「誰から、何を、学ぶべきなのか。」を業界トップの現役エンジニアから聞く「MASTER OF ENGINEER」。
今回は、16年に渡ってグリーのCTOとして技術を牽引してきた藤本真樹氏へのインタビューです。
大事なのは楽しく続けられること
ー エンジニアを志したきっかけを教えてください。
藤本:中学1年生のときにはじめて家にパソコンが来たんですよ。そのPCを触ってるのがとにかく楽しくて、中学生の頃からプロのプログラマーになりたいと思っていました。
深い理由はよくわからなかったですけど、楽しかったからだと思います。
ー これを作りたい、というのは当時からありましたか?
藤本:当時、PCゲームで遊んでいたのですが、PCゲームは仕組みやデータを見られたことが大きなきっかけでした。
工作キットを買って電子工作もしていましたが、ハードウェアって大変なんですよね。すごく高いお金を出して買っても、ハンダ付けを一ヶ所間違えたら回線が焼き切れるなんてこともある。
一方で、ソフトウェアは何回ミスしてもすぐやり直せるので、「ソフトウェア最高!」と思い、大好きなりました。こんな素晴らしいものが世界にあったのかと思い、とにかく楽しかったし、それに出会えてラッキーですし、一生作っていたいなと思いました。
ー もしご自身が今エンジニアを目指すとしたらどうしますか?
藤本:まずは楽しくないと始まらないと思います。楽しいきっかけがあると思うので、楽しいと思ったことを突き詰めます。
大事なのはいわゆるモチベーションで、楽しく続けられることです。今は人生100年時代といわれています。ただ、それだけ続けるってすごい大変じゃないですか。
なので、楽しくコード書き続けられることは大事ですし、その楽しさのなかでわからないことの発見や新しい学びを得る。そうやってできることが増えたり、仕事の幅が自然に広がっていくと思います。
上司からの忘れられない言葉がある
ー 藤本さんが影響を受けた方はいますか?
藤本:大学生のときにプログラミングのアルバイトしていた会社の上司から影響を受けました。1人でMP3のエンコーダーを趣味で作っていたくらいすごい人だったんですけど、僕のちょうど10歳上で「何でこんなにいろいろ知ってるんだろうな」とか、「10年後にはこのレベルになっていなきゃな」と、大きな刺激と目標を与えてくれた人でした。
僕は大学が文系だったので、エンジニアとして就職できるかどうか不安で、そういう不安を会社に人に相談していました。
そしたら当時の上司に、「この仕事、天職だと思わない?」って言われて、それは本当に今でも覚えていますね。
うまくいくかどうかわからないし、どれくらいできるかわからないけど、考えて迷ってる時間が無駄だし、やるしかないよなと思いました。
ー エンジニアとして大切にしていることは何でしょうか?
藤本:とにかく楽しむことですね。
僕は本当ただ好きでやってるし、好きで始めました。それ以外のモチベーションはよくわからなくて、絶対楽しい仕事だとぼくはおすすめできますね。
採用面接をするときに、どういうときに楽しいと感じるか聞くんですけど、人によって違ういろんな楽しさがあるんですよね。
パズルを解く楽しさもあれば、PCが一台あれば自分の手で世界に向けてモノを作って発信できる楽しさもある。あとは、モノを作っていく中で自分ができないことができるようになって成長していく楽しさもあります。本当にいろいろな楽しさがあるので、どんな人でも楽しめるんじゃないかと思っていますね。
ー プログラミングスクールの有用性についてはどう思いますか?
藤本:何か作りたいなと思ったときにちゃんとコーチしたりガイドしてくれる人がいたら、それは良いなと思います。
こういう世界があるよとか、それはこっちから順番に勉強した方が上手に成長できるよなど、ガイドしてくれる人が集まっていたり、そういう場所があったらそれは大事だなと思います。迷わずに正しい順序や情報で学べるのは、とくに最初のうちは非常に助かりますね。
あとは一緒に学ぶ仲間がいるのが良いかもしれないですね。
自分の役割を固定化しない人は成長しやすい
ー エンジニアを採用するときに見ているポイントを教えてください。
藤本:ソフトウェアでモノを作る楽しさを知っている人というのが、すごく大事な条件ですね。
コンピューターサイエンスなどの基礎知識や、ソフトウェアがなぜ動いてるかといった仕組みに対してある程度興味を持てるか、そこを深掘っていけるだけのポテンシャルがあるかも大事だと思います。
あとは、結局会社でソフトウェアを書くときは、一人ではなくチームになります。なので、チームで上手に働けるかは大事ですね。
相手の立場で相手の主張をちゃんと理解できる頭の良さ、そういう想像力をちゃんと使える人は良いなと思います。その上で「ゴールのためにどうするのが良いんだろうね」という話ができると人と働きたいと思っています。
例えばですけど、エンジニアと聞くと暗い部屋で1人でもくもくとコードを書いているという想像をする人もいるのではないでしょうか。技術はすごく優秀だけど、直接会話するのは難しくて、あまり指示も聞いてくれなく、扱いづらいみたいな。
そういった、扱いにくいけど技術力がある人は、「それはそれで良いね」と思われることも以前はありましたが、今はそういう人は徐々に需要がなくなっていると思います。
ソフトウェアは1人でできる相対的な役割は下がってきていると思っていて、どうしてもより多くの人数でより大きいもの作らないといけない。そうすると、個人で強かろうが働きづらい人はいられたら困ります。
ただ、そもそもどういう人を採用したいか、採用したいと思える良いエンジニアの定義も結構難しいです。例えば、ゼロイチで最速で作れる人もいれば、作ったあとに運用や改善をしっかりできる人もいる。それをどっちが良いか決めるのって難しいんですよね。
なので、「自分の役割を固定化しない」という観点は大事にしています。例えば、普段はフロントエンドだけど、会社やチームの状況に合わせて必要ならバックエンドもやれる人。これは多くのスキルを持っているという意味ではなく、常に自分の幅を広げ続けられる人という意味です。そういう人は成長しやすいですし、一緒に働きやすいなと思います。
ー 小学校の授業でプログラミングを学ぶことについてどう思いますか?
藤本:プログラミングを授業で学ぶことで、それをきっかけにソフトウェア開発が楽しいなと思って仕事にしたいと思う人が増えれば嬉しいです。あとは、ソフトウェアの根本的な土台を理解する良い機会にもなれば良いなと思います。
ー これからエンジニアを目指す人にエールをお願いします。
藤本:人が増えるとライバルが増えるので、正直これからプログラミングを始める人にエールを送ってる場合じゃないですが、基本的に全員競争相手だとは思っているので、お互い負けないように頑張りましょう。
プログラミングは、本当に楽しければやればいいし、つまらないなと思ったら無理してやることでもないです。ただ、楽しいと思えたら、一緒に同じソフトウェアエンジニアの仲間として切磋琢磨していきたいので、お待ちしております。
少なくとも僕はこんな楽しい仕事は他にないと思っていますね。
グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者
藤本 真樹
上智大学文学部卒。2001年4月、株式会社アストラザスタジオ入社。2003年1月有限会社テューンビズに入社。PHP等のオープンソースプロジェクトに参画。オープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング等を担当。
2005年6月、グリー株式会社の取締役に就任。