社員の早期戦力化を目指す!オンボーディング概要からプロセスまで紹介【人事向け】
オンボーディングとは新入社員が早く会社に馴染み戦力として活躍できるように環境面・精神面でサポートをすることです。これができるようになると、採用活動が非常に効果的なものとなります。今回は具体的な手法を含め、詳しく解説していきます。
会社をより成長させていくため、業績を上げていくために大切なのが採用活動です。しかし、会社の将来を担っていく存在を獲得することは重要ですが、それと同時に大切なのが、新入社員が会社に馴染んで自分の力を発揮できるようにすることです。この点がおろそかになってしまうと、どれだけ優れた人材でも会社に馴染めずに退職してしまう可能性もあります。
そこで今回は、新入社員が入社して早い段階から最高のパフォーマンスを発揮できるようにするための方法として「オンボーディング」について紹介します。
目次
オンボーディングとは
オンボーディングという言葉を初めて聞いた人もいるでしょう。そこでまずがオンボーディングの意味と概要について紹介していきます。
オンボーディングの意味
「オンボーディング(on-boarding)」英語の「on-board」を語源としている言葉です。
on-boardには「船・飛行機に乗っている」という意味がありますがこれが転じて、企業においては、飛行機や船(企業)に乗ってくる乗組員や乗客(新入社員)に対して適切なサポートを行い、環境に慣れてもらうプロセスのことをさします。
新入社員にとって入社直後というのは、人間関係を作ったり、ルールや慣習や仕事内容を覚えたりと新しい環境に適応するのに時間がかかってしまいます。
オンボーディングはそういった状況に陥らないようにするために、入社時から適切なサポートを行い、早い段階から会社の人との関係を築き、会社の文化に慣れることで、新入社員の早期の即戦力化を目指していくというわけです。
では、どういったことが行われるのかというと、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 新入社員オリエンテーション
- 新入社員研修
- 専属メンターによるメンタリング
- 社内行事
- ランチ
などです。これらはあくまでも一例であり、実際に何を行うのかは、各企業の方針や考えによって変わってくるため、自社で導入するときは、よく考えて試作を行う必要があります。
また、一般的な新入社員研修などは1人の講師から指導を受け、研修が終わると関係はそこまでで終わってしまうケースが少なくありませんでした。しかし、オンボーディングにおいては、社内の多くの人間を巻き込んで行っていくため、関係性が継続していきます。
また多くの人と関わることができるため、社内での居場所やポジションが確立しやすくなります。そうすることで、実際の業務へも取り組みやすい状況を作ります。
オンボーディングの対象者
オンボーディングの対象者は会社に新たに入ってくる社員全員です。会社に慣れて、戦力になってもらうという文面からオンボーディング=新卒社員向けというイメージを持つかもしれませんが、対象は新卒に限られません。
例えば、社会人として一定の経験を持っている中途入社の社員であっても、新入社員であることには変わりありません。中途入社は入社の段階で即戦力とみなされ、周囲の社員もそういった目で見てしまいますが、本人からしてみれば新しい環境、これまでとは違う慣習や仕事の進め方を前に戸惑うことも少なくありません。
そのため、中途入社の社員に対してもオンボーディングによって会社に馴染んでもらうようにすることは、業務で活躍してもらううえで効果的なのです。
オンボーディングの効果
新入社員が会社に馴染み、即戦力となるように行うオンボーディングですが、具体的にはどういった効果があるのでしょうか。ここでは、以下の5つについて紹介します。
- 所要時間の短縮化
- コストの抑制
- 組織への忠誠心向上
- 社内の結束力向上
- 業績の効率化
では、1つずつ確認していきましょう。
所要時間の短縮化
オンボーディングを行うことで、新入社員は周囲の社員との関係を築きやすくなるほか、会社の文化や雰囲気ルールなども早い段階で覚えることができます。
例えば、以下のようなことが行われると、新入社員はより会社に馴染みやすくなるでしょう。
- 入社した日にメールアドレスや各種アカウントが用意されている
- 不明点が出てきたときに情報にアクセスできる、質問できる体制が整えられている
- 入社初日に歓迎ランチをセッティングし、先輩社員と関われるようにしている
- メンターや教育担当を用意するなどOJTの環境が整えられている
これらの施策を行うと、周囲に知っている人・コミュニケーションが取れる人がいる状態になるため、わからないことが出てきても質問できるほか、仕事にも取り組みやすくなるため、結果的に戦力として成長するまでの時間を短縮することができます。
逆にこういった施策がなく、新入社員が孤立するような状況になってしまうと、「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」「会社に馴染めない」となり、ミスマッチによる退職につながる恐れがあります。
コストの抑制
新たな人材を採用し、その人が会社の戦力に成るまで育てるためには一定のコストがかかります。
しかし、先述のように新入社員が孤立する状況が生まれてしまうと、せっかく採用した社員が早い段階で退職してしまう可能性があります。そうなると、再び採用を行わなければいけなくなるため、余計にコストがかかります。
オンボーディングは、新入社員が入社してから継続的にサポートを行なっていく仕組みなので、新入社員にとっては会社に馴染みやすく、早期の離職を防ぐことができます。
そうなると、結果的に人材採用のコストを抑えることができるというわけです。また、そこで抑制できたコストは別の事業に回すことも可能なので、会社として大きくさせたい事業に注力することもできるでしょう。
オンボーディングは新入社員の即戦力化のプログラムであるのと同時に、離職を防ぐためのプログラムでもあるのです。
組織への忠誠心向上
オンボーディングは、早い場合入社前の段階から始まります。早いうちに会社についての理解を深め、同僚となる先輩社員や所属する部署のことを知ることで、「自分もこの組織の一員なんだ」と会社や組織に対する帰属意識や忠誠心を高めることができるでしょう。
また、施策の一環として、会社の幹部や管理職クラスとか変わる機会を作ることで、会社としての理念や戦略などに触れることができ「自分も貢献したい」「活躍したい」といった思いを持ってもらうことができます。
帰属意識が高まれば、仕事に対する意欲も高まることが期待されるため、その社員のパフォーマンスも高くなります。
社内の結束力向上
従来の新入社員研修では、関わる人が少なく、部署が違えば研修後に関わる機会も少なくなってしまっていました。結果的に同じ部署や仕事で関わる人など、狭い人間関係の中でしか仕事ができていなかったのです。同じ会社に所属していながらよく知らない人がいる状況です。
先述の通りオンボーディングは、部署単位にとどまらず社内のあらゆる人間を巻き込んで、継続して行うため、横・縦のつながりを作るだけでなく、そのつながりを深めていくことができます。そうすることで、結果的に新入社員はもちろん、他の社員も社員間のつながりが深まり、結束力を高めていくことが可能です。
入社時の印象が悪かったり、関わる人が少なかったりすると、新入社員は会社に対してあまり良いイメージを持たなくなるため、最初の段階で多くの社員とのつながりを持てるような仕組みを作ることは重要なのです。
業績の効率化
オンボーディングは、新入社員にとっては早い段階で会社や業務に馴染み同僚との仲も深めるためのツールになり早期の戦力化を促進するほか、既存の社員にとってもほかの社員との関わりを深める機会になります。
社員間の関わりの深化は業務を進める上でも大いに役立つため、結果的に業務効率が高めることが可能です。
また、オンボーディングにより他部署との関わりがきっかけとなって、新たなプロジェクトや取り組みが生まれる可能性もゼロではありません。
このように、オンボーディングの第一の目的は新入社員の即戦力化を促すものですが、副産物として多くのメリットを享受することができるのです。
オンボーディングのプロセス
導入することで企業に多くのメリットをあたえてくれるオンボーディングですが、実際に導入するにあたってはどのようなプロセスを踏めばいいのでしょうか。
続いては、オンボーディング実施に向けたプロセスとして以下の3点について説明します。
- 求める人物像の明確化
- オンボーディングプランの作成
- オンボーディングの実行
それでは、1つずつ確認していきましょう。
求める人物像の明確化
オンボーディングは新入社員の即戦力化を目指すための取り組みですが、まず前提として会社がどういった人材を採用したいのか、どういった人材を戦力にしたいのかといった点を明確にすることが必要です。
例えば、人材がすでにたりている部署に、新たな人材を入れてオンボーディングを実施してもあまり効果的ではありません。むしろ、新入社員の力を十分に発揮できない環境である可能性もあるため、非効率だといえます。
一方で、人材が足りていない部署であれば、新入社員を即戦力化することで大きな利益を上げられる可能性もあります。
つまり、オンボーディングはただ行えばいいというわけではなく、その前段階の採用の段階から
- 会社のどの部署に必要なのか
- その部署で求めるのはどういったスキルなのか
- どのように活躍して欲しいのか
といった点をはっきりさせておかなければいけないのです。そうすることで、希望する人材の選択に力を注ぐことができ、この後に続くオンボーデイィングプランの作成にも取り組みやすくなります。
オンボーディングプランの作成
求める人材が明確になったら、実際に行うオンボーディングの内容を検討します。プランは会社として体系的なものを作る必要がありますが、細かい部分では社員一人ひとりに応じた内容にしていかなければいけません。
採用面接時の雰囲気や特徴、性格などを踏まえたうえで、目指すべき姿へと導くことができる内容にすることが大切です。また、新入社員にもプランについて説明し、意見や考えを聞いておくことで、よりその人に適したプランを作ることができます。
一例ですが、以下のような点をプランに組み込めるといいでしょう。
- 社長自ら経営理念や戦略について説明する
- 管理職などから部署単位の事業内容について説明する
- コミュニケーションを取る機会を設定する(ランチなど)
- メンター制度の導入
- 同期社員との交流の機会の確保(入社前)
これらの内容は、多くの会社で行われているものかもしれませんが、こういった取り組みを行うことで、新入社員は会社に対して親近感を持つことができます。
オンボーディングの実行
プランが完成したら実行に移ります。
新入社員が会社に馴染めるように、周囲の社員との関係が構築できるように配慮しながらプランに沿って各施策を行いましょう。
また、段階的に実務にも取り組むように進めていきます。最初のうちは新入社員と面識のある社員(面接担当者、リクルーターなど)にも積極的に関わってもらうことで、新入社員の不安も取り除くことができます。
また、一通りの施策が終わったら、プラン全体の振り返りを行いましょう。どういった効果があったのか、どういった点がよくて、何が悪かったのかなどプランの評価を行うことで次回以降に活かしていくのです。
また、振り返りは一部の人間で行うのではなく、プランに関わった人全員で行うことで、多角的な視点による評価を得ることができます。
オンボーディングを成功させるためのポイント
最後にオンボーディングを行ううえでのポイントとして以下の2点を紹介します。
- 必要性と効果の認識
- 企業課題の意識
必要性と効果の認識
オンボーディングを行うにあたっては、まず自社にオンボーディングを行う重要性を既存の社員に理解してもらう必要があります。オンボーディングは多くの社員を巻き込んで行うものなので、必要性が認知されないと、十分な協力を得ることができません。
具体的なプラン内容を公表するのと同時に取り組みによってどういった成果が期待できるのか、といった点を明確にしましょう。
また、取り組みの費用対効果の測定も欠かせません。オンボーディングを行なった社員がどういった成績を残したのか、それは会社全体にどういった影響を与えたのか、といった点を確認するようにしてください。この時、思ったような成果が出ていなければプラン内容に問題がある可能性があるため、見直しを行います。
企業課題の意識
オンボーディングは新入社員の即戦力化を促進するための取り組みですが、新入社員の活躍は最終的には会社へと還元されます。
そのため、オンボーディングは会社全体の状況を踏まえたうえで行われなければいけません。会社の経営課題を落とし込んでいき、採用や育成の計画を立てるのです。そのため、常に経営課題を意識することは非常に重要だといえます。
まとめ
今回は、オンボーディングについてその概要から効果、プロセスについて紹介してきました。採用活動は企業の将来を見据えた重要な活動です。一方で会社に馴染めずに退職してしまうことは企業にとっても退職する社員にとってもマイナスとなります。
そういった事態を避けるためにも、新入社員が会社に馴染みやすく、なおかつ自分の力を発揮できるようにすることが必要となります。オンボーディングはそのためにも重要な取り組みとなるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
監修してくれた方
田上 敏光
キラメックス株式会社 ビジネス事業部 人材系企業で採用支援・人材育成事業・toB向けクラウドサービス事業に従事。その後、「弁護士ドットコム株式会社」にて新規事業の企画立案・運用に携わる。現在は、キラメックス株式会社にてプログラミング教育を通して「個の選択肢、可能性を広げること」「新たなキャリアに伴走すること」をミッションとし法人向けに「IT人材採用支援」および「IT研修」を担当している。 |
内容分かりやすくて良かったです!
田島君も、今日から取り入れて活用していきましょう!
分かりました。ありがとうございます!
TechAcademyでは、短期間で実務レベルのスキルを身につけた若手IT人材をご紹介、ダイレクト・リクルーティングできる「TechAcademyキャリア」を展開しています。
能動的にITスキルを習得し、成長意欲が非常に高いことが特徴です。
他の求人サービスでは出会えない、スキルの高い人材を有した独自のデータベースを通して、人事採用担当者のお悩みを解決します。
お気軽にご相談をくださいませ。