OJT研修とは?エンジニア研修に役立つ【IT企業人事向け】
人事・研修担当者向けにOJT研修について解説した記事です。OJTとは何かについて、OFFJTの解説と併せて徹底解説しています。実施する上での流れやおさえておきたいポイントなどIT企業初心者人事の方には必見です!
「エンジニアの研修はOJTでよいのか?」「エンジニアにOJTを行うメリットは?」など、IT企業の初心者人事が抱える研修の問題を解決します。
近年注目されているエンジニアのポテンシャル採用を行うIT企業の人事の方も必見です。
目次
OJT研修とは
OJTの基本
OJTとはOn-the-Job Trainingの略で、上司や先輩が実際の仕事現場で実務を通して教育を施していくという制度のこと。
対義語として、OFFJT「Off the job training」と呼ばれる、実地ではなく座学や研修等、別途用意された環境でトレーニングを行う手法があります。
OJTは、一般的に先輩社員がトレーナーとなり、新入社員の指導にあたります。
後輩が先輩から仕事を学ぶという環境はどこの企業にもなじみのある手法ですが、厳密にOJTを実施できているケースは実は多くありません。
場当たり的に実施するのではなく、目的や計画に沿って、改善を施しながら実施してこそ確かな教育効果を得られる手法となります。
詳しくは後述しますが、しっかりとOJTを実施できる仕組みを整えることができれば、非常に効果的な教育手法となる可能性を秘めています。
エンジニアのOJT
エンジニアの仕事は専門性が高く、他のメンバーとの連携がとても重要になってくる職種のため、こういったOJT制度を効率的に行うことで大きなメリットが生まれます。
エンジニアのOJTは基本的に、
- 業務フローの説明、及びチェック
- プログラム開発における社内ルールの説明、及びチェック
- 業務の進捗度チェック
- 成果物チェック
が挙げられます。
しかし、これらは中途人材なのか実務経験の無い新卒人材なのかによって若干異なります。
中途採用の場合、業種やプログラミング開発するための環境が同じ職場であっても、企業によって細かい点が変わってきます。
例えば、業務フローやプログラム開発のルールなどは企業により異なるという事が珍しくありません。
そのため中途採用のエンジニアでも、初動の段階ではOJTによる先輩や上司の協力が必要不可欠となってきます。
OJTを導入する目的とは
OJTを実施する最大の目的は、新入社員(中途の新人も含む)の「早期戦力化」です。
座学で学んだ知識はそのまま現場で使うことはできず、実践で使えるように落とし込む必要があります。
しかし、OJTで先輩社員の側で見て学び、フォローのもと自分でもやってみるというトレーニングは、即現場で使えるスキルとなります。
適性や習熟度も常時先輩社員が確認することができます。
このようにOJTは早期戦力化するにあたって効率が良い特性を持っているため、多くの企業に採用されているトレーニング手法となっています。
OJT研修のメリット・デメリット
OJT研修には明確なメリットとデメリットが存在します。
こうしたメリット・デメリットの認識不足や対策不足が、大きなトラブルを招いてしまう危険性もあるため、エンジニアの社員教育制度を構築する際はメリット・デメリットをしっかりと把握し対策を練る必要があります。
以下の項目はエンジニアに対するOJTのメリット・デメリットの一例です。
これからエンジニアの教育制度を作る際に、1つの判断基準としてみてください。
OJTのメリット
短期間で戦力になる
百聞は一見にしかずという言葉があるように、エンジニアを大きく成長させるのは実務経験です。
もちろんある程度基礎的な知識を身に付けているのが前提条件ではありますが、トラブル対応や他メンバーとの連携については実践で学ぶしかありません。
OJTであれば業務に必要なスキルを学ぶとともに、実務でしか学べないさまざまな知識も一緒に学べるためメンバーの成長が早く、短期間で戦力になることが期待できます。
コミュニケーションを促進できる
エンジニアに求められるのは高い技術力だけでありません。
組織の中で仕事を進めるにはコミュニケーション能力が必要不可欠。
自社のメンバーはもちろん、時には他社のメンバーと協力することもあるため、人と関わることは避けられません。
その点、OJTでは必然的に先輩や上司がサポートに付きます。
このおかげでコミュニケーションの頻度が増え、結果的に意思の疎通を自然に行えるようになるのです。
教える側のメリット
ここまでOJTのメリットを2つご紹介しました。
これらはどちらも教わるメンバーの能力が上がる点にフォーカスを当てたメリットですが、実はOJTのメリットは教える立場にある先輩や上司にもあるのです。
新入社員の特徴を早めに把握できる
人にはそれぞれ個性があります。
例えば、能力は高いけれど人に任せるのが苦手だという人、仕事は遅いけれど他の人にはない視点で問題解決できる能力を持っている人など…。
苦手な能力を克服させることも大事ではありますが、強みを活かしてもらうことも忘れてはいけません。
現場への投入が早ければそれだけ上司が早くジョインしたメンバーの特徴を知ることができ、より早く能力を引き出すことにつながります。
初心を取り戻すことにつながる
古代ローマ帝国の政治家であるセネカは「人は教えることによって、もっともよく学ぶ」という言葉を残しました。
誰しも理解できていないことを人に説明はできません。
自分では理解しているつもりであっても、いざ教えてみようとすることで足りない知識に気づくこともあるでしょう。
このようにOJTのサポートを担当をしたメンバーは初心を振り返ることができ、さらなる成長のモチベーションを高めることができるのです。
OJTのデメリットと対策
デメリット
思わぬトラブルを引き起こす可能性がある
新しく採用した人材は仕事の進め方がよく分からず、何かとミスをすることが多いものです。
通常であれば周りのメンバーが対処にあたり問題は解決しますが、新人は時に経験者の誰もが予想できないミスをする可能性があります。
この小さなミスが後々大きなトラブルにつながる可能性も否定はできません。
教育にあたる先輩・上司が必要不可欠
上記の通り、新人は時に思わぬトラブルを引き起こすことがあります。
これを防ぐためには先輩や上司のサポートが必須。
トラブルを放置した結果、取り返しがつかなくなってしまうこともあるでしょう。
実務未経験の社員はもちろん、すでに技術を持っている人でもサポートが必要なのは同じこと。
自社だけの独自ルールがあるのであれば忘れずに説明するなど、きめ細やかなサポート体制が必要になります。
対策フロー
社内でのOJTに対する意識調査
OJTを進める上では他部署の協力も募らなければいけませんが、現場は目の前のプロジェクトを終わらせることで手一杯だということもあるでしょう。
OJTは現場担当者の力を借りる必要があるため、人事の独断で進めるわけにはいきません。
最大限OJTを活用しようとするならまずは現場の理解を得る必要があります。
まずは現場の人間がOJTに対してどのような印象を持っているか意識調査を行いましょう。
サポートの重要性に対する理解を徹底教育
他部署の理解がなければ、せっかく入社したメンバーが現場の中で置き去りにされてしまう可能性があります。
置き去りにされたメンバーはいつまで経っても仕事を覚えることができず、最悪の場合先ほども説明したような大きなトラブルを引き起こすこともあるでしょう。
このような事態を防ぐために必要なのは現場担当者にサポートの重要性を理解してもらうこと。
現場の責任者と面談を行ったり、教育の意識改革を行う講習を実施するなどの対策が必要です。
徹底したサポート環境の構築
サポートが重要だと理解してもらえても、そもそも教えることが苦手だという人もいるでしょう。
OJTを始めた後も教育のすべてを現場に丸投げするのではなく、定期的に進捗を確認する、疑問点を確認するといった時間を取るようにしましょう。
OJDについて
OJDはOn the Job Developmentの略で、将来的に必要になる能力を身につけさせる教育を意味します。
具体的にはマネジメント能力など管理職で必要になる能力を身につけてもらうのが目的です。
少子高齢化のこの時代において、今後さらに人手不足が深刻になっていくことは避けようがありません。
OJTによる教育制度が十分確立したら、会社の将来像も見据えOJDも実施する必要があることは頭の片隅に置いて置きましょう。
OFFJTとは
OFFJTはOff The Job Trainingの略。
日本語では職場外研修と言う意味があり、実務ではなくセミナーや研修を通して能力を磨く教育制度のことをいいます。
例えば、取引先に対する心構えなどを学ぶコミュニケーション研修、スキルアップを目的としたプログラミング研修などが挙げられます。
OFFJTのメリット
専門的な知識を深く学べる
ポテンシャル採用で採用した中途社員や新卒の学生など、まったく未経験の人材をいきなり実践に投入するのはなかなか難しいものです。
基礎的な知識がなければそもそも何を学べばいいか分からないため、いつまで経っても1人で業務をこなせるようにならないというメンバーも出てくるでしょう。
その点、OFFJTであれば基礎の基礎からじっくりと学んでもらうことが可能。
ある程度知識を身につけた段階で徐々に実践も経験してもらうようにすると良いでしょう。
体系的に学べる
すでにエンジニアとして働いている人であっても、自分の担当する分野のことなら何でも分かる、というわけではありません。
なぜなら一定の業務についていると同じような知識を繰り返し使うことが多く、それ以外の知識がなくても困らない場合があるからです。
このようなメンバーにOFFJTを行い、幅広い知識を体系的に学んでもらうことができれば、いつもの業務に対して新たな発想を取り入れてくれるかもしれません。
知識の習得具合のバラつきを防止
会社によっては事業所が複数あることもあるでしょう。
事業所が違うことで業務内容に違いが出て、メンバー間で知識にバラつきが起きることもあります。
バラつきが発生すると別の事業所に転勤しても周りの仕事についていけないなどの問題が発生し、人員の再配置を行いにくいなどのデメリットが出てきます。
比較的知識の少ないメンバーのレベルに合わせてセミナーや研修を実施すれば、メンバー全体のレベルが底上げされバランスを取ることができます。
学習に集中できる
実務経験がエンジニアが大きく成長させるということはOJTのメリットでも説明した通り。
とはいえある程度まで成長してしまうと、業務に変化がない限り仕事の中で新しいスキルを伸ばすきっかけはなくなります。
会社としては新しい技術を身につけて業績アップに貢献してほしいものではありますが、忙しくてなかなか新しい能力を磨く機会がないという方も少なくありません。
しかしOFFJTとして学ぶ時間を設けることができればメンバーは学習に集中することができ、新たな能力を伸ばすことができます。
OJTとOFFJTの実施動向
厚生労働省では労働者の能力開発の実態を明らかにするとして、毎年「能力開発基本調査」を実施しています。
ここでは2018年の能力開発基本調査を参考にしながら、OJTとOFFJTそれぞれの実施動向をご紹介します。
OJTの実施動向
調査によると計画的なOJTを実施している事業所は全体の63.3%。
前年は59.6%、前々年は58.9%となっており実施率は2年連続で増加しています。
もともと日本企業ではOJTを採用している企業が多いのですが、ここ数年の間でOJTの価値が見直されてきているのかもしれません。
OFFJTの実施動向
OFFJTの実施率は全体の75.4%。
前年は74.0%、前々年は72.0%とOFFJTについても増加傾向となっており、OFFJTへ注目が集まっていることが伺えます。
OJTとOFFJTの実施ポイント
どんな効果がある施策であっても、ただ闇雲に実践するだけではあまり効果が期待できません。
特にOJTはデメリットでも説明したように大きなトラブルにつながる起きる可能性も孕んでいるため十分な注意が必要です。
下に紹介する実施ポイントを押さえ計画的に実行していきましょう。
OJT実施のポイント
人事担当者が全体を管理し、長期的な育成目標を立てる
現場にいる人間が実務の中で直接指導するのがOJTとはいえ、人事は現場へ丸投げにしていいわけではありません。
厳密なものでなくても構わないので、各部署と話し合い具体的な人材育成の目標を設定しましょう。
一定期間ごとに目標を達成できているかを確認し、達成できているようであれば次の目標を決める、できていないようであれば改善方法を探るといった取り組みを実施してください。
担当者を固定する
OJTでは先輩や上司などサポート役を付ける必要がありますが、サポート役が日によって違う人になってはいけません。
人によって細かい点でやり方や考え方が違うため、教わる側からすると「前日に教わったことと違う」などと混乱してしまいます。
まずは、誰か1人の担当者のやり方を覚えてもらい、細かい教育は一通り業務をこなせるようになってから行いましょう。
4段階職業指導法
4段階職業指導法は以下4つのプロセスで教育を行います。
- やって見せる
- 解説・説明する
- させてみる
- 改善指導を行う
どれも当たり前のことだと思うかもしれませんが、現場によっては簡単な説明をして後は新人に丸投げしていたり、上司や先輩が具体的なフィードバックを行っていなかったりという場合があります。
上記4つのプロセスは教育をするにあたりどれも非常に重要なもの。
それぞれのプロセスの重要性を理解してもらうとともに、間違いなく実践できているかチェックできる仕組みもあると良いでしょう。
OFFJT実施のポイント
OFFJTのメリットを説明する上で専門知識を学べる、学習に集中できるといったメリット挙げました。
とはいえOJTのメリットでも述べたように実践的な能力を磨くには実務を行うことも大事です。
OFFJTだけで教育を済ませるのではなく、必要に応じてOJTとOFFJTを組み合わせていくのが理想的な社員教育といえるでしょう。
OJTを実施する流れ
OJT実施の流れを解説します。よくある失敗事例は、「いきなりOJTをはじめてしまうこと」。
効果的なOJTを実施するためには、相応の準備と正しいプロセスを辿ることが重要です。以下に見ていきましょう。
1.OJTの目標(ゴール)と到達するための計画を作成
まずはOJTのゴール設定と、そこに至るためにどのような教育を施せばよいかの計画を作成します。
これらを事前に明確にすることで、トレーニングの進捗や効果測定も用意ですし、ステージにおいてやるべきことも自ずと見えてきます。
2.OJTトレーナーの選定とトレーナーの教育
次はOJTを担当するトレーナーを選定します。OJTの成否はいかんせんトレーナーの資質による部分が大きいため、適性や意欲などを加味して選定することが重要です。
トレーナーが決まったら、上記の目標及び計画、初見ならトレーニング方法の教育を施す場合もあります。
3.トレーニーを配属してOJTを実施
いよいよ現場にトレーニーを配属して、OJTを実施します。
先ほども紹介した以下のポイントに気をつけながら実施しましょう。
- やって見せる
- 解説・説明する
- させてみる
- 改善指導を行う
OJT計画に基づき、上記を何度も何度も繰り返してトレーニーを鍛え上げていきます。
もし今回ご紹介するプロセスを全て実施することが難しい場合や、すでに勢いではじめてうまく行っていないという場合には、こちらの基礎サイクルをトレーナーとトレーニーに周知するだけでも、大きな改善が見込めます。
4.目標達成度を計測
最終ゴールに到達した時だけではなく、定期的にトレーナーが目標達成度を計測して、なにができてなにができないかを洗い出していきます。
できない部分はこのプロセスを何度も繰り返したり、時にはトレーナーの判断で計画に修正を加えたりすることもあります。
5.フィードバック
効果測定が完了したら、現状の評価や課題をトレーニーにフィードバックします。
できていない部分を指摘するだけではなく、ゴールに向かってどの程度進歩したかを伝えて、トレーニーの意欲を高めるのもトレーナーの仕事です。
フィードバックが完了したら、再度「3.」の手順に戻って、ゴールに到達するまで繰り返します。
OJTを成功させるためのポイント
OJTの実施手順について解説しました。ここでは、更に成功確度を上げるために、いくつかのポイントをご紹介します。
ミスを前提に考えておく
新人は先輩が手本を見せたとしても、ミスをしてしまうものです。
それを都度厳しく叱ったり、一度で覚えろ等の強い態度を取ってしまうと、委縮してOJTが上手く進まなくなってしまいます。
「ミスをするのが当たり前」と考えて、あらかじめ余力をもってトレーニングを進めた方がうまくいきやすいです。
マッチングの重要性
OJTはトレーナーとトレーニーがコミュニケーションを取りながら進めるものですので、当然相性が大きく関わってきます。
トレーナーの人選だけでなく、トレーナーとトレーニーの相性にも目を向けてみましょう。
あまりにかみ合わない場合には、メンバーをチェンジした方が良い場合もあります。
環境構築
上記の章で紹介したOJTの手順が実施できないほど人手不足であったり、現場がリソース不足であったりする場合は、トレーニーが放置されたり相互にストレスを抱えたりと、失敗につながりやすい傾向にあります。
OJTを実施できる環境を整えるのも成否の鍵です。
質問しやすい雰囲気
トレーナーが解説したことを受け身で実施するよりも、気になることがあればトレーニーから質問して、相互にコミュニケーションを取ってこそOJTの真価を発揮します。
トレーナーは、トレーニーが気軽に質問しやすい雰囲気を作ってあげることも重要です。
ノウハウの蓄積
OJTは、もちろん参考にできる事例を研究することも有効なのですが、各社・職種ごとに状況は違うものです。
そのため、自社で実施したOJTのノウハウを蓄積して、PDCAを回すことが大切になってきます。
同様のトレーニングを実施する際に非常に役立つ、自社独自の資産となるでしょう。
まとめ
OJTの概要から実施プロセス、成功のポイントまでを解説しました。
OJTでなかなか成果に結びつかない原因は、メンバー任せだったり、環境が整っていなかったり、ノウハウが無かったりと、形だけOJTの形態をとっている場合がほとんどです。
緻密な目標設定と計画のもと改善を施しながら実施すれば、OJTは軍隊でも有用性が認められているれっきとしたトレーニングです。
この機会にOJTについての認識と理解を深め、新人教育に役立ててみましょう。
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