TechAcademyのiPhoneアプリコースを受講された酒井さんのインタビュー。仕事をしながらどう勉強時間を確保していたのか、オリジナルアプリの開発はどう進めていたのかなどこれから学習する人に役立つ内容を話していただきました。

プロフィール:酒井健(サケイ ケン)
東京都在住。広告代理店に勤務をしながらオンラインブートキャンプを受講し、自分で描いたイラストが動画再生されるお絵描きアプリを開発。

広告会社の情報システム部門で関係者同士の架け橋となる業務を担当

――最初に、自己紹介をお願いします。

酒井 健(サケイ ケン)といいます。広告会社で働いています。ここ2年ぐらいは情報システム部門にいるんですけれど、自分でコードを書くことは全くなくエンジニアと現場の橋渡しを仕事にしています。今の部門に行く前は企画などの業務をしていました。転職経験はなく、ずっと同じ会社に在籍しています。

――もともと広告の仕事を希望されていたんですか。

学生のときに面白そうだなと思ってマーケティングのゼミに入り、初めて広告会社というものが世の中にあることを知りました。実際に広告会社に入社したいと思ったのは就職活動の直前でした。

――今回TechAcademyを受講するにあたって、過去にプログラミングを学習された経験などはありましたか。

ないです。今回が初めてになります。

自分で作れる条件から出たアイデアを形に

――今回受講を決定したきっかけは何だったんですか。

漠然とiPhoneのアプリを作ってみたいとは思っていたのですが、それをもう少し現実的にするために、まずは自分で制約事項を決めました。具体的にはサーバーとやり取りをしないスタンドアロンのアプリを作る、ゲームはリアルタイム性が求められたり色々とシビアなので作らない、という制約を決めて「初心者の自分でも作れそうなアイデア」を固めました。その後1ヶ月くらいは独学で開発していたのですが、あまりに効率が悪いので、詳しい人に頼ったほうが絶対効率的だなと思い受講することを決めました。

――独学での学習のときは、本などを利用していたんですか。

本とWebで調べてサンプルコードを参考にしながら自分のコードを書いていました。

――今回のアイデアはどういう時に思いついたんですか。

ふと思いつきました。
面白そうだし、技術的に自分でも作れそうだなと思いました。

――今回TechAcademyで受講しながらの開発でしたが、独学の頃との違いなどはありましたか。

圧倒的に楽でしたね。分からない部分はその都度調べて聞いて、ひとつひとつ解決できました。アプリで使っている機能を見るとそれぞれどれも僕にとっても面倒なものだったんですが、どれもすでに世の中に機能として普通に存在しているものなので、必ずどこかに情報は存在していて、それを見つけることで実現できるはず、と思ってやり切りました。

――勉強時間はどのようなスケジュール管理をされていましたか。

平日は3〜4時間、土日はそれぞれ8時間ほど使っていました。受講前は、映画を見に行ったり、本を読んだりというプライベートに使っていましたが、今回はその時間を削って進めました。

手描きの絵をその過程ごと再生して送れるアプリ「kist!」

――今回作成したオリジナルアプリの紹介をお願いします。

kist!」というタイトルのアプリで、LINEのスタンプみたいなものを誰でも手軽に作れるような仕掛けがあるといいなと思ったのが最初のきっかけです。

――アプリの概要について簡単に説明をお願いできますか。

正方形のキャンバスに指で簡単に文字やイラストが描けます。その時、指の軌跡に沿って音が出るようになっています。描き終わった後にボタンをタップすると、その描いているプロセスが音も含めて再生されるアプリです。
その動画にメッセージを添えて独自形式のファイルで書き出せるようになっています。書き出したファイルをメールなどに添付して送ることができ、送られた相手はこのアプリを使って、受け取ったファイルを再生することができます。独自形式のファイルとは別に、動画ファイルも書き出すことができます。

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――それまでLINEスタンプはご自身でも作られたりしていたんですか。

自分で作ったことはないです。ただ、友だちで作っている人がいて、もちろんその人はそういう作業が好きでやってるんですけど、かなりの数を描く必要があったりと凄く大変なんです。それとは別に、アイデアのヒントとして、例えば中学高校のときに教室で落書きして紙を回したりするとか、電話のメモ書きにちょっと絵を添えるとか、そういうカジュアルなんだけれど、描いている人の人となりが伝わるようなコミュニケーションをアプリで表現できたらいいなと思ってこのアプリを作りました。

――そういうアプリって今まであまりなかったですよね。

調べたところあるにはあるんです。例えば、iPhoneに標準でついているメッセンジャーに手描きのものを再生する機能はあります。でも、それはおまけ機能みたいな感じで、そこに特化しているわけではないんですよね。手描きでコミュニケーションすることに特化したアプリはほとんどないと思います。

――LINEスタンプも動くものがありますが、それをよりカジュアルに作れるようにするという感じですね。

LINEのスタンプって、もちろんポジティブに使うこともあるんですけど、返事を書くのが結構めんどくさくて「ここで会話を打ち切りたい」というときに使うこともありますよね。その時のちょっとした罪悪感も発想のヒントのひとつになっています(笑)
このアプリは、スタンプよりもちょっと手間がかかって面倒だけれど、その分だけ気持ちを伝えられるものになればいいなと思って作りました。

メンタリングではプロセスやUIなどについて相談

――週2回のメンタリングではどういうやり取りをされていましたか。

メンタリングをしてくれる方だけにはプロジェクトファイルを渡していたんですが、自分だけではどうしてもうまく解決できない問題を、プロジェクトファイルを細かく見てもらい、ポイントを教えてもらうことで解決できたことが、すごく助かりました。

――今後追加したい機能などはありますか。

動画の書き出しをもっと早くできるようにしたいです。実は動画の書き出しは、故意に無駄が多い作りになっているので、そこを最適化してもっと使いやすいアプリにしたいです。というのも、iPhoneは機種によって処理のスピードが違うんですが、早い機種だと処理が速すぎて次の処理が追いつかないから、それをすっ飛ばしてしまうことがあるんです。そういうわけで、どの機種であっても、本来できるはずの処理より遅い処理になってしまっています。それを、機種ごとに最適化された処理ができるようなロジックに改善したいと思っています。

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――ご自身でLINEのスタンプを作成されていたという方にはアプリを紹介されましたか。

はい、スタンプの作成とは全くの別物ですが、彼らのお子さんも含めて面白がってくれています!

自分がやりたいと思ったことをベースに技術を習得したい

――カリキュラムの内容の中で、オリジナルのアプリに生きた部分はありましたか。

とても役に立ってますね。例えば、Xcodeの使い方ひとつとっても、ダウンロードしてプロジェクトファイルを作り、コードを書いて動かすところまでは自分で調べてやっていたのですが、ソースコードの管理や履歴を扱う方法など、エンジニアであれば普通に知っているようなベーシックな機能を短期間で効率よく理解できました。Githubの使い方やフレームワークのインストールなどについても、余計な試行錯誤を繰り返さず、最短距離で知ることができ、その分コーディングに時間を使うことができました。

――今回のアプリを開発する上でデザインを参考にしたアプリなどはありましたか。

UIで参考になるものはないかと色々探したんですけど、最近のアプリの画面構成の大半が、画面下部にアイコンが固定で並んでいて、そのアイコンをタップすると画面上部に表示が遷移する構造だということに気付いたんです。その構造は僕のアプリには合わないので、結局、特に参考にしたものありませんでした。画像を構成する要素はほぼ最初から決まっていたので、あとはそれらを分かりやすく、かつ使いやすい配置にするために自分で色々と配置をいじって試しました。

――その配置や画面遷移などは、開発する以前にある程度イメージはできていたんですか。

必要な画面の要素は最初から見えていたので、あまり深く考えず、まずはとにかく作り始めましたが、途中で一度、メモ紙にレイアウトや画面遷移を書き出して不要な遷移を洗い出し、現状のシンプルな遷移に整理しました。ボタンなどの細かいデザインは最後にまとめてやろうと思っていました。今回はアプリの構成要素が最初からかなり具体的に見えていたので良かったですが、イメージがある程度しか見えていない場合は作りながら考えるしかないかなと思います。

プログラミングをやり始める時はより具体的なイメージがあることが大事

――受講される前と後で、アプリの見方の違いはありましたか。

アプリのユーザーインターフェースは凄く気になるようになりましたね。アプリの作成中にも色々なアプリを見ていたのですが、何気ないちょっとしたアニメーションで操作感がかなり違ってくる、といったことに気づくようになりました。ほんのちょっとしたアニメーションをかませることで、唐突感がなくなり、使っている時の心地よさに大きな違いが出るというのは自分にとって、大事な発見でした。

――今後ご自身のキャリアの中での、こうしていきたいと思うような変化はありましたか。

キャリアというほど大げさなことは何も考えていなくて、自分が楽しく遊べるフィールドが増えて良かったなという感じです。特に大きな目標とかはないですが、「アプリのアイデアを思いついたら自分で作れる」っていうカードを手元に持てたことが、個人的にはすごく嬉しいです。

――最後にこれからアイデアを形にしたいという方に、今回の経験もふまえてアドバイスをお願いします。

いざ作ってみると大変なことも多いと思うので、「どうしてもこれは作りたい」という気持ちと、具体的なイメージがあればあるほどいいと思います。
よほど特殊なことをやろうとしていない限り、情報は必ずどこかにあるので、それを自力で探し回るのも楽しいといえば楽しいんですけど、それが続くとかなり疲弊するので、詳しい人に側にいてもらって、本質的な作業にフォーカスできる環境はとても有効だと思います。

例えば僕の場合は「こんな簡単なことをやるのに、どうしてこんなに面倒なコードを書かなきゃいけないんだ」といった、なかなか他の人に理解してもらえない愚痴を、メンターさんに笑いながら聞いてもらうことでモチベーションが維持でき、とても救われました。

(インタビュアー:小嶋大貴)