エンジニアがマネジメントをするメリット・ポイントは?学習方法も解説
エンジニアリングにおけるマネージャーは、経営陣と現場をつなぎ、プロジェクトを円滑に進める役割を果たします。エンジニアリングにおけるマネジメント・マネージャーの重要性や育成方法を知ることで、開発プロジェクトのさまざまな課題を解決可能です。
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エンジニアリングにおけるマネージャーは、経営陣と現場をつなぎ、プロジェクトを円滑に進める役割を果たします。プロジェクトの進捗やメンバーの指揮・育成に課題を抱えており、現役エンジニアによるマネジメントに理解を深めたい方もいるのではないでしょうか。
エンジニアリングにおけるマネジメント・マネージャーの重要性や育成方法を知ることで、開発プロジェクトのさまざまな課題を解決できます。エンジニア研修による効率的なマネージャー育成にも目を向け、経営戦略や人材戦略を成功に導きましょう。この記事では、エンジニアがマネジメントを行うメリットや業務内容、マネージャーの育成方法についてご紹介します。
目次
- エンジニアのマネジメントの必要性
- エンジニアがマネジメント業務を行うメリット
- エンジニアのマネジメント業務とポイント
- エンジニアのマネジメント業務に求められる能力
- エンジニアがマネジメントのスキルを磨くための学習方法
- まとめ
エンジニアのマネジメントの必要性
エンジニアリングにおけるマネジメントは、プロジェクトを円滑に進めるために必須の活動です。現役エンジニアによるマネージャーを置かない企業でも、何らかの形でマネジメントを行います。エンジニアリングにおけるマネジメントとは何かを明確に理解することで、プロジェクトやチームの管理をより効率化できるでしょう。
マネジメントとは何か
経営学におけるマネジメント(Management)とは、「経営」や「管理」を意味する言葉です。ヒト・モノ・カネといった経営資源やリスクなど管理し、経営上のゴールに向かって、全体として成果を向上させるためのさまざまな管理活動を指します。主な活動は計画・指揮・調整・分析・評価です。
例えばチームマネジメントであれば、メンバーの選出・確保や指揮、観察・ヒアリングと課題解決や評価などを総合的に実施します。
エンジニアのマネージャーが持つ役割
エンジニアのマネージャーは、一般的な「管理職」と同じ存在ではありません。サービス・プロジェクト・チームなどの各階層で管理活動を行い、管理対象や活動内容はプロジェクトやポジションによって異なります。
例えば、経験豊富なエンジニアが「チームリーダー」として開発チームの取りまとめ役となり、比較的規模の大きいプロジェクトは旗振り役として「プロジェクトマネージャー」を置く場合があります。主な管理活動は以下の通りです。
- プロジェクトの目標の設定
- チームのメンバー選出・編成・指揮・支援や自律的な成長の促進
- プロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)のコントロール
- 計画と実績の分析・評価・改善
- ステークホルダーとの関係構築・連携・交渉
エンジニアがマネジメント業務を行うメリット
エンジニアがマネジメント業務を行うと、さまざま点に好影響が及びます。例えば、開発効率の向上やチーム全体のスキルアップ、人件費の削減などです。意思決定プロセスの改善にもつながるため、エンジニアがマネジメント業務を行うことにはメリットが多数あります。
開発パフォーマンスの向上になる
開発パフォーマンスを向上できるのはエンジニアがマネジメント業務を行うメリットのひとつです。現役エンジニアがマネージャーになれば、課題の発見・解決や技術支援がしやすくなり、業務の管理がスムーズになります。現場の業務を効率良く回せるようになることで、開発パフォーマンスの向上が可能です。
現場にエンジニア視点で考えられるマネージャーがいない場合、チーム内の連携が取りづらくなることもあるでしょう。エンジニアが業務に集中できずに、結果として開発のパフォーマンスが低くなるリスクがあります。
スキルアップにつながる
エンジニアがマネジメント業務を行うことは、マネージャー自身やメンバーのスキルアップにつながります。マネージャーには技術的なスキル以外に、チームやリスクなどをマネジメントするスキルも必要です。
プロジェクト全体を俯瞰して考えるようになり、また深掘りすることになるでしょう。チームのパフォーマンス向上も考えるようになり、ノウハウ共有が促進されるなど、メンバー全員のスキルアップにも貢献します。
人件費の削減になる
エンジニアがエンジニアリングとマネジメントを兼務することで、マネージャーを他に採用する必要がなくなり、人件費の削減になることもメリットです。係長や課長などの一般的な管理職は、開発プロジェクトに直接関与しない場合もよくあります。現役エンジニアがプレイングマネージャーとして現場を統括することで、管理に必要な人員数を最小限に抑えることが可能です。
またタスクの適切な割り振りや「つまずき」の迅速な解決などにより、チームメンバーのパフォーマンスが向上し、ムダな長時間労働が減る効果も期待できます。
意思決定プロセスを改善できる
エンジニアがマネジメント業務を行うことで、意思決定プロセスの改善も望めます。マネージャーには経営陣と現場をつなぐパイプ役という役割もあります。現役エンジニアのマネージャーなら、エンジニア目線でメンバーの適正評価や意見の吸い上げができ、経営陣への報告やマネジメントにダイレクトに反映することが可能です。
また経営陣からの要求をリーダーが咀嚼してメンバーに分かりやすく伝えることで、指揮系統も改善できます。戦略を立てる側と現場の連携が取りやすくなり、意思決定のスピードが早くなるのもポイントです。
エンジニアのマネジメント業務とポイント
エンジニアリングにおけるマネジメント業務は多岐にわたります。主なものは、プロジェクト管理や人員・タスクの割り振り、プロジェクトメンバーのサポート・フォローです。ここでは、エンジニアリングにおけるマネジメント業務の種類とポイントを見ていきましょう。
プロジェクト管理
プロジェクト全体やチーム単位・メンバー単位のスケジュール管理・進捗管理は、重要なマネジメント業務です。プロジェクトが円滑に進むよう、人員・日程の調整や課題の早期発見と解決に努めます。
プロジェクト管理においては、プロジェクトやチーム全体を俯瞰し、負担・連携・開発体制・プロセスなどを客観的に分析・評価することがポイントです。各メンバーの意見や要望の吸い上げも重要ですが、戦略的な視点から現場を統括し、現場に振り回されないことも求められます。
担当業務の割り当て
チーム単位やメンバー単位に適切な業務を割り当てることも、重要なマネジメント業務です。システムの特性や運用すべき技術を理解した上で、各メンバーの「できること・できないこと」「強み・弱み」「開発スピード」「ミスの少なさ」などを把握し、適材適所にアサインすることが必要です。
任せられるタスクの難易度を分析する他、各メンバーのポテンシャルやキャリアプランを把握することも求められます。例えばリーダー候補者や上級エンジニアの資格取得を目指すメンバーについて、挑戦させるべき業務をピックアップし、将来を見据えた育成という意味での人員配置を検討することも大切です。
サポート・フォロー
メンバーが実力を発揮できなければ開発プロジェクトは円滑に進みません。現役エンジニアならではの強みを生かし、ダイレクトにきめ細やかなフォローが必要です。例えば「視点を変えれば簡単に解決できる悩みに時間を取られている」「間違った方向でコーディングしている」といった問題を早期発見し、ノウハウを伝授します。
観察や積極的なコミュニケーションを通じて悩みやつまずきに気付き、助け合いの文化を醸成することが大切です。メンバーのサポートやフォローは、モチベーション維持や成長を阻害している要因を取り除くという意味でも、重要なマネジメント業務といえます。
エンジニアのマネジメント業務に求められる能力
エンジニアリングにおけるマネジメント業務には、コミュニケーションスキルの他に総合的なマネジメントスキル、品質管理や課題解決などのスキルが求められます。またどのようなマネジメントにも、プロジェクトの性質に応じたテクニカルスキルは必須です。
コミュニケーションスキル
エンジニアのマネジメント業務には、一般的なエンジニア以上のコミュニケーションスキルが必要です。マネージャーは経営陣・クライアント・チームメンバー・関連部署など、さまざまなステークホルダーとやり取りをします。プロジェクトを円滑に進めるために、ヒアリングや伝達、折衝ができるコミュニケーションスキルは必須です。
またマネージャーはプロジェクトやチームを主導する立場でもあるため、メンバーをまとめ指揮をするリーダーシップも求められます。
マネジメントスキル
エンジニアリングにおけるマネージャーの主な役割は、ヒト・モノ・カネといった経営資源を有効活用し、プロジェクトを円滑に進行させることです。プロジェクト全体を俯瞰し、人員やスケジュールを計画・調整するなどの、根本的なマネジメントスキルが求められます。
メンバーの成長・活躍やモチベーション維持を支援し、適切なソフトウェア・ハードウェアの導入により開発環境を改善することも、マネージャーの役割です。「プロジェクト達成に必要な条件を整える」ための、総合的なマネジメントスキルが必須といえます。
品質管理のスキル
エンジニアのマネジメント業務には、品質管理のスキルも必須です。開発したシステムの品質がクライアントの要求を満たさない場合、納期直前で深刻な手戻りが生じる場合もあります。こうなると予算やスケジュールの計画修正が必要になるでしょう。品質管理ができていないことは、いわゆる「デスマーチ」を招く要因のひとつです。
クライアントの要求を理解した上で、レビューやテストで品質を精査し、要求基準を満たしていなければ速やかに修正計画を立案・実行するスキルが必要です。
課題解決のスキル
入念に計画をしても、開発プロジェクトの進行中にはさまざまな問題が発生し、計画修正が必要になることもあります。クライアントから機能追加の要求を受けることもあるでしょう。こういった問題・課題を現場の判断に任せるのではなく、解決を指揮するのもマネージャーの役割です。
プロジェクト進行中は各メンバーが想定通りにタスクをこなしているか」などを随時チェックし、問題・課題を早期発見すると共に、適切な解決策を提案・実施することが求められます。
テクニカルスキル
システムの構造や開発の流れを深く理解し、「各機能をどのように実装すべきか」「どのように連結してシステム全体が成り立つか」などを理解する必要があります。テクニカルスキルがなければ適切なマネジメントはできません。
テクニカルスキルは、プロジェクトの計画・推進はもちろん、各メンバーの指揮・フォローや適正評価にも求められます。深い知識がなければ理解しにくい部分を精査し、メンバーが対応しにくければ自ら実装することも、プレイングマネージャーに必要な資質のひとつです。
エンジニアがマネジメントのスキルを磨くための学習方法
エンジニアがマネジメントスキルを磨くための最も一般的な方法は、マネジメント関連の書籍から学ぶことです。「どのようなマネージャーになるべきか」という目標設定をして、実践的なマネジメント経験を積むことも役立ちます。ただしマネジメントの独学や社内教育は難しいため、研修を活用することがおすすめです。
書籍を読むなど独学で勉強する
書籍からマネジメントについて学ぶことは、基本的な学習方法です。例えば「マネジメントの父」と称されるピーター・ドラッカーの著書など、経営学者・経済学者によるマネジメントの解説は大いに役立ちます。
関連領域として、リーダー論や組織論についての書籍も参考になるでしょう。また独学でマネジメント関連の資格取得を目指すことも効果的です。
目標設定をする
目標設定を行い、自身の成長を促すことも効果的です。マネジメントスキルは一朝一夕で身に付くものではありません。
例えば、尊敬できるマネージャーをロールモデルとし、「どのようなマネージャーになるべきか」という目標を段階的に設定します。目標に向けて書籍で学んだ内容を実践し、それによって何が変わったかを分析・評価して、改善しつつ次のステージの目標に進む流れです。長期的な計画で道筋を立ててスキル習得に取り組むことで、成功体験を積み重ね、持続的に成長しやすくなります。
PLやPM経験を積む
実践的なスキルアップ方法として、PL(プロジェクトリーダー)やPM(プロジェクトマネージャー)として経験を積むことも考えられます。ただし、PLやPMには、前提となるマネジメントスキルがなければ抜擢されにくいでしょう。
PLやPMというポジションを置いていない企業でも、実質的にPLやPMのようなマネジメントスキルが求められるプロジェクトもあります。もし抜擢されることがあれば、市場価値向上にもつながる大きな経験が積めるでしょう。
研修を受ける
マネージャーは広範な知識・スキルを学ぶ必要があるため、研修会社を活用してまとまった教育を受けるのも効果的です。エンジニアリングにおけるマネジメントは、社内教育が比較的難しい分野といえます。
研修会社によっては、WebやDXなど領域ごとに特化したマネジメント研修も提供しています。アサインするプロジェクトの領域がすでに絞り込めているなら、テクニカルスキルもまとめて学べる、特化型のマネジメント研修を利用するのも効果的です。
まとめ
エンジニアリングにおけるマネージャーは、経営陣と現場をつなぎ、プロジェクトを円滑に進める役割を果たします。現役エンジニアがプレイングマネージャーを務めることで、エンジニアの目線のきめ細やかなマネジメントができ、また人件費の圧縮にもつながるでしょう。
とはいえマネジメント領域は独学や社内教育が難しいため、IT研修会社のマネジメント研修を利用するのがおすすめです。現役エンジニアによるメンター制度や到達度評価システムの整った研修会社なら、安心してマネージャー候補者の育成を任せられます。