
新人は性格・視点・考え方などがさまざまで、予備知識の有無や職業適性なども人材によって異なります。学習内容にも得意不得意があるため、つまずく部分も違うでしょう。
脱落者を出さないためにも、適宜フォローをすることが大切です。どのようなケアが必要なのか、いつ・どのタイミングでの声かけが適切なのか、一人ひとりをよく観察し判断します。
メンターによるサポートをする
講師とは別に、各新人に対してメンターを任命することも効果的です。メンターが研修の悩みや不安事の相談相手となることで、学習のつまずきや人間関係の問題などを早期発見し、学習面・メンタル面をサポートできます。
ただしメンター制度は社内人材の業務を圧迫することが注意点です。コミュニケーションスキルも求められるため、適切な人材が限られる問題もあります。社内リソースでのメンター制度運用が難しい場合、マンツーマンサポートを取り入れた研修会社を利用するのもおすすめです。
配属部門の上司と面談の機会を設ける
新入社員研修後の配属先が決まっている場合、配属部門の上司と面談の機会を設けることも効果的です。配属先で求められる人物像を上司が明確に伝えることで、各新人の目標設定がしやすくなります。何に向けて学習するのかという方向性を定めることで、学習効果を高められるでしょう。
また配属部門の上司が研修中から努力を評価することで、新人は仕事が認められる実感を体験でき、モチベーション維持にも役立ちます。
研修のスケジュールに余裕を持たせる
人材育成担当者は多くのことを学んでほしいとの想いから、研修のプログラムを詰め込みすぎてしまうことがあります。課題が多い、スケジュールが過密であるという状況は、新入社員にとっては大きな負荷です。
業務時間外に多くの作業を課してしまうと、プライベートを大切にしたい人は会社に対して「納得できない」といった感情を抱くきっかけとなることもあります。余裕を持たせたスケジュールを心がけましょう。
グループワークを実施する
座学が主体の新入社員研修の場合、同じ場にいながら各新人が個別に学習しているという状況になりがちです。聞き手に徹することも多く、特に同期との関係構築も進んでいない新人だと、不満が募っても横のつながりで解決しにくい場合もあります。
そのような場合は複数名で共通の課題に当たり、チームとして目標達成を目指すグループワークを取り入れるのがおすすめです。自然と生まれる協力関係がモチベーション向上に役立ち、切磋琢磨していく仲間関係を早期に形成することにもつながります。
新入社員がきついと訴えてきた場合の対処法は?
新入社員研修の期間中には、新人のきついという訴えを企業側が漏れなく拾い上げましょう。例えばアンケート・レポート・1on1ミーティングから新人目線での研修の問題点に気付き、行動観察から体調不良などを察知できます。きつい状況に気付いたら、研修計画の見直しや体調回復の優先が必要です。
研修の内容やスケジュールを見直す
企業側が考える適切なカリキュラムやスケジュールは、新人にとってはきついものである場合も珍しくありません。
・休憩時間が少ない
・拘束時間が長い
・課題が多過ぎる
・研修内容のレベルが高過ぎる
例えばこのような場合です。
新人の立場に立って研修を考えなければ、高い学習効果は望めず、最悪の場合は早期退職を誘発します。新人の学習・勤労に対する意欲を削ぐ明確な問題があるなら、研修の内容やスケジュールの見直しをしましょう。
研修への参加を中断してもらう
新入社員研修を受ける新人は、急な環境の変化で大きなストレスを受け体調不良になることもあります。しかし疲弊して心身の不調を自覚しにくくなっている状態もあり得ます。
新入社員研修の段階で新人が潰れてしまうと、人材戦略は失敗です。無理を強いると体調のさらなる悪化を招く恐れもあるため、心身の不調が見られたら研修を中断するなど回復を優先しましょう。
新入社員研修の「きつい……」に対策している企業事例5つ
新入社員研修をきついと思わせないためには、研修目的の明確化やマンツーマンサポート、スケジュールに余裕を持たせることやグループワークの採用などが効果的です。ここでは、新人の気持ちを配慮された新入社員研修を実施している企業事例5つを紹介します。
ヤマハ株式会社
ヤマハ株式会社は、研修の目的を明確化している好例です。入社して3年間を若年層教育期間として位置付ける同社は、育成のゴールから各年次の目標を明確にし、その達成に必要な能力要件を定めています。
座学中心で知識偏重の詰め込み型教育から脱却するために、短期的にインプット・アウトプットを繰り返す教育スタイルへシフトしました。アウトプットの体験から「ここでこのスキルが必要なんだ」と気付きやすくなる効果もあったようです。研修後には定期面談を実施し、全社的な育成サイクルの改善に努めています。
ホーチキ株式会社
ホーチキ株式会社は、入社1年目~3年目まで行う新入社員教育により、入社から独り立ちするまでをサポートします。特色ある取り組みが先輩社員によるマンツーマン指導です。
入社後まもなく行われる5泊6日の合宿教育で同期のつながりを深め、約2か月間の導入教育で研究開発や製造の現場を体験します。配属から1年間は各新入社員に先輩社員がブラザー(男性)もしくはシスター(女性)としてつき、マンツーマン指導をしつつ、業務に限らず何でも相談できる体制です。
富国生命保険相互会社
富国生命保険相互会社は、新入社員研修にメンター制度を取り入れている好例です。同社の総合職新入職員の半数程度は地方支社に配属され、相談できる存在に恵まれない新人が孤独感を訴えるケースが増加していました。
そこで1年次の各新人に対して、異なる所属の主任昇格者(通常は4年次)をメンターとしてつけ、6月から約10か月間メンティをサポートする制度を取り入れます。メンターの管理育成能力も養うと共に、「自発・独創・利他」の3つの要件を満たす人材を育成する狙いです。
サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社は、入社から1年をかけて独り立ちできるまで育成することを目標に、OJTとOFF-JTを連携させた育成を行っています。入社後まもなく実施される合宿形式による約2週間の入社時集合研修を経て、配属後は現場でOJTを受けつつ、部門ごとに最適化されたOFF-JTに随時参加する仕組みです。
土台となる主体性(目的意識・責任意識・チャレンジ意識)と協調性(信頼・和・アサーティブネス)を習得するOFF-JTはキャリア開発部が担い、OJTはマネジャーとコーチャーが連携して進めていきます。
能美防災株式会社
能美防災株式会社は、新入社員研修にグループワークを取り入れています。入社式が行われる4月1日に新人・2年目社員に対して全員分のプロフィールシートを配布し、4月1日から3週間にわたって新入社員教育を実施します。
「新入社員&入社2年目社員合同プログラム」では、新入社員と2年目社員の混合チームがチーム対抗で劇を発表し、全員投票により最優秀グループ・優秀グループを表彰する仕組みです。配属後のイメージ形成や若手の人脈ネットワークの醸成につながると共に、2年目社員のフォローアップ研修としても効果を発揮しています。
まとめ
新入社員研修は主に、社会人経験のない新卒人材に対して実施されます。環境の変化や情報量の多さ、同期・先輩社員・指導者とのコミュニケーション不足などにより、「きつい」と感じる新人は多いです。この感覚を放置すれば高い研修効果は期待できず、早期退職や風評被害を招く恐れもあります。
重要なことは、新人の立場や気持ちを理解し、配慮された研修を立案・実施することです。しかし各新人の特性に合わせた研修を実施することは、リソースやノウハウの不足により対応が難しい場合もあります。新入社員研修に豊富な実績のある研修会社を利用するのがおすすめです。