オンラインブートキャンプのWebアプリケーションコースを受講された荒木淳吾さんにお話を伺いました。株式会社クリンタルでWebエンジニアとして勤務されている荒木さん。オンラインブートキャンプを受講しての今後の展望や、Webサービスの制作秘話をお聞きしました。
プロフィール:荒木 淳吾
1977年生まれ。東京都在住。株式会社クリンタルでWebエンジニアとしてWebアプリ開発に従事。Webアプリケーションコース(Ruby on Rails)を8週間受講し、「予約ノート」というWebサービスを開発。DemoDayで2位を受賞。
「あったらいいな」を自ら実現
――簡単に自己紹介をお願いできますか?
荒木淳吾と申します。
約10年間勤めた会社を3月に退職し、今は株式会社クリンタルという名医検索の会社で、Webエンジニアとして働いています。
また、並行して、DemoDayで発表したサービスも含めた、これまで欲しいと思っていたサービスを実現するための開発も進めています。
――現在のお仕事についたきっかけはなんでしたか?
アイデアの実現に本気で取り組んでみようと思ったのがきっかけです。
今回DemoDayで発表したサービスは、「こういうのがあったらいいな」と長年考えていたWebサービスです。でも、待つだけでは誰も作ってくれないので、ならば自分で作るのが早いと思い作り始めました。
また、プログラミングを仕事にすれば、いち早く技術が身につくと思ったので、Webエンジニアとして働くことを選択しました。
もちろん、前職を続けながら勉強する選択肢もあったと思います。しかし、自分は追い詰められた方がやる気が湧くタイプなので、前職に一度区切りをつけて、今の道を選択しました。
――TechAcademyを受講する前に、プログラミングに触れたことはありましたか?
あまりありません。10年間、これまでは生命科学に関する研究開発に従事していたので、どちらかといえばコンピューターとは関連が薄い世界にいたと思います。
ただ、大学の時に、Rubyに関しては少しだけ学んだことがあったのでプログラミング自体には抵抗はありませんでした。
――Ruby on Railsを学ぼうと思ったのはいつ頃、どのようなきっかけでしたか?
5年ほど前です。
自分がほしいWebサービスを作る手法を調べたら、PHPとRuby on Railsが候補にあがりました。どちらも優劣つけがたかったのですが、学生の頃Rubyをかじっていたこともあって、Railsを勉強しようと思いました。
発表する場があることでモチベーションになった
――受講理由は何でしたか?
恥ずかしながら、独学ではRailsを全く習得できなかったからです。
5年前にRailsを勉強しようと決めた時に、当然ながらRails関連の書籍も複数購入し、Webのオンラインテキストにも何度もトライしました。しかし、実行環境の構築で頓挫したり、一つ問題を乗り越えてもすぐに新たな問題にぶつかったりしていたので、モチベーションを維持し続けられず、全然身につきませんでした。
今回改めて、Railsに挑戦するにあたって、これまで挫折した経験を鑑みて、オンラインのプログラミングスクールを受講してみようと考えました。
――TechAcademyでの受講を決めた理由を教えてください。
今回発表したDemoDayの存在が一番大きいです。
ただ、漫然とRailsを勉強するのではなく、カリキュラムの中にオリジナルサービスを作ることが組み込まれ、それをコンテスト形式で複数のCTOの前で発表するチャンスがあるのは大きな魅力でした。
これは学ぶモチベーションの維持向上につながる、と思ったのが理由です。
――メンター制度はどのように活用されていましたか?
定期的にメンタリングがあったので、メンタリング日の前日を目標に課題を仕上げるようにスケジュールを組んで取り組みました。そうすると、課題でわからないことがあったとしても、翌日にはアドバイスを受けられるので、スムーズに学習を続ける事ができました。
またオリジナルサービスを作る段階では、現場の経験のあるメンターさんのアドバイスは力強かったです。
メンターさんに、こういうものが作りたいと相談すると、私自身の技術レベルを見ながら、ここはちょっと難しいのでこういう手段がいいと思う、など判断をしてくれるのでとても助かりました。
実際、オリジナルサービスを作っていた時は、技術的な理由で2、3回方向転換が発生しました。しかし、残りの学習期間を考慮して、その都度相談しながら着地点どこまで作るかを決めていけたので、ある程度短期間でオリジナルサービスを形にできたのかなと思っています。
生命科学の研究の輪を広げるサービスを
――DemoDayで2位を受賞されたサービスに関して、どのようなサービスか教えてください。
「予約ノート」という、日本国内にある生命科学に関する実験装置の検索と予約を実現し、実験装置を通して研究者同士をつなげることを目指すサービスです。
今回のDemoDayでは、生命科学の研究の間口を広げるため、生命科学に関するアイデアを持っているけれど設備がなくて困っている人を対象に、実験装置を一括で探せるサービスを発表しました。
――どうしてこのサービスを作ろうと思ったんですか?
再生医療研究など、生命科学研究をもっと盛り上げたいからです。色んな分野の方に生命科学の研究に関わって欲しいと思っています。
生命科学に新しく関わる人のネックの一つは、高価な実験装置設備を揃えるのが難しいことだと考えています。一方、よく調べると高価な装置も大学や公的な研究機関に問い合わせると有償で借りられることもあります。しかし、どこの施設が目的の装置を保有しているかがわかりづらく、さらに見つけたとしてもお問い合わせフォームがホームページから見つけづらいなど、新規参入者にはハードルが高いのが現状です。
装置の提供状況を少しでも整理して公開し、新規参入者の実験装置準備のハードルを下げて、生命科学に色んなアイデアが入ってきて盛り上がることを期待しています。
――どれくらいの期間で作られましたか?
4、5週間ぐらいかかりました。
――アイデアはどこから湧いてきたんですか?
前職で研究開発を行っていた時に、社内の実験装置を探せるサービスがあればいいなと思っていたので、それを形にしようと思ったのがきっかけです。
また、「将来は日本国内の研究者が簡単に実験装置をシェアできるものが作る」ということを現在お世話になっている勤め先のCTOに語ったところ、「将来と言わず今作ればいいじゃない。そちらのサービスの方が面白い。」と力強いアドバイスをもらいました。
それから2週間で、個人が持っている装置を登録して、検索できるような機能を追加して今回の提案にいたりました。
――サービスを作る上で工夫した点は何ですか?
施設で公開されている実験装置を検索できるだけではなく、自分の実験装置も登録できることで、研究者同士のマッチングが生まれるようにした点です。
異分野の研究者同士でも、実験装置という共通の土台があれば交流しやすいので、そこを意識して機能を追加しました。
――今後のサービスの展開についてどのようにお考えですか?
このサービスを永続的に回すために、ビジネスとして成り立たせたいと考えています。そのためには、お金が回るような仕組みを取り入れる必要がありますね。例えば、自社で販売している実験装置をもっと知ってほしいというメーカーの方に参加してもらい広告収入を得るなどを考えています。
ただ、まずはサービスを公開して多くのユーザーに喜んでもらえることが重要。その後、起業するという選択肢を考えたいと思います。
――リリース予定はいつ頃ですか?
並行して開発を進めているサービスも含めて、いずれかを年内にリリースしたいと思っています。目標期限を決めて頑張るようにしてます。
多分野も見ることで世界が広がった
――受講後に、何か他のサービスを開発していますか?
生命科学研究をもっと盛り上げるため、生命科学に関するQ&A、勉強会等のイベント情報がまとまっているサービスも思案中です。
異分野の方が参入するときに困るのが、情報と実験装置設備の2つだと思うので、この情報についてもケアすることが目的です。「実験の疑問を解決して情報を共有する」、「勉強会やセミナー日程の告知を通して最新の研究情報に触れる機会を提供する」サービスにする予定です。
――アイデア自体はどのように見つけられているんですか?
課題意識を常に持って、分野問わず解決方法を探すことでアイデアが浮かぶように思います。例えば、今回受講を通して知ったQiitaみたいなサービスが生命科学分野であったら、研究者間の情報の格差を解決できるのでは?と思いました。こんな感じで、新たなアイデアが生まれると思います。
またIT業界のオープンな情報共有環境に触れたことはとても刺激になりました。自分の知っている分野だけではなく、他の分野も見ることが、自分の世界を広げるのに役立っています。
――これからTechAcademyの受講を考えている方々に向けてメッセージをお願いします。
これから受講する方は、ぜひオリジナルサービスを作ることを目標にして頑張ってほしいなと思います。
カリキュラム通りにやるのと実際に自分で同じようになぞってみるというのは全然違います。私も、オリジナルサービスを作る課題を通してようやく知識が定着したと実感しています。
本当にRailsを身につけたいのであれば、なんとかしてオリジナルサービスを作るまで課題を進めてください。頑張るだけの価値は必ずあります。
そして、DemoDayに参加して、サービスを発表しましょう。客観的な意見をもらえて自分の技術レベルがわかるので、とても意義があると思います。
(インタビュアー:村田美寿穂)