リスキリングとは?DXに欠かせない理由や企業の取り組み事例まとめ

リスキリングは近年企業のDX戦略において、社内で新たに必要となる業務に順応できるようにする再教育、という意味で使われることが増えています。この記事では、リスキリングに関するtipsや、リスキリングに取り組む企業の事例を中心に解説していきます。

この記事では、リスキリングに関するtipsや、リスキリングに取り組む企業の事例を中心に解説していきたいと思います。

目次

 

リスキリングとは?

「リスキリング(Reskilling)」はもともと職業能力の再開発、再教育という意味で使われてきた言葉です。近年では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略において、社内で新たに必要となる業務に順応できるようにする再教育、という意味でも使われることが増えています。

 

リスキリングが注目されている理由、メリットとは?

世の中においてDX推進が進んでいる中、多くの企業がDX推進に必要なスキルを持った人材の不足に悩まされています。

株式会社電通デジタルによる、2020年9月に国内企業に勤める3,200人を対象にした調査では、DX推進の障壁で最も多かった回答は「スキルや人材の不足」であることがわかっています。(出典:株式会社電通デジタル「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」https://www.dentsudigital.co.jp/release/2020/1218-000737/

DX推進に必要な人材を確保するためには、採用や既存社員の人材育成が必要です。そこで人材育成として注目されているものがリスキリングなのです。

採用以上に注力すべきリスキリング

優秀な人材を採用すればリスキリングは必要ないのでは?と思った方もいると思います。もちろん外部の優秀な人材を採用し続けることは大切です。しかし自社の業務領域に関する知識を持たない外部の人材を獲得するよりも、社内の事業内容や業務を熟知した内部の人材の方がDX推進を担いやすいこと、またDX推進に特化したスキルを持ち合わせた人材を採用することが非常に難しいことなどから、リスキリングの優先度は高いといえます。

日本IBMおよびIBMの2019年に実施した調査によると、AIや自動化の影響により、2022年までに世界の12の大規模経済圏における1億2000万人の労働者が、リスキリングの必要があるかもしれないと発表しています。また日本においては、実に488万4000人がリスキリングの対象だといいます。
(出典 “The Enterprise Guide to Closing the Skills Gap” https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/report/closing-skills-gap

企業でリスキリングを行うメリット

リスキリングのメリットは、上記で述べたようにスキルを身につけた優秀な人材が増えることによってDX推進につながる点にあります。さらに、身近な社員がスキルを身につけ始めることにより会社全体において自発的に学ぼうとする文化が生まれる点も大きなメリットとなるでしょう。スキルを身につけてもすぐ仕事に役立ったり、会社から評価される保証がないこと、学ぶことに時間と労力などのコストがかかることから、なかなか1人だとリスキリングに取り組みづらいと思います。そこで企業が率先してリスキリングを推奨する文化を作ることで、社員が意欲的に学びやすい環境を作ることができます。

何からはじめればいいかわからない!リスキリングに取り組むためのポイント

DX推進などの背景から、多くの企業がリスキリングに取り組む必要があることがわかりました。
しかしリスキリングの必要性がわかっていても、どんな社員に何のスキルを身につけてもらうべきか、どのような研修を行うべきかわからないという企業も多いのではないでしょうか。

まずは自社の現状確認から

そのような場合はまず、自社がDXを推進する上でどのフェーズにいるのかを見つめ直し、会社や社員、業務のあるべき理想の姿と現状のギャップを認識するところから始める必要があります。というのも、同じ業界であってもフェーズによって、「DX人材となるべき層」や「求められるスキル」が異なるからです。自社のDXのフェーズや理想とのギャップを確認した上で、これから必要とされる人材要件を洗い出し、そのために誰が何のスキルを学ぶべきなのか考えてみてください。

DXの取り組みに必要なスキルについては、パーソルプロセス&テクノロジーが2021年6月に実施したDX関連業務の責任者、担当者、関係者1061人を対象にした調査によると、「アイデア企画・構想力」、「課題発見力」、「先端IT技術知識(AI、IoT等の先端IT技術に関する知識)」、「業務プロセスデザイン力(現状業務を可視化し、あるべき業務プロセスをデザインする力)」が上位に上がっています。つまりソフトスキルとハードスキルの両方が求められていることがわかっています。(出典:パーソルプロセス&テクノロジー株式会社「デジタル人材育成に関する実態調査」https://www.persol-pt.co.jp/news/2021/07/15/5158/

以下では各業界の企業がどのようなスキルを身につけるためにリスキリングに取り組んでいるのかご紹介します。

IT企業だけじゃない?!リスキリングに取り組む国内外の企業の事例

各業界の企業がどのようなスキルを身につけるためにリスキリングに取り組んでいるのか紹介します。

国内有名企業のリスキリング事例

まずは国内の有名企業のリスキリング事例を2社見ていきましょう。

キヤノン株式会社

工場従業員を含む1500人にクラウドや人工知能(AI)の研修を実施。
就業時間を使い、半年程度の専門教育を行う。プログラム言語やセキュリティーなど、デジタル知識のレベルごとに分け、190講座を用意。必要に応じ統計や解析、代数などの基礎知識も学べるようにし、幅広い人材の職種転換を後押ししています。講師は社内の技術者のほか、クラウド技術は米マイクロソフトなど外部から招いています。
(出典:日本経済新聞 2021年7月7日 「キヤノン、工場従業員にDX教育 成長職種へ配置転換」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC079NS0X00C21A6000000/

キリンホールディングス株式会社

テックアカデミーの「iPhoneアプリ、Swift研修」を活用し、DX戦略推進室の社員を中心にリスキリングに取り組んでいます。最新のデジタル技術を積極的に取り入れながら顧客に新しい価値をいち早く届けるため、DX戦略推進室の社員が本コースを受講しています。アプリ制作未経験の状態から、約3ヶ月(160時間)業務と学習を並行し、最終的に事業に関わるオリジナルのiPhoneアプリを制作できるレベルのスキルを身につけていただきました。

※受講いただいた背景や学習方法などの詳細がまとまった資料はこちらからダウンロードできます。

他にも、個人向けECサイトを運営する企業様では、マーケティングを担当する社員がテックアカデミーの「Java Bronze SE研修」「SQL研修」を経て、受講した社員本人の希望によりエンジニアの部署に配属された事例もありました。これまで開発業務を外部に依頼していましたが、開発スピードをあげるために自社のエンジニアの採用や人材育成に力を入れていくそうです。

海外有名企業のリスキリング事例

次に海外の有名企業のリスキリング事例を3社紹介してきます。

AT&T

アメリカでリスキリングの先駆者として知られるのが、通信事業者で あり、ワーナーメディアを傘下に抱える巨大メディア・コングロマリットのAT&T。
2013年に2020年までに必要なスキルを特定し、現状のスキルから移行するための計画「ワークフォース2020」に取り組んでいます。本取り組みでは、2020年までに10億ドルを投下して10万人の従業員のリスキリングを実行することを目標として掲げました。社内の人材異動を円滑にする環境整備や、従業員のキャリア開発支援ツールの提供、オンラインの訓練コースの開発、従業員のためのワンストップ学習プラットフォームの提供等、様々な取り組みを実施。その結果、社内で必要な技術職の81%を充足することに成功。さらに、リスキリングに参加した従業員はその他の従業員よりも、1.1倍高い評価を受け、1.3倍多く表彰を受賞し、離職率は1.6倍低くなったという結果も出ています。
(出典:リクルートワークス研究所 「​​リスキリング〜デジタル時代の人材戦略〜」
https://www.works-i.com/research/works-report/item/reskilling2020.pdf

Amazon.com

2019年から2025年までに米アマゾンの従業員10万人をリスキリングすると発表しています。(一人当たり投資額は約75万円)データマッピングスペシャリスト、データサイエンティストやビジネスアナリストなどの高度なスキルを持つ人材を求めており、非技術系人材を技術職に移行させる「Amazon Technical Academy」、IT系エンジニアがAI等の高度スキルを獲得するための「Machine Learning University」などの取り組みを実施しています。
(出典:同上)

ウォルマート

小売りのDXに従業員が対応できることを視野に入れており、「ブラックフライデー」など年数回のイベント、自然災害などのトラブルに備えて、実際の経験がない従業員でも即戦力となれるようVRを活用した疑似経験をするプログラムを導入。また、顧客がネットで注文した商品を店舗で受け取るための専用機械「ピックアップタワー」など、新たな設備を店舗に導入する場合にも、VRを用いて事前に取り扱い方法を身につけることができるよう育成を行っています。
(出典:同上)

DX推進の一方で、社員への学習機会の提供が不十分

日本でのリスキリングの取り組みはここ数年以内に始まったものが多く、製造業や事業会社のDXは世界と比較すると遅れていたことから、リスキリングの浸透も遅れています。また、日本の事業会社のIT導入はシステムインテグレーターなどの外部企業に依頼することが多いことから、事業会社内でデジタル人材の本格的な育成に取り組むニーズが少なかったことも一因となっている可能性が高いです。

パーソルプロセス&テクノロジーの2021年6月に実施した調査によると、DXを推進する企業のうち、必要なスキルを身に付けるための学習機会が「十分に設けられている」と回答した人は全体の14.8%にとどまり、8割以上が「十分な学習機会が設けられていない」と回答しています。(出典:同上)つまり、会社としてはDXを推進しているものの、社員への学習機会の提供は不十分であるということです。

冒頭でも述べた通り、会社や社員、業務のあるべき理想の姿と現状のギャップを認識することができたら、まずは部署・レイヤー単位など少人数の規模からでも良いのでリスキリングに取り組んでみてはいかがでしょうか。そしてDX推進に向けて会社は社員に向けて研修をただ提供するだけではなく、最終的に社員が自律的にリスキリングを継続する文化の醸成に向けて取り組んでいきましょう。

 

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