アンラーニングとは!人材と組織の継続的な成長を促す学習法【人事向け】
知識やスキルをある程度付けて実務で使ってきたら、定期的に見直しや学び直しが必要です。なぜならそれが現時点で最適化どうか分からないからです。これをアンラーニングといいます。今回はアンラーニングのメリットや具体的な方法を詳しく解説していきます。
ビジネス環境の変化が著しい時代、働く人材がアンラーニングしていくことの重要性が高まっています。時代の波に乗り、個々の人材と組織が成長し続けていくための手法です。
ここでは、アンラーニングとは何か、その必要性やメリット、どのような方法があり、企業施策としてはどのようなものが有効なのかについて説明します。
目次
アンラーニングとは
まず、アンラーニングとはどのようなものなのかを説明します。ビジネスシーンで重要視されるようになった背景とともに見ていきましょう。
アンラーニングの定義
アンラーニングとは、自分の経験上で得た知識や作り上げてきた価値観を「意識的」に白紙に戻し、再び学び直すことです。英語では「Unlearning」で、リセットして新しい学びを得るという意味を持ちます。いったん白紙に戻すことで異なる学びを得て、さらなる学びにつなげていくのがアンラーニングです。
人の成長には、学び=ラーニングが必要です。確かにどのような学びも蓄積するほど、深く、広い知識が手に入ります。誰もがそうなることを目指して学んでいくでしょう。しかし、さらなる成長を遂げるには、学びの継続の中にアンラーニングを取り入れ、交互に繰り返すことも欠かせない要素なのです。
時代が移り変わる中、実は、生活上で無意識にアンラーニングしていることもあります。たとえば、固定電話から携帯を経て、スマホを使うようになって生活は激変しましたよね。生活上の価値観にも少なからず影響を与えているはずです。私たちはそうやって、時代の流れに沿ってきています。
ビジネスシーンでは、アンラーニングを意識的に行い、時代の変化スピードとその変化に合わせる必要性が高まっているのです。
アンラーニングが求められる背景
社会やビジネス環境の変化が、アンラーニングへの注目度を高めています。
現代は、先の見えない時代とよくいわれます。ものごとや環境の変化スピードが、以前とは比べものにならないほど速くなっています。状況や環境が変化すれば、対応や解決策も変えていかなければなりません。
今までは、私たちが持つ知識や価値観は、すべて先人や自分の過去の学びや経験から得ています。そして、その学びや経験は、そのときの状況や環境から見出されたものです。これから得ていく学びも、そのときあるものから学んでいくでしょう。
しかし過去の学びでは対応しきれないことが増えているのです。大きな変化には、得ている知識も、持っている価値観も根本から変えなければ通用しないことも少なくありません。
だからこそ、今の自分の知識や価値観を見直す機会となるアンラーニングが求められているのです。
アンラーニングを行うメリットとデメリット
アンラーニングをすることのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
アンラーニングにはさまざまなメリットが期待できます。現代社会の状況と照らし合わせながら確認していくと、今アンラーニングが求められることに、さらに納得がいくのではないでしょうか。
学びの継続を促進する
学びは成長を促すものですが、一定のレベルまで熟達したとき、もしくは熟達したと感じるとき、学ぶことへのモチベーションが下がることが多いです。
アンラーニングすることで、常に学びの要素を見つけることができます。つまり、学ぶモチベーションを保ち、学びを継続し、成長し続けることを可能にするのです。
「今」に対応できる
アンラーニングでは、過去の知識や価値観を払拭し、今必要な知識や価値観を取り入れます。つまり、今の状況や環境に合う対応ができるということです。
時代遅れも、過去に影響された固定観念も排除して、的を射た対応でものごとを進められます。
改善力が強化される
アンラーニングでは、今持っている知識にあぐらをかくことなく、常に見直しをしていきます。そのプロセスが習慣化されると、思考はあらゆることに応用するようになります。
たとえば、仕事のフローややり方、コミュニケーションの取り方を見直したりして改善の必要性にも気づきやすくなります。
新たな発想・イノベーション
アンラーニングは、新しい知識や価値観を呼び込みます。イノベーションにつながるようなアイデアや発想の材料になることも多いです。
思考や視野が広がる
知識は深まるほど、経験値は高くなるほど、次第に思考や視野は狭くなりがちです。
アンラーニングは常に違うことを探ったり発見したりするため、思考は柔軟になり視野も広く保つことができます。
デメリット
多くのメリットが見込めるアンラーニングですが、デメリットを挙げるとすれば、その難しさです。
アンラーニングには変化が必要です。熟練した経験や知識を持った人ほど、それを手放すことに対して、意識的にも無意識的にも抵抗が生まれやすいです。
価値観も長年の経験の中で、徐々に形づくられていくものですから、「今、変える」といってすぐに反映できるものではありません。そのため、時間がかかるという覚悟も必要です。
アンラーニングの必要性
アンラーニングの目的は、人の成長、または個々が成長のために学び続けることを促すことにあります。ここで、仕事上ではどのような場面で必要とされるのかを説明します。
業務プロセス・手段
ある仕事に携わる期間が長くなるほど自分なりのやり方を見つけ、ルーチン化する部分が増えます。はじめに教わった方法を一貫して長期間、続けていることもあります。
一度習慣化されると変更の必要性にも気づきにくいものです。しかし、業務やオフィスを取り巻く環境や状況は変わり続けているはず。既存のフローを見直し、新しいプロセスや手段を加えたり、入れ替えたりすることで効率化や品質の向上ができるのです。
営業・マーケティング
企業の利益の大半は顧客から生み出されるものです。営業やマーケティングは顧客に対して行っていきます。社会の変化、消費者やユーザーのニーズに合わせなければ、顧客を獲得することができません。
先述したように、社会は急速に変化しています。
- 営業やマーケティングのスタイルや方針
- ターゲット層
- 使っているツールや手段
など、以前は成果の出た方法であっても、今となっては時代遅れという可能性もあるのです。
見直してみると、立て直しの必要性が見えてくることも多いです。
マネジメント
部下を率いる管理職の役割は、組織で成果を上げることと部下育成です。
自分の知識ややり方を部下にコピーさせるだけでは、組織能力を向上させることは難しいでしょう。部下の成長を促すとともに、自分も成長し続けなければ、部下に追い越されてしまいます。組織の在り方、マネジメントのやり方、部下の個性に固定観念を持っていてはうまくマネジメントしていくことはできません。
知識や価値観を一掃して、新しいもの、もしくは部下の能力も、自分や組織の血肉として活用していくことが大切。アンラーニングする姿を現場で日常的に見せていくことも立派な育成の一環なのです。
職場のコミュニケーション
職場の人材の多様化が進んでいます。さまざまな属性、個性、価値観を持つ人たちとコミュニケーションを取りながら仕事を進めます。自分の価値観を押し付けたり、囚われたりしていると摩擦が起きたり、ストレスを受ける頻度が増します。
自己を見直すことで、改善の必要性や無用な思い込みに気づけるのです。それが、周りと関わるときの建設的な対話や相互理解につながります。良好で円滑にコミュニケーションの取れる職場環境ができ、生産性も維持・向上していけるのです。
アンラーニングの方法
では、アンラーニングを行うには、どのような方法があるのでしょうか。個人での取り組みと企業で行う施策に分けてご紹介していきます。
【個人】内省を行う
自分の考え、行動、言動について振り返り、内省する方法があります。内省は反省ではなく、事実を認識することです。アンラーニングでいう見直しを可能にします。
生活や仕事の中で無意識な部分は意外に多いため、まずは、
- どう行動したのか
- どのように伝えたのか
- どんな考え(価値観)で、どこからの知識によるものなのか
といった現状を把握することが先決。自分の現状と今の現実のギャップがあれば、白紙に戻す必要性にも気づけるのです。
【個人】クリティカルシンキング
上記の内省の一部になりますが、自分が持つ知識、価値観、思考などが適切かどうかを疑ってみるクリティカルシンキングもアンラーニングを助けます。当たり前になっている無意識の「不適切」にも気づくことができます。
Aと思っていることが本当にAなのかを、あらためて検証するプロセスです。Aではないかもしれない、Aは時代遅れではないかと探ってみることで新たな気づきが得られることがあります。
【個人】多種多様な人と交流する
自分と異なる個性を持つ人、まったく違う職業やライフスタイルを持つ人との接触を増やすと、必然的にさまざまな価値観に触れることができます。もちろん、さまざまな考え方や価値観の存在を知れますし、それが新しい知識や学びになることもあります。
それだけでなく、異なる価値観を認知することが、巡り巡って自分の持つ価値観を客観的に見ることにもつながります。染み付いた自分の価値観は、比較対象がないと気づきにくいものなのです。このことが内省やアンラーニングに導いていきます。
【施策】他部署、他業種との交流機会を提供する
企業の施策としては、普段の仕事で関わらない人たちとの交流の機会を提供するといいでしょう。複数部署のメンバーを集めた研修や意見交換会の実施、他業種の企業やグループ会社などと協力して交流会を開催する方法もあります。
【施策】個人のアンラーニングをバックアップ
アンラーニングの必要性や概要を伝える施策や研修も、意識改革のきっかけとしてはひとつの方法です。しかし、アンラーニングの特質を踏まえると、机上の学習で意識を醸成し、実践に結びつけることは難しいものです。
自発的な実践のほうが進めやすく、効果も出やすくなります。このため、アンラーニングしやすい職場環境づくりをすることで、外側からサポートすることも視野に入れてみましょう。たとえば、多種多様な人材を採用して、日常的に多様な価値観に触れられる環境を提供するのも有効策と考えます。
アンラーニングの注意点
では、最後にアンラーニングを行っていく上で注意しておくべき点について説明します。とくに、組織の中で取り組む際に起こりやすい項目もあるので、人事はその点にも配慮をして進めていきましょう。
ラーニング否定が起こることがある
内省をし、自分をクリティカルに見つめることをさせるアンラーニング。これまで培ってきた経験やスキルや、この先新しい経験やスキルを培っていくこと自体を否定・軽視しやすくなることもあります。
アンラーニングだけを継続してはいけません。通用しないスキルが目立ってきた昨今、何かを身につけても、すぐに廃れてしまうと考え、学びの行動に意義を感じないという声も聞かれます。
アンラーニングは、ラーニングとセットで継続しなければならないこと、ラーニングなしにアンラーニングの機会は訪れないことを認識しておく必要があるでしょう。
組織での変化への抵抗
個人のアンラーニングでは、自分の内側の抵抗に直面します。それが組織単位のものとなるとき、組織の中に抵抗が発生します。たとえ個人のアンラーニングから発生した気づきであっても、複数のメンバーで進めていく仕事には、少なからず影響が出ることが考えられます。
一つ一つの変化を人事が管理することは難しく、変化の提案があっても現状の企業スペックを加味しなければならないこともあるでしょう。
しかし、少なくともアンラーニングからの気付きを受け止める風土や体制は整えておくべきと考えます。アンラーニングの足を止めないために必要なことです。「できる方法はないか」という視点で受け止めれば、多くの場合、実現は可能であり、それが向上策となることも多いです。
まとめ
アンラーニングのできる人材が増えることで、組織も成長し続けることができます。ビジネスシーンの多様化、高度化、複雑化が進みVUCAの時代といわれる現代、今後もますます重要視されていくと思われます。
人材のアンラーニングに必要なものは、もしかすると、他でもない組織のアンラーニングかもしれません。
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