研修で活用できる助成金の種類を解説【初心者人事向け】
企業の人材育成や研修を考えている人事の方は多いはず。各都道府県で受け取れる助成金の種類についてまとめています。それぞれ条件や金額も違うので、これから研修を考えているIT企業の人事担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
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メンバーの少ない企業では「人材育成を行いたい」と思っても、なかなか予算が取れない、研修場所の確保や参加人数の確保が難しいなどの課題に頭を悩ませる人事担当者も少なくないでしょう。
こういった人材育成に関する困りごとを、行政が補助してくれる助成金制度があります。
厚生労働省「人材開発支援助成金のご案内」を参考に解説していきます。
なお本記事は、TechAcademyの法人向けIT研修での実績をもとに紹介しています。
目次
[お知らせ]TechAcademyでは、人事、研修担当者向けの助成金セミナーをオンラインで定期的に開催をしています。
行政が補助してくれる助成金制度とは
「人材開発助成金」という厚生労働省の制度です。
この制度には、「特定訓練コース」「一般訓練コース」「教育訓練休暇付加コース」の3つのコースがあります。
助成の条件
3つのコースに共通する助成の条件としては、「職業能力開発推進者」を社内に設置し、「事業内職業能力開発計画」を立案することが必要になります。
要は、推進者を設置し、計画作成を行いましょうということです。
職業能力開発推進者
「職業能力開発推進者」は「事業内職業能力開発計画」の作成・実施を行ったり、対象の労働者の相談に乗る担当者を指します。
「職業能力開発推進者」は人事部門や教育研修部門の部長、課長などの、教育の企画や実施に関する権限がある人を選任しましょう。
また、100名以上が所属する多数の事業所がある企業の場合は、事業所事に1人以上の推進者を選任してください。
事業内職業能力開発計画
「事業内職業能力開発計画」とは、自社の人材育成の基本方針等を記載する計画です。
訓練計画および制度導入・適用計画届の提出より先に作成しておく必要があるので注意しましょう。
内容としては、以下のような項目を取り入れて作成しましょう。
- 経営理念・経営方針に基づく人材育成の基本方針・目標
- 昇進昇格、人事考課等に関する事項
- 職務に必要な職業能力等に関する事項
- 教育訓練体系
なお、この計画は労働組合、または労働者代表の意見を聞いて作成する必要があります。
詳細は、マニュアルP.12~13に記載があります。
特定訓練コースとは
特定訓練コースとは、以下の7つのコースのことです。
- 労働生産性向上訓練
- 若年人材育成訓練
- 熟練技能育成・承継訓練
- グローバル人材育成訓練
- 特定分野認定実習併用職業訓練
- 認定実習併用職業訓練
- 中高年齢者雇用型訓練
※5と6は事前に厚労大臣の認定を受ける必要がある
対象企業
対象となる企業は、
- 中小企業 (主に300名以下の従業員数の企業)
- 中小企業以外
- 事業主団体等
の3つです。
ただし、業種によって「中小企業」の定義が異なりますので、マニュアルP.10を読み自社が「中小企業」に当てはまるかどうか調べてみましょう。
内容
1. 労働生産性向上訓練 *OffJTのみ
職業能力開発促進センターなどで行われる高度職業訓練や、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練などを指します。
訓練時間が10時間以上である必要があります。
2. 若年人材育成訓練 *OffJTのみ
雇用契約締結後5年以内で35歳未満の若年労働者に対する訓練を実施した場合に助成が受けられる訓練メニューです。
訓練時間が10時間以上である必要があります。
内容としては、期間人材として必要な知識・技能を順次習得させるような内容である必要があります。
3. 熟練技能育成・承継訓練 *OffJTのみ
熟練技能者の指導力向上や技能継承を目的とした訓練のことを指します。
訓練時間が10時間以上である必要があります。熟練技能者とは、特級技能検定、1級技能検定、または、単一等級技能検定合格者や、職業訓練指導員を指します。
4. グローバル人材育成訓練 *OffJTのみ
海外事業拠点での事業展開や、海外での販路開拓、輸出関連業務など、海外に関連する業務を行う従業員に対して訓練を実施した場合に助成が受けられます。
訓練時間が10時間以上である必要があります。海外の大学などで行う訓練の場合は、30時間以上である必要があります。
内容としては、語学力兎向上のための講座や、国際法務、国際契約、海外マーケティング、地域事情に関する講座などを指します。
5. 特定分野認定実習併用職業訓練 *OJTも含む
建設業、製造業、情報通信業に関する厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練を実施した場合に助成が受けられる訓練メニューを指します。
15歳以上45歳未満の労働者で、新たに入社した方などが対象になります。内容については、OffJTとOJTを効果的に組み合わせた者で、実施期間が6ヶ月以上2年以下、総訓練時間が850時間以下、OJTの割合が2割以上8割未満であること、ジョブ・カード交付が必要であることなどの細かな条件があります。
実践例としては、セキュリティやネットワークに関する体系的、実践的な内容の研修とOJTなどが挙げられます。
6. 認定実習併用職業訓練 *OJTも含む
OJT付き訓練で厚生労働大臣の認定を受けた「実習併用職業訓練」を実施する場合に助成が受けられるというものです。条件は5と同じです。
7. 中高年齢者雇用型訓練 *OJTも含む
45歳以上の方で、新たに入社した方に適用できる訓練メニューです。
企業内におけるOJTとOffJTを効果的に組み合わせて実施する訓練であることが必要です。
実施期間は3ヶ月~6ヶ月、総訓練時間が6ヶ月あたり425時間以下であること、OJTの割合が1割以上9割以下であること、ジョブ・カード作成が必要であることなどの条件があります。
※5と6は事前に厚労大臣の認定を受ける必要がある
実施の注意点
ただ、教育訓練の対象にならないものもあります。
- 運転免許の取得のための講習などの間接的に必要になる知識・技能習得
- 接遇、マナーなどの社会人基礎スキルを学ぶもの
- 趣味、教養を身につけることを目的とするもの
- ビデオ鑑賞や通信制などで一方的な講義を受けるタイプのもの
は、特定訓練コースの対象になりませんので、注意しましょう。
金額
受けられる助成金は、以下の3種類です。
- 賃金助成(OffJTで教育訓練を受けている従業員の賃金の一部を補助)
- 経費助成(教育訓練にかかった費用を一部補助)
- 実施助成(OJTで教育訓練を受けている従業員の賃金の一部を補助)
支給金額は以下の通りです。
≪OffJTの場合≫
賃金助成(1人1時間あたり) 760円(中小企業以外は380円)
※生産性用件を満たす場合 960円(中小企業以外は480円)
経費助成 45%(中小企業以外は30%)
※生産性用件を満たす場合 60%(中小企業以外は45%)
≪OJTの場合≫
実施助成(1人1時間あたり) 665円(380円)
※生産性用件を満たす場合 840円(中小企業以外は480円)
支給限度額
また、支給限度額がありますので、支給限度額の範囲内で計画するよう注意しましょう。
≪賃金助成の支給限度額≫
- Off-JT:1人1訓練あたり1200時間まで
※認定職業訓練、専門実践教育訓練は1600時間が限度
- OJT:1人1訓練あたり680時間まで
※中高年齢者雇用型訓練については382.5時間
≪経費助成の支給限度額≫
中小企業、事業主団体等:
- 教育訓練時間が20時間以上100時間未満の場合:15万円 ※特定訓練コース及び育休中等の者に対する訓練については、10時間以上100時間未満
- 教育訓練時間が100時間以上200時間未満の場合:30万円
- 教育訓練時間が200時間以上の場合:50万円
中小企業以外:
- 教育訓練時間が20時間以上100時間未満 10万円 ※特定訓練コース及び育休中等の者に対する訓練については、10時間以上100時間未満
- 教育訓練時間が100時間以上200時間未満 20万円
- 教育訓練時間が200時間以上 30万円
一般訓練コースとは
「特定訓練コース」以外の一般的な訓練で研修などのOffJTにより実施される訓練のことを言います。
対象
対象となるのは、
- 中小企業 (主に300名以下の従業員数の企業)
- 事業主団体等
となります。
中小企業以外の企業は対象とならないので注意しましょう。
助成の条件
実施時間が20時間以上であることと、セルフ・キャリアドックを対象時期を明記して規定することが条件です。
※セルフ・キャリアドック制度とは、会社が費用負担をして定期的にキャリアコンサルティング受けられる制度を指します。
※ジョブ・カードを活用することが推奨されています。
内容
内容は、「特定訓練コース」以外の研修となります。
コミュニケーション研修などの社会人の一般的能力を底上げするための研修などを行いたい場合はこちらのコースを活用しましょう。
金額
助成される金額は以下の通りです。
一般訓練コースにはOJTの助成はなく、OffJTのみが対象となります。
Off-JT
- 賃金助成(1人1時間あたり) 380円(中小企業以外はなし) ※生産性用件を満たす場合 480円(中小企業以外はなし)
- 経費助成 45%(中小企業以外はなし) ※生産性用件を満たす場合 60%(中小企業以外はなし)
支給限度額
支給限度額は以下の通りです。
≪賃金助成の支給限度額≫
- Off-JT:1人1訓練あたり1200時間まで ※認定職業訓練、専門実践教育訓練は1600時間が限度
- OJT:1人1訓練あたり680時間まで ※中高年齢者雇用型訓練については382.5時間
≪経費助成の支給限度額≫
(中小企業、事業主団体等)
- 教育訓練時間が20時間以上100時間未満:7万円 ※特定訓練コース及び育休中等の者に対する訓練については、10時間以上100時間未満
- 教育訓練時間が100時間以上200時間未満:15万円
- 教育訓練時間が200時間以上:20万円
教育訓練休暇付与コースとは
事業主以外が行う教育訓練等を受けるために必要な有給の休暇(法定の年次有給休暇は含まない)を全労働者に与え、自発的に能力開発を行う機会を確保するための制度です。
助成の条件
条件としては以下の5つの項目が当てはまります。
- 3年間に5日以上の取得が可能な有給教育訓練休暇制度を就業規則や労働協約に規定すること
- 規定を全労働者に周知し、就業規則については労基署に届け出る
- 制度開始から1年ごとの期間内に1人以上に当該休暇を付与すること
- 業務命令ではなく自発的に教育訓練を受講する必要があること
- 事業主が行う研修は対象に含まないこと
金額
助成される金額は定額の30万円です。
生産性用件を満たす場合は36万円です。
支給限度額
また、支給限度については、上記の30万円を1度しか受けられないという条件があります。
何度も申請しようとしてもできませんので注意しましょう。
助成金申請の流れ
一般コース、特定コースの申請書
一般コース、特定コースの申請には以下の書類が必要です。
- 支給要件確認申立書
- 支払方法・受取人住所届け
- 人材開発支援助成金、事業主支給申請書
- 賃金助成、OJT実施助成の内訳
- 経費助成の内訳
- OffーJT実施状況報告書
また、以下の資料を添付しましょう。
- 申請事業主が訓練に掛かる経費を全て負担していることの証明書
- 訓練期間の賃金を支払っていることの証明書
- 訓練実施期間中の所定労働日および所定労働時間の確認書類(就業規則や賃金規定、シフト表など)
- 訓練実施期間の出勤状況を確認するための書類(出勤簿等)
- 訓練実施届け提出時の雇用契約書
- 講師に支払った謝金や交通費等の領収書
- 教材費等の領収書
- 事業場外の機関を使った場合は、その入学料、受講料、教科書代などの領収書等
このほかにもコースによって必要書類が異なりますので注意しましょう。
教育訓練休暇付与コースの申請書
教育訓練休暇付与コースの申請書は以下の通りです。
- 人材育成開発助成金、制度導入・適用計画届け
- 中小企業事業主であることが確認できる書類
- 主たる事業所と従たる事業所を確認できる書類(登記証明書の写しなど)
- 事業所確認表
- 就業規則または労働協約
- 企業全体の雇用する被保険者が100名未満であることが確認できる書類
- 人材開発支援助成金 事前確認書
申請
助成金申請の申請先は、事業所の所在地を管轄する労働局です。
また、申請のタイミングは以下の通りになります。
タイミングを逃してしまうと、助成金をもらえなくなってしまうので、十分に注意しましょう。
訓練実施計画書
訓練開始日から起算して1ヶ月前までに申請書を提出しましょう。
制度導入・適用計画届
制度導入・適用の計画期間の初日から起算して6ヶ月前から1ヶ月前までの間に提出しましょう。
(添付書類は計画届け提出後1ヶ月以内に後から出してもよいとされています)
※上記二つの書類に関しては、変更が生じた場合にはどちらも申請が必要となります。
特定訓練コースおよび一般訓練コースの支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請書を提出しましょう。
生産性要件を満たした場合については、訓練開始日が属する会計年度の前年度から起算して5ヶ月以内に割り増し助成分のみ別途申請する形となります。
教育訓練休暇付与コースの支給申請
制度導入・適用計画期間の末日(制度導入日から3年)の翌日から2ヶ月以内に提出しましょう。
以上が人材育成助成金の概要と申請方法です。
助成金を活用し、自社に必要な人材を育てていきましょう。
TechAcademyでは、人事、研修担当者向けの助成金セミナーをオンラインで定期的に開催をしています。