企業が新卒採用をするメリット・デメリットは?成功のポイントも解説

新卒採用は知名度の高い大企業だけでなく、これまで中途採用しか実施してこなかった中小企業にも利点があります。新卒採用のメリット・デメリットや実施に向いている企業の特徴、新卒人材の意識の変化に対応し、人材戦略を成功に導くポイントを解説します。

新卒採用は知名度の高い大企業だけでなく、これまで中途採用しか実施してこなかった中小企業にも利点があります。新卒採用にはどのような特徴があり、中途採用と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのかを知ることで、人材戦略の方向性を具体的に検討できます。

新卒人材の意識の変化に対応し、内定後・入社後のきめ細やかなフォローも重視して、採用計画・人材戦略を成功に導きましょう。この記事では、新卒採用のメリット・デメリットや適した企業の特徴、成功のポイントをご紹介します。

目次

 

企業が新卒採用を行うメリット

並んで着座し前を見据えて笑顔を作る4人男女

広義の新卒採用には高卒人材の採用も含めますが、一般的には大学など高等教育機関の学習過程を修了した人材の採用を指します。まずは企業がなぜ中途採用ではなく新卒採用を行うのか、その理由となるメリットを見ていきましょう。

企業の知名度向上につながる

新卒採用のために企業PRを行うことで、企業の知名度向上につながるのはメリットです。新卒人材は自発的に情報収集・企業研究を行うため、「このような企業もあるのか」と自社の商材・取り組みや価値を知ってもらえるきっかけになるでしょう。

これまで新卒採用に着手したことがなく、知名度の低い中小企業も、将来を見据えて早い段階で存在を知ってもらうという効果も期待できます。

中小企業でも人材を獲得しやすい

大卒学生の民間企業への就職希望者数は例年約45万人で、新卒採用市場は規模が大きく、知名度の低い中小企業でも人材を獲得しやすい状況です。もちろん知名度が高く待遇の良い大手企業に人気は集中しますが、各社の採用人数には限りがあります。

多くの新卒人材は内定をもらうまで諦めずに就職活動を続けるため、アピール次第では知名度に関わらず入社希望者が集まり、ポテンシャルの高い人材を獲得する機会も得られるでしょう。

企業文化の継承が容易になる

新卒人材は中途人材に比べ、企業文化の継承が容易です。新卒人材は社会人・正社員としての経験がなく、企業活動の実態を体感したこともありません。

中途人材だと過去の経験から「企業はこうあるべきもの」という固定観念があり、自社の企業文化になじみにくく、慣れるまで時間がかかる場合もあります。新卒人材なら自社独自の理念や文化をスムーズに受け入れやすく、価値観を共有して成長していく基盤を構築しやすい傾向です。

経営幹部のための育成ができる

中途人材よりも新卒人材は経営幹部として育成しやすい場合が多いです。マインドやビジョンが固定化されていない新卒人材は、中途人材に比べて企業への忠誠心や愛着心を醸成しやすく、職種や勤務地の制約やこだわりもあまり強くありません。

また経営幹部としての知識・スキル・マインドセットも吸収しやすいため、入社時点からさまざまな部署・支社で経験を積むなど、幹部候補生として長期的スパンの育成計画を立てやすいです。

年齢構成の適正化が図れる

新卒採用は年齢構成の適正化という意味でもメリットがあります。人材供給が中途採用に偏ると、若手人材の入社機会が少ないことで、社員の平均年齢が高くなります。

定年退職までの期間の短い社員が中心になると、培ったノウハウや人脈が急激に失われる恐れがあるなど、経営体力の低下に懸念があります。若手人材を定期的に迎え入れることで年齢構成が適正化され、ノウハウや人脈を引き継ぎやすくなり、安定した企業経営につながります。

研修を一括で行える

新卒採用は新入社員に対して一斉に研修を行えることも利点です。中途採用は不定期で実施するため、自社の企業文化や業務スタイルになじませるための研修を都度実施します。中途人材の供給が必要な時期は、繁忙期など現場の協力を得られにくい時期と被りやすく、研修計画が予定通り進行しない場合もあるでしょう。

新卒採用なら複数の新入社員に対して一括で知識・スキル・マインドセットを学ぶ場を作れます。入社時期も固定的であるため年間スケジュールを立てやすく、現場の混乱を抑えた効率的な研修を実現しやすいです。

採用コストを抑えられる

新卒採用は中途採用に比べて採用コストを抑えやすいです。中途人材に対しては基本的に即戦力であることを期待するため、自社が求める知識・スキル・経験を持つ人材とのマッチングは難しく、必要な人員数に対するコストがかさみます。特に知名度の低い企業は多大な費用が必要でしょう。

新卒採用は基本的にポテンシャルを重視するため、ターゲットを絞り込まず大きな採用マーケットに幅広くアピールできます。複数人の一括採用も考えやすく、採用単価を抑えやすくなります。

社内の活性化になる

新卒採用は社内の活性化につながることもメリットです。関係性が固定化された現場では、形式化された業務スタイルを打破して新しいことに挑戦しようという雰囲気になりづらいことが多いです。

しかし、フレッシュな若手人材を投入することで現場の人間関係に変化が生まれ、新しい視点で業務に取り組む雰囲気も生まれます。新人教育を進める中で、これまで明文化されていないルールを見直すことになるなど、社内活性化にも期待できます。

 

新卒採用はメリットだけじゃない?注意すべきデメリット

うつむいて悩ましげな表情を浮かべる女性

新卒採用は知名度の高い大企業だけでなく、これまで中途採用しか実施してこなかった中小企業にもメリットのある採用方法です。フレッシュな人材の供給は、経営戦略の一環としてさまざまな課題解決に役立つ一方、いくつかのデメリット・注意点もあります。ここでは、新卒採用を実施する際に注意したい4つのポイントを見ていきましょう。

希望する人数を確保できるとは限らない

新卒採用の注意点としてまず意識したいのは、希望する人数を確保できるとは限らないことです。例えば景気が悪い年は安定志向の強い新卒人材の増加により、知名度の高い大企業に応募が集中しやすくなるため、中小企業は不利になります。また天災などで移動が制限されたり、風評被害で応募を敬遠されたりするなど、採用計画に支障が生じる場合もあるでしょう。

入社するまでの期間が長い

新卒人材に対するアプローチを開始した時点で、ターゲットはまだ学生です。新卒人材は学業と並行して多数の企業に応募し、複数回の選考を経て内定を受けます。入社のタイミングは基本的に4月ですが、新卒採用のプロセスは1年ほど前から始まるのが一般的です。乗り遅れないためにも早めに採用活動を開始しましょう。

必然的に選考期間は長期化するため、いますぐにでも人材供給したいというニーズに対応しにくく、また人事部門が業務負荷に耐えられることも必要です。

即戦力にはならないことが多い

新卒人材は長期的な育成に向いている反面、基本的に即戦力とはなりません。ポテンシャルに優れた人材であっても、実務経験以前に正社員として働いた経験自体がないため、ビジネスマナーや社会人としての基礎的な心構えも未熟な場合が多いです。

業務内容にもよりますが、新卒人材が現場の業務に対応できるようになるまで、半年から1年程度の教育期間が必要になることが多いです。戦力化できるまでに時間やコストがかかることは念頭に置いておきましょう。

早期離職のリスクがある

新卒人材は中途採用に比べ、早期離職のリスクが高いことにも注意が必要です。厚生労働省の発表によると、大卒新入社員の約3割は3年以内に離職するのが通例のようです。新卒人材は社会人・正社員としての就労経験がないため、選考時に思い描いていたビジョンと現実のギャップに悩み、早期離職を選択することも珍しくありません。

転職を前提として1社目を考える新卒人材も増えていますが、社内体制が問題となる場合もあります。貴重な人材を逃さないためには、新卒人材の悩みに寄り添ったフォローが重要です。

 

新卒採用とは異なる!中途採用のメリット・デメリットは?

テーブルを挟んで若手に笑顔で語りかける中年男性

新卒採用を実施していない企業は、何らかの方法で中途採用を実施し、自社の中核となる社員を確保することが一般的です。ここでは、改めて新卒採用と中途採用にはどのような違いがあるのかを確かめるために、中途採用のメリット・デメリットを解説します。

中途採用をするメリット

ポテンシャルを重視する新卒人材とは異なり、中途採用は自社がいままさに求める人材の条件を設定して求人を出します。希望するスキルセットを持った即戦力人材を獲得できれば、研修にかかる手間やコストを抑え、効率的な人材供給が可能です。人材によっては、これまで自社になかった人脈の活用やイノベーション創出も期待できます。またマッチングさえうまくいけば、新卒採用より選考がスピーディです。

中途採用をするデメリット

中途人材は他社で社会人経験を蓄積しているため、自社の企業文化や風土になじみにくく、能力はあっても現場に慣れるまで時間がかかる場合もあります。期待したパフォーマンスを発揮せず、「これなら新卒人材を一から育成したほうがよかった」となる場合もあるでしょう。

また経験豊富でビジョンが明確な人材であるほど、ミスマッチに気付いた際の見切りが早く、早期退職を選択する恐れもあります。

 

新卒採用に適している企業の特徴は?

新卒採用は毎年決まったスケジュールで計画的に実施するもので、スポット的に必要な人材を供給する中途採用とは性質が異なります。この意味で新卒採用は、入社時点の社員個別の実力よりも全社的な影響を重視する、以下のような企業に向いているでしょう。

  • 企業文化の浸透を重視する企業
  • 社内の成長意欲を高めたい企業
  • 現場の停滞感を解消したい企業
  • 幹部候補生を一から育成したい企業
  • 年齢構成を適正化し、経営体力を高めたい企業

 

新卒採用を成功させるためのポイント

ビルが立ち並ぶ風景をバックに、ノートPCとセカンドバッグを抱えて斜め上を見据える若い男性

多数の企業が参入する新卒採用市場では、綿密な計画が求められます。新卒人材の個人主義の高まりにより、転職や自己実現に関する意識の変化も生まれているため、内定後や入社後のきめ細やかなサポートも重要です。ここでは、新卒採用を成功させるための5つのポイントを見ていきましょう。

採用する人物像や人数を明確にする

新卒採用を実施する際は、まず採用目標となる人物像や人数を決めます。即戦力を求めないポテンシャル採用だとしても、自社に合った性質やビジョンを持つ新卒人材をターゲットに設定し、ミスマッチ及び早期退職を防ぐことは重要です。

現場の要求と経営戦略をすり合わせ、長期的な視点で採用ターゲットの人物像や採用目標人数を明確化し、どのような人材を何人採用するかという達成目標を設定しましょう。

採用スケジュールや手段を決める

採用する人物像や人数を明確にしたら、スケジュールや手段を決めます。新卒採用の選考課程は1年がかりになるため、会社説明会や選考・面接など、年次単位でスケジュールを設定することが必要です。採用市場の動向を分析し、他社に遅れないスケジュールを設定しましょう。

採用手法は従来の就活サイトだけでなく、SNSやダイレクトリクルーティングなど、採用ターゲットや目標人数に合ったものを検討することが大切です。

社内体制を整備する

採用のスケジュールや手段を決定したら、選考を円滑に進めるための社内体制を整えます。新卒人材に自社の魅力をより分かりやすく伝え、入社後のミスマッチや早期退職を防止するためには、選考課程でOB訪問・工場などの現場見学・インターンシップなどを実施しましょう。

選考は人事部門が主導するとしても、関係各所と連携できるよう、協力体制を整備することが求められます。また面接官として採用に関わる現場リーダーや役員と新卒採用の必要性や目標をすり合わせ、採用基準の共有や面接手法の統一を図ることも重要です。

内定者のフォローを行う

希望する人材が選考を通過し、内定を出しても安心はできません。新型コロナウイルス感染症の影響もあって大卒人材は売り手市場となっており、内定辞退率は6割にも達しているのが現状です。そこで内定後のフォローの重要性が増しています。

メール・SNSによる質疑応答や現場社員・経営層を交えた懇親会などを通じ、内定者の疑問や不安を解消するとともに期待感や帰属意識を高め、「この企業で働きたい」という意識を醸成するきめ細やかなフォローを実施しましょう。

やりがいや成長の機会を設ける

新卒人材に向けた入社後のフォローとして、やりがいや成長の機会を設けることも重要です。新卒人材が企業選びで重視する要素は、従来は知名度や企業規模などと考えられてきましたが、現在は仕事のやりがいや自己の成長を求める傾向が強くなっています。

「新卒人材から選ばれる企業」を目指し、自発的に知識・スキルを学びやすい研修制度、経験が浅いうちからのチャレンジをサポートする評価・異動制度などを整備することもポイントです。

 

まとめ

オフィスの廊下でノートPCを抱えてカメラ目線で微笑む3人の男女

新卒採用は中小企業でも効率的に人材獲得する手段となり得ます。経営幹部の育成や年齢構成の適正化など、中途採用では難しい課題解決に効果を発揮するのもポイントですが、ミスマッチや内定辞退・早期退職を防ぐには、内定後や入社後のフォローが重要です。

研修制度を含めた採用計画・人材戦略に自社リソースが足りない場合、内定者研修や新入社員研修に強みのある研修会社が頼りになります。マンツーマンサポートなどきめ細やかなフォローができる研修会社をパートナーとすることも検討し、新卒採用を成功に導きましょう。

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