組織開発とは?人材開発との違いや手順・フレームワークと事例を紹介

DX推進や多様な人材の確保などを進める中で、組織目標と個人目標にずれが生じる場合もあります。個人のポテンシャルを発揮するためにも、組織開発による企業全体の健全化やパフォーマンス向上は重要です。組織開発の特徴や手順、フレームワークを解説します。

DX推進や多様な人材の確保などを進める中で、組織目標と個人目標にずれが生じる場合もあります。個人のポテンシャルを発揮するためにも、組織開発による企業全体の健全化やパフォーマンス向上は重要です。

組織開発とはどのような取り組みか、またどのように推進すべきかを詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、組織開発の特徴や手順、活用できるフレームワークについてご紹介します。

目次

 

組織開発とは?

ビジネスパーソンのシンボルを描いた複数の木製ピースによる、組織内ネットワークのイメージ

市場の変化や組織構造の複雑化などを受け、組織開発に取り組む企業が増えています。人材開発とは異なる概念ですが、組織開発の目的によっては人材開発とセットで推進することが重要です。まずは組織開発とは何かを詳しく解説します。

組織開発とは何?

組織開発とは、組織で働くメンバー間の関係性を改善し、組織全体としての健全性やパフォーマンスを高めるための取り組み及びサポートです。チーム単位や部署単位または企業全体で組織を一体的に捉え、メンバー間の関係性・相互作用に着目したアプローチを実施します。

各メンバーの個性や心理が大きく関わるため、行動科学の知見に立脚したフレームワークを用い、当事者自身で解決策を考え実行していくことが求められる活動です。

人材開発との違い

人材開発とは、組織を構成する人材の能力や可能性にフォーカスし、パフォーマンスの向上やポテンシャルの発揮につなげるための取り組みです。組織としての成長を促す組織開発に対し、人材開発は個人としての成長を促します。

ただし、人材が個別に成長しても、他のメンバーと協調して能力を十分に発揮できるとは限りません。そこで、個人の成長を組織貢献につなげるためにも組織開発が重要になります。

組織開発が注目されている背景

人材不足やコロナ禍、デジタル技術の進展を受け、企業の組織構造は変化しやすい状況にあります。デジタル部門の立ち上げやテレワークの導入、多様な人材の雇用などに着手する企業は多いでしょう。組織構造が変わると、組織内での意識の統一やメンバー間の協調が課題になります。

帰属意識の希薄化や価値観の多様化といった変化もあるため、組織の健全化やパフォーマンス向上を求めて組織開発を重視する企業が増えている状況です。

 

組織開発によって得られる成果

組織開発を推進すると、チーム・人事部門・個人は以下のような効果を得ることが期待できます。

【チームが得られる成果例】

  • チームに一体感が生まれ、全体のパフォーマンスを向上できる
  • 業務負荷を可視化し、平準化・分散化ができる
  • チーム内で共有するメンタルモデルを確立できる

【人事部門が得られる成果例】

  • 組織に企業理念・ミッション・ビジョンなどの理解を浸透できる
  • メンタル面に悩みを抱える社員を減らせる
  • 退職防止施策を促進するとともに、採用力を強化できる

【個人が得られる成果例】

  • 各メンバーがチームワークを意識して主体性を発揮できる
  • 管理職のマネジメント力が向上する
  • エンゲージメントや職務を通じた幸福感を向上できる

 

組織開発を行う5つのステップ

デスクトップPCのディスプレイに向かって相談する3人のビジネスパーソンと、データ分析のイメージ

組織開発のアプローチは企業によって異なりますが、基本となる実施プロセスがあります。まずは目的を明確化し、現状把握や課題設定が必要です。組織開発は社員の心理面に影響を与えるため、試験的な運用から始めてみましょう。

ここでは、組織開発の実施の流れを5つのステップに分けて解説します。

1.組織の目的を明確化する

まずは自社という組織が何を目指しているのかといった目的を明確にしましょう。組織によってメンバー構成や抱える課題は千差万別です。

組織開発は単発的な施策ではなく、長期的な取り組みになります。また組織開発の取り組みは手段であり、実施すること自体が目的ではありません。自社が求める組織のあり方を十分に分析・検討し、組織が目指すべきゴールを明確化することが大切です。

2.組織の現状を把握し課題を設定する

組織開発のゴールを明確化したら、アンケートやヒアリングを実施し、自社の現状を把握して課題を設定します。組織内の関係性はひと目では分かりにくいため、各メンバーの関係性を詳細にくみ取り、言いにくいことも引き出すことが大切です。

組織単位だけでなく、個人の課題も含めて考えることがポイントです。個人の課題が見つかっても組織の観点からの課題に置き換え、各メンバーが活躍しやすいように、関係性や相互作用の改善策(アクションプラン)を検討しましょう。

3.試験的なアプローチをする

課題を設定しアクションプランを企画したら、試験的なアプローチを実施しましょう。いきなり大きな変革を求めると反発が大きく、目的とは裏腹に組織内の混乱を招く恐れがあります。

まずはチーム単位など小規模でアクションプランの方向性が正しいのかを確かめ、全社的に適用した際のメリット・デメリットを把握することが大切です。

4.効果を検証してフィードバックをする

試験的なアプローチを実施したら、組織内の変化や仮説通り成功したポイントなど、結果・効果を検証します。分析結果はアクションプランの関係者の他、各部署にフィードバックしましょう。

最終的には全社でアクションプランを実行するため、この段階でアプローチの実効性や未来のあるべき組織像について、全社的に考える機会を設けます。

5.成功した施策を共有する

実行したアクションプランの中で成功した施策があれば、情報共有するとともに全社展開していくのがポイントです。試験運用で得た教訓を踏まえて、マニュアルや帳票を整備し、組織開発の具体的な実施方法を標準化しましょう。

全社展開後も適宜現場にフィードバックし、施策の改善や関係者のモチベーション向上につなげることが大切です。

 

組織開発の施策に活用できる7つのフレームワーク

3つの歯車を中心に配置された、ビジネス要素のシンボルを描いた木製ピース

組織開発を推進する上で、目標設定やコミュニケーションの方法に悩むこともあるでしょう。ここでは7つの重要なフレームワークに触れます。それぞれの特徴を詳しく紹介しますので、状況に合わせてフレームワークを選択し活用してください。

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリューとは、組織の存続や成長の根拠となる、企業理念を構成する3つの要素です。「Mission」「Vision」「Value」の頭文字をとって、MVVとも呼ばれます。

  • M(ミッション):企業が社会に対して果たすべき使命や存在意義
  • V (ビジョン):企業の理想像や中長期的な目標
  • V(バリュー):ミッションやビジョンを達成するための、企業の価値観や行動指針

組織のあるべき姿ややるべきことを企業理念のレベルで捉え、関係者の理解浸透を求めることで、組織開発の方向性を明確化・統一します。

コーチング

コーチングとは、メンバー自身の気付きを重視し、目標達成をサポートする指導方法です。傾聴・観察・質問・提案などのアプローチにより、答えを「与える」のではなく、指導対象者の中から「引き出す」または「作り出す」ことを目的とします。

ティーチングとは異なり、「解決策は指導対象者自身の中にある」ということが前提です。コーチングにより、自主的に課題解決に取り組むことや、新しい価値観に到達するモチベーションを喚起します。

フューチャーサーチ

フューチャーサーチとは、話し合いによって望ましい未来を探究し、共創を生み出すミーティング手法です。解決が困難なテーマに関わるステークホルダーが一堂に会し、過去と現在についての情報を共有した上で、全員が求める未来を確認します。

これにより利害の異なる関係者間で協力関係を生み出し、参加者が各自の自己責任においてアクションプランを作成する手法です。数日間のミーティング開催が必要になりますが、社員だけでなく取引先や地域住民なども参加することで、MVVと関連付けたアクションプランを作成しやすくなります。

ワールドカフェ

ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気で、小規模グループでの話し合いを繰り返すミーティング手法です。参加者は4人~5人程度に分かれて自由に対話し、他のグループとメンバーをシャッフルして対話を続け、参加者全員の意見や知識を集めます。

普段は口にしない問題意識や人間関係の悩みを自然に引き出しやすく、組織やメンバーの現状とボトルネックを把握することに効果的です。

OKR

OKRは「Objectives and Key Results」の略称で、目標管理手法の一種です。「達成目標(Objectives)」と、目標の達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定し、組織内で共有します。

OKRを部署・チーム・個人という階層ごとに設定し、目標設定・進捗確認・評価という一連の流れを高頻度に行い、企業全体で同じ目標に向かって課題に取り組むためのフレームワークです。

以下はOKRを設定するメリットです。

  • 組織目標をメンバーに明確に伝えられる
  • チーム間やメンバー間の意思疎通を図りやすくなる
  • タスクの優先順位が明確になる

マッキンゼーの7S

マッキンゼーの7Sとは、企業戦略を実現させるための7つの経営資源について、相互関係を表したフレームワークです。7Sは「ハードの3S」と「ソフトの4S」からなります。これらの要素の現状とバランスを分析し、理想的な組織に向けたマネジメントを検討することが大切です。

【ハードの3S】

  • 戦略(Strategy)
  • 組織構造(Structure)
  • システム(System)

【ソフトの4S】

  • 共通の価値観(Shared Value)
  • 人材(Staff)
  • 組織風土(Style)
  • 能力(Skill)

AI(Appreciative Inquiry)

AI(Appreciative Inquiry/アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、価値の探究により課題解決をする、ポジティブなアプローチです。探究や質問によって成功例や成功要因といった価値を見出し、ポジティブに解決するプロセスを通じて、組織開発の実現を目指します。

組織やメンバーの悪いところを探し否定するのではなく、良いところを探し肯定することで、ポジティブにチャレンジするマインドや姿勢を喚起できることがポイントです。

 

組織開発を実施した成功事例

エンジニアや営業パーソンによる3つのグループと、3人のビジネスパーソンの形に切り抜いた都市のイメージ

組織開発の適切なアプローチは、組織の目標・課題・構造などによって変わります。企業によって千差万別であるため、自社にとってどのようなアプローチが必要か分かりにくいかもしれません。ここでは、組織開発を実施した成功事例を紹介します。自社で組織開発を推進するイメージを持ちましょう。

【事例1】ヤフー株式会社

ヤフー株式会社はインターネット黎明期から事業拡大を続けてきましたが、組織が大きくなるにつれ、非効率な組織体制が課題として浮上しました。そこで定期的に上司と部下が対話する1on1ミーティング、1on1ミーティングに参加する上司に向けたコーチング研修など、さまざまな施策を組み合わせて組織開発を実施しました。

これらのアプローチが奏功し、エンゲージメントスコアが上昇するとともに、現場から「組織が円滑に動くようになった」との声も聞かれるようになりました。

【事例2】株式会社メルカリ

株式会社メルカリは社員数が50人~100人という初期のタイミングから、OKRを導入して組織開発を推進してきました。企業の成長に伴い社員数が多くなるほど、企業とメンバーの間で目標にずれが生じると考えたからです。

メルカリはOKRを運用するに当たり、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリューを重視しています。定期的にOKRの見直しと評価を行うことで、新入社員もMVVを共有でき、組織の健全性とパフォーマンス向上の両立を実現している好例です。

【事例3】株式会社ニトリホールディングス

株式会社ニトリホールディングスは人材開発と組織開発を総合的に推進しています。組織に起こる諸問題は「戦略」「技術・構造」「人材」「ヒューマンプロセス」の4つに分かれると捉え、それぞれの領域に対して効果的なアプローチを実施しているのが特徴です。

また社員のエンプロイージャーニー(社員の企業内における旅)を年2回調査することで個人の要望を把握し、eラーニングによる学習成果も精査しています。これらの情報を人材開発・組織開発の両方に活用し、配置転換・戦略人事・評価の実効性を高める体制です。

【事例4】コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社はDX戦略を推進し、リスキリングによる企業全体での業務効率化に取り組んでいます。ITエンジニアのリスキリングは順調な一方、人員数の多い間接部門の研修・自己啓発に課題を抱えていました。

そこでテックアカデミーの「データ分析研修」を社員の自己啓発メニューとして追加し、データ分析ツールや業務自動化ツールに習熟できる環境を整えました。人事部門が率先して受講するなどし、社員は健全な危機感を持ちつつ、多様なデータを積極的に有効活用していく必要性を実感しているようです。

関連記事▶テックアカデミーIT研修導入事例 – コニカミノルタ株式会社様

テックアカデミーIT研修導入事例 – コニカミノルタ株式会社様

 

組織開発をするなら研修が効果的!

組織開発を推進する上では、個人のスキルやマインドを組織目標に合致するものへ変容させていく取り組みも求められます。人材開発に効果的なのは研修です。MVVの理解浸透などは社内研修が向いているでしょう。DX推進に伴うリスキリングなどの場合、外部研修が向いています。

目的に合わせて社内研修・外部研修を使い分け、人材開発と組織開発を両立させましょう。

 

まとめ

明るいオフィス内で、カメラ目線でほほ笑む7人のビジネスパーソンによるチーム

企業の規模拡大や組織構造の複雑化に伴い、企業と個人の目標ずれが生じやすくなります。企業のミッションを達成するには、企業全体で同じ目標達成を目指すための組織開発が重要です。

組織開発を進める中で、DX推進などに伴う人材開発が求められる場合もあります。自社リソースでの対応が難しい場合、研修会社のまとまった研修プログラムを利用することも検討しましょう。

 

テックアカデミーIT研修のご紹介

テックアカデミーIT研修

テックアカデミー(TechAcademy)は、日本e-Learning大賞プログラミング教育特別部門賞を受賞している、オンラインIT研修です。
技術スキルのみ学ぶのではなく、「主体的に考える力」「質問力」と言った学びに向かう姿勢の獲得を大切にしており、「未経験者でも自走できるエンジニアへ」成長させることを目指します。

 

研修でこんなお悩みはありませんか?

人材育成のご担当者様にお聞きすると、

  • 研修設計時に関するお悩み
  • 研修運営中に関するお悩み
  • 研修後の振り返りに関するお悩み

上記のような悩みを抱えている企業様が多くいらっしゃいます。
これらの人材育成に関するお悩みを、テックアカデミーは解決いたします。

離脱者を出さない!マンツーマンによる徹底サポート

受講生一人一人にメンターが付き、その方の理解度に合わせたサポートを行います。
集合型研修では拾いきれない、未経験者が学習時に感じる「不安」や「挫折」を確実に解消いたします。
進捗の速い受講生には、配属後の活躍を見据えた指導も行います。

研修効果の可視化が難しく、配属先と振り返りができない

研修を実施した結果、スキル・性格面がどのように成長したのか?振り返りに必要な情報を、受講評価レポートと、スキルチェックツールで一人一人を可視化いたします。
受講中の進捗や、担当メンターとのメンタリング内容を確認できるマネジメントシステムもございますので、研修中の様子もモニタリングすることが可能です。

 

配属先が求めるエンジニアを育てるなら、テックアカデミー

テックアカデミーではこれまで900社以上でエンジニア・IT人材の育成をサポートして参りました。
資料請求はもちろん、IT人材の育成に関するお悩みの相談会も行っておりますので、まずはお気軽にホームページをご覧くださいませ。

テックアカデミーIT研修
お電話でのお問い合わせ 03-6822-9093 (平日10:00~18:00)

WEEKLY RANKING