人事によるエンジニア採用の秘訣!エンジニアを知り現場を巻き込むこと

エンジニア採用の難しさは多くの人事担当者を悩ませています。エンジニア特有のキャリア観や転職理由を理解すること、現場社員の協力を仰ぐ重要性を知ることで、自社が求める人材を獲得しやすくなります。エンジニア採用のコツを確認しましょう。

ビジネスにおけるITエンジニアの重要性が高まる中、エンジニア採用の難しさは多くの人事担当者を悩ませています。エンジニア採用の課題や適切な採用方法が知りたい人事担当者もいるのではないでしょうか。

エンジニア特有のキャリア観や転職理由を理解すること、また現場社員の協力を仰ぐことの重要性を知ることで、自社が求める人材を獲得しやすくなります。ポテンシャル採用の活用にも目を向け、エンジニア不足の悩みを解消しましょう。この記事では、エンジニア採用が難しい理由や対策方法についてご紹介します。

 

目次

 

人事にとってエンジニア採用が難しい理由

ノートPCの画面を見つめ思い悩む2人の男女

人事担当者にとってエンジニア採用が難しい主な理由は、即戦力人材の競争率が高いことや、スキルセット・レベルの見極めが困難であることです。また採用アプローチを変える企業が増えたことで、エンジニアの採用媒体離れも進んでいます。まずはエンジニア採用が難しい理由を詳しく見ていきましょう。

エンジニア採用の競争率が高いため

ITエンジニアの需要はここ数年で右肩上がりです。dodaの統計によると、業種別の転職求人倍率は情報通信業が6倍超(2023年)に上り、他の多くの業種より競争率が高くなっています。

またレバテックの統計によると、エンジニアの正社員求人倍率は2021年以降15倍以上で高止まりが続いている状況です。中でもデータマイニング分野の求人倍率は79.2倍(2022年12月)に達するなど、トレンドの技術分野は特に採用が難しくなっています。

参考▶転職求人倍率レポート(2023年3月)|doda
https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/index

参考▶ITエンジニア・クリエイターの求人倍率、15.8倍と高止まり続く|レバテック
https://levtech.jp/partner/guide/research/detail/220/

スキルセットやレベルの見極めが困難なため

人事担当者がよほどITに精通しているか、エンジニア出身でない限り、エンジニアの知識・スキルレベルの見極めは困難です。多くの人事担当者は、論理的思考能力やコミュニケーション能力といったヒューマンスキルの見極めはできても、テクニカルスキルについては判断が難しいでしょう。

特に事業拡大に伴うエンジニア採用などで、自社に経験者のいない先端分野の技術を持つ人材を求める場合、スキルセット・レベルの正確なマッチングの難易度は高まります。

採用媒体離れが進んでいるため

エンジニア採用が難しくなる中、企業はあの手この手で優秀なエンジニアの確保に努めています。リファラル採用(縁故採用)や、SNSを通じたソーシャルリクルーティングを積極活用する企業も多いため、情報感度の高い優秀なエンジニアほど採用市場に出てこないという状況が生まれています。

求人サイトや転職エージェントを利用するエンジニアは減少傾向にあり、採用媒体離れが進んでいることも、エンジニア採用が難しい原因のひとつです。

 

人事が把握しておくべきエンジニアに関する知識

ノートPCのモニターにグラフなどの資料を表示させている男性の後ろ姿と、対面に着座してノートPCを触りながら話しかける男性

人事担当者がエンジニア採用の難しさを克服するには、「エンジニアを知ること」が求められます。特に把握しておきたいのは、職種・職位やプログラミング関連の知識、エンジニア特有のキャリア観です。ここでは、これら2点について詳しく見ていきましょう。

職種・職位やプログラミング関連の知識

ITエンジニアの職種や職位は細分化されているため、エンジニアは求人情報に記載される情報から、どのような職務に従事するかという大枠を判断します。適切なマッチングのためには、職種・職位の分類の理解は重要です。

例えば、Web領域に広く携わるエンジニアを「Webエンジニア」、プログラミングに特化したWeb系エンジニアを「Webプログラマー」と呼び分けます。実装する領域によって「フロントエンドエンジニア」「バックエンドエンジニア」という呼び分けも一般的です。また「PM(プロジェクトマネージャー)」と「PL(プロジェクトリーダー)」はマネジメント領域が異なります。

特定の職種・職位に求められるテクニカルスキルや、プログラミング関連の基礎知識を押さえておくことも必要です。

エンジニアが持つキャリア観

エンジニアならではのキャリア観や転職理由を把握しましょう。例えば「PMなどマネジメント職にステップアップしたい」というマネジメント志向のエンジニアもいれば、「現場で手を動かし続けたい」という技術志向のエンジニアもいます。

またエンジニアのよくある転職理由は、「適正に評価されない」「人間関係が苦しい」「スキルアップ・キャリアアップできない」といったものです。エンジニアを取り巻く環境を理解し、刺さるアプローチを検討しましょう。

 

エンジニアが企業に対して求めること

ノートPCを片手に遠くを見つめる男性と、ネットワーク技術のイメージ

人事担当者には、エンジニアが企業に何を求めているかを理解することも求められます。主な要件は以下の4点です。

  • 適切な評価
  • スキルに見合った給与
  • 希望に合致する開発言語・開発案件
  • スキルアップできる環境

求人を打つ際に重視したい、これら4点について詳しく解説します。

適切な評価

ITエンジニアは就職・転職活動の際、適正評価ができる企業かどうかを重視しています。エンジニアは特殊な技能を用いて業務遂行する技術職であるため、努力や実力が適正に評価されるだと考えます。

そのため求人情報で人手が足りないという募集理由を前面に押し出すと、駒のように扱われるという印象を与えかねません。実績に基づく昇給やインセンティブなど、人事考課についての具体的な情報も伝えることが重要です。

スキルに見合った給与

就職・転職活動をするITエンジニアにとって、要求されるスキルに見合った給与かどうかもポイントです。習得難度が高い先端技術を身に付けた人材や、希少性の高いスキルセットを持った人材は、多くの企業が高い給与を提示して獲得に努めます。

求めるエンジニアの市場価値を認識せず、不当に低い給与を提示すると、優秀な人材の確保は叶いません。求める人物像の市場価値を把握し、相場と同等以上の給与を提示することが重要です。

希望する開発言語・開発案件

ITエンジニアは、開発言語やプロジェクトが希望と合致するかも大切にしています。ITエンジニアといってもひとくくりにできないほど、技術領域は広いです。

そのため「スキル・経験を生かして〇〇を開発したい」という希望を持つことも一般的です。培ったスキルや経験を生かして活躍できるというイメージを持てるように、開発言語やプロジェクトの内容を具体的に記述することが求められます。

スキルアップできる環境

ITエンジニアはスキルアップできる環境が整っているかどうかも重視します。IT領域は日々新しい技術が生まれ、数年前の最新技術が通用しなくなるケースも多いです。エンジニアがスキルアップできない環境で働き続けることは、市場価値が下がり、いつか職を失うのではないかといった死活問題ともいえる悩みを生みます。

エンジニアにとって、「業務の中で新しい技術に触れられること」「スキルアップ支援による学びの機会の多さ」は重要です。市場価値の高い言語を使う機会があることや先端領域の開発プロジェクトがあることなど、チャレンジできる環境もアピールできるとよいでしょう。

 

エンジニアを採用する流れ

デスクを囲んで朗らかにミーティングする4人の男女

ITエンジニアの採用計画を立てる際、まずはペルソナ(具体的な人物像)を設計することが重要です。ペルソナに基づいて求人の雛形を作成し、採用単価や採用手法もペルソナを前提に決定します。面接時には採用後のミスマッチ防止を重視しましょう。ここでは、エンジニア採用の流れを5つのステップで詳しく解説します。

1.ペルソナを設定する

まずどのようなエンジニアを採用するかを明確にするために、「ペルソナ」を設計します。エンジニアのペルソナ設計には以下のような要素を考慮します。

  • 現状のスキルセット・レベルと実績
  • 求める待遇(主に給与面)
  • 生かしたい知識・スキル
  • 携わりたいプロジェクト
  • 志向性(技術志向かマネジメント志向か)
  • キャリア観(エンジニアとしてのゴール設定)
  • 獲得したい知識・スキル
  • 学習意欲の程度
  • 余暇時間の使い方

ペルソナにとって刺さるアプローチを考えることは、エンジニア採用を成功に導く第一歩です。

2.求人の雛形を作成する

求める人物像と照らし合わせながら求人の雛形を作成します。ペルソナが比較検討したい要素を想定し、以下のような情報を違和感なく伝えましょう。

  • 勤務地
  • 雇用形態
  • 採用予定人数
  • 想定年収
  • 募集する職種・職位
  • 携わるプロジェクトや具体的な仕事内容
  • 開発環境(使用する言語・フレームワーク・ツールなど)
  • 開発スタイル(ウォーターフォール型かアジャイル型か)
  • 所属予定チームの構成
  • 必須の知識・スキル・経験
  • 歓迎する知識・スキル・経験
  • 目指せるキャリアパス
  • 休日や想定される残業時間
  • 有給の取りやすさ
  • テレワーク可/不可や運用実績
  • フレックスタイム制の有無と運用実績
  • 福利厚生(研修制度、資格取得補助、家賃補助など)
  • 募集の背景
  • 企業理念や社会貢献の程度

3.採用単価を決定する

求める経験やスキル、状況に応じた採用単価を決定します。エンジニアは市場価値が高いほど競争率も高いため、ペルソナによっては採用単価を高く見積もる必要があるでしょう。緊急性が高い場合、より多くの採用手段を取ることで採用単価が高くなる場合もあります。

ミスマッチによる1人当たりのコストは数百万円に上る場合もあるため、予算と実現可能な採用計画の兼ね合いを考えることも重要です。

4.採用手法を決定する

ペルソナとして挙げた人材を獲得しやすい採用手法を選択します。主な採用手法は以下の通りです。

  • 求人サイト:掲載課金型または成功報酬型のメディアに、求人情報を掲載する。エンジニアが自発的に求人情報を検索・比較
  • 転職エージェント:企業とエンジニアのマッチングを、業界知識の豊富なエージェントが仲介。基本的に成功報酬型
  • ダイレクトリクルーティング:SNSなどを通じて、人事担当者がエンジニアを直接スカウトする
  • リファラル採用:社員から元同僚や友人などの紹介・推薦を受け、人事担当者がコンタクトを取る

5.面接を実施する

エンジニアとコンタクトが取れたら、面接を実施します。面接時にはヒアリングや条件の擦り合わせを十分に行い、採用後のミスマッチを防止しましょう。

スキルや実績は紙面上では判断しにくいため、実装内容を直接確認することがおすすめです。また、エンジニアに用意できるキャリアパスは事業内容や社内体制に制限されます。キャリアビジョンはしっかりとヒアリングしておきましょう。

 

エンジニアの採用を成功させる対策

デスクトップPCの画面を指差し、若い男女を指導する男性

エンジニア採用を成功させるには、現場社員の協力を仰ぐことが重要です。日程調整や質問の受け答えなどはスピーディーにし、他社と差をつけましょう。即戦力人材の採用が難しい場合、ポテンシャル採用を活用し、入社後の育成体制を整えることも大切です。

現場の協力を仰ぐ

人事担当者と現場社員が考える「求めるエンジニア」に齟齬のないよう、事前に選考基準について擦り合わせることは重要です。例えば、求人情報に掲載する専門的な内容を現場社員に書いてもらったり、早い段階で面接に同席してもらったりします。

採用後のミスマッチ防止という意味では、「スクラム採用」も効果的です。スクラム採用とは、採用プロセスに現場社員が関与することです。エンジニアの肌感覚やテクニカルスキルは人事担当者には分からない部分も多いため、現場社員の協力を仰ぎましょう。

スピーディーな対応を徹底する

選考辞退を防ぐために、日程調整や連絡はスピーディーに対応することがポイントです。優秀なエンジニアは、多数の企業から同時にアプローチを受けています。

「エンジニアの都合を優先して素早く柔軟に日程調整をする」「質問にはできる限り早く詳細に答える」といった対応は、他社との差を出せる部分です。エンジニアへの理解を示すという意味でも、現場社員に協力を仰ぐことは重要といえます。選考過程のコミュニケーションの中で、エンジニアを大切に扱う企業という印象を持ってもらえるように取り組みが必要です。

ポテンシャル枠を検討する

エンジニアを1人でも多く確保したいのであれば、ポテンシャル枠での採用も検討しましょう。実務経験がなくとも、独学でプログラミングを学んでいる人は多いです。

学習意欲や論理的思考能力・問題解決能力など、エンジニア適性が高い人材であれば、入社後の育成次第で活躍が期待できます。他社の文化に染まっていないことで、ポテンシャル採用のほうがミスマッチを防ぎやすい場合もあります。

人材育成の体制を整える

さまざまな業界でエンジニアの獲得競争が過熱する中、優秀なエンジニアの採用は難しくなっています。即戦力人材を採用するというスタンスから、ポテンシャル採用をして入社後に育成するという発想に切り替えることも重要です。

未経験者向けの基礎レベルの教育や、専門性の高いテクニカルスキルの習得は、研修会社による集合研修やeラーニングを活用すると効率的に習得できます。現場でしか身に付かない技術については、OJTによる実践の中で学べるように、社内の育成環境を整えましょう。先輩エンジニアや上司を指導役とすることで、現場になじみやすくする効果も期待できます。

 

まとめ

オフィス内で中年男性と握手する青年と、祝福する5人の男女

エンジニア採用の難しさは多くの人事担当者を悩ませています。採用活動に当たって重要となるのは、エンジニア特有のキャリア観や転職理由を理解することです。理解が難しいエンジニアの肌感覚や専門知識については、現場社員の協力を仰ぎましょう。

また即戦力人材の採用が難しいなら、ポテンシャル採用に切り替えることもポイントです。入社後に適切な育成をすれば、経験者よりスタートがやや遅いだけで、第一線で活躍する人材への成長が叶います。社内に教育体制が整っていない場合、新人エンジニア研修に強みのある研修会社を活用しましょう。

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