IT人材育成を企業が行うメリットや事例は?5つの課題と解決策
IT人材の育成は、DX戦略の推進や企業の中長期的な成長にとって重要です。しかし、デジタル技術を活用できる即戦力人材を採用市場から確保するのは容易ではありません。この記事では、IT人材育成のメリットや課題、解決策について解説します。
デジタル化やDX推進はさまざまな業界で喫緊の課題です。しかし、デジタル技術を活用できる即戦力人材を採用市場から確保するのは容易ではありません。
IT人材の育成は、DX戦略の推進や企業の中長期的な成長にとって重要です。既存人材を適切に育成することで、デジタル化やDX推進の土壌を形成できます。この記事では、IT人材育成のメリットや課題、解決策について解説します。
目次
- IT人材が求められる理由・背景
- 企業がIT人材を獲得する方法
- 企業がIT人材の育成をするメリットとデメリット
- 企業がIT人材を育成する前に知っておきたいアウトプット別の必要スキル
- IT人材育成が成功している企業事例5選
- 企業がIT人材を育成する手法
- 企業がIT人材を育成するステップ
- 企業のIT人材育成で直面しやすい問題点とその解決策
- まとめ
IT人材が求められる理由・背景
DX推進のニーズはさまざまな業界で高まっていますが、依然として日本のデジタル競争力は低迷を続けています。IT人材不足は多くの企業にとって課題です。IT人材不足を解消するとともに、デジタル技術を有効活用できれば、企業の中長期的な成長につながります。
IT人材が不足しているため
スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)によると、日本のデジタル競争力は低迷しています。2023年の世界デジタル競争力ランキングにおいて、日本は過去最低の32位となりました。
デジタル技術をビジネス変革の推進力として活用できない要因のひとつは、IT人材・DX人材の不足です。特にAIやクラウドなど、近年ニーズが急拡大する先端技術をビジネスに応用できるスキルを持つIT人材は多くの企業で不足しています。さまざまな業界でDXの必要性は高まっていますが、即戦力人材は希少です。
企業の成長につながるため
人材の育成は企業の成長に欠かせないものです。
企業の将来的な方向性や経営戦略を考え、それに向けた人材の育成を積極的に行うことが重要となります。また技術を身につけ将来のキャリアプランを明確にすることが、社員のモチベーションの向上や離職率の改善にもつながります。
企業がIT人材を獲得する方法
IT人材を獲得する方法として、デジタル技術に習熟した人材の新卒採用・キャリア採用が挙げられます。ただし、DX人材は獲得競争が激化しており、一般的な企業が希望通りの人材を採用するのは困難です。そのため、既存人材にデジタル技術関連の教育をし、全社的にデジタル化・DX推進の土壌を形成する方法も選択できます。
採用によるIT人材の獲得
DX需要が高まる中、日本のIT人材不足は過去最高水準といえるほど深刻化しており、人材獲得競争は激化しています。AI・クラウド・IoT・データサイエンスといった比較的新しい技術は、Webデザインのような従来型の技術に比べて学習難度が高く、人材の供給量も多くありません。数年程度の実務経験者となるとさらに希少です。
さらに、円安を背景に外資系企業が高額な報酬で大量に中途採用するなど、一般的な日本企業にとってIT人材獲得が難しい状況となっています。
育成によるIT人材の獲得
自社にとって必要なスキルセットを持ったIT人材を新たに採用するのではなく、育成するのもひとつの選択肢です。
IT人材不足を痛感していても、人材育成に投資する日本企業は多くありません。「足りない人材を補うために即戦力人材を採用する」という考えだと、激化する人材獲得競争に参戦することになります。求めるスキルセットによっては、採用は現実的な選択肢ではありません。
そこで人的資本投資の考え方が重要です。学び直しのための研修・教育制度を整えるなど、人材を資本と捉え、その価値を最大化するために投資することも検討しましょう。
企業がIT人材の育成をするメリットとデメリット
IT人材の育成は、企業のDX戦略などに応じていずれ必要となります。貴重な人材の離職を防止し、人的資本経営を成功させるためにも、IT人材の育成は必須です。
メリット
IT人材を採用しようとしても、採用担当者に十分な専門知識がなく、応募者の保有スキルを正確に判断できないことも考えられます。社内人材を育成すれば、保有スキルが見極められるようになるだけではなく、「現場に順応できない」といったミスマッチを抑制することができます。
また、社内人材に成長の機会を与えることで、帰属意識やモチベーションアップも期待できます。ビジネス変革の計画に基づき各従業員が新しい知識・スキルを活かすことで、生産性向上やイノベーション創出、中長期的な企業の成長につながります。
デメリット
従業員一人ひとりのスキルアップは、DXの実現や企業の成長にとって重要である一方で、特定の知識・スキルを獲得するという目標を達成し、戦力化するまでには相応の時間や費用がかかります。
また、育成方法によっては、育成対象者や教育担当者のコア業務にかけられる時間が減ってしまう可能性があるため、実務のフォローやスケジュールの調整などを事前に行う必要があります。
人材育成のノウハウが不足している場合や、教育担当者がコア業務にかける工数を削減することができない場合は、外部の研修機関を利用することも考えるとよいでしょう。
企業がIT人材を育成する前に知っておきたいアウトプット別の必要スキル
企業のDX戦略などに応じて必要になるスキルセットやマインドセットは異なります。例えば、デジタル技術を活用するIT人材には、開発・運用システムに応じたプログラミング言語といった基礎的なスキルだけではなく、ドキュメントの読解力や作成スキル、コミュニケーションスキルも求められます。
ITに関する基礎知識
IT人材には、システムの開発や運用に必須のプログラミング言語の習得が求められます。例えば、Webサービス開発に多用されるPHP、組み込みシステムや基幹システムにも対応できるJava、機械学習やデータサイエンスに重宝されるPythonです。また、データベース管理やネットワーク構築、セキュリティ対策に関する基礎知識やスキルも求められます。
オンプレミスの基幹システムだけでなく、これから活用しようとするクラウドサービスなど、実務で使用するシステムの運用方法に習熟することも必須です。
ドキュメント作成スキル
システム開発のワークフローでは、要件定義書・設計書・仕様書といったさまざまなドキュメントを顧客や開発チームと共有します。そのため、ドキュメントの読解力、ポジションによっては作成スキルが必要になります。
また、システムの機能や相関関係を理解した上で、アーキテクチャ図やシーケンス図を読んだり書いたりすることが求められます。
コミュニケーション力
システム開発はエンジニア1人で行うのではなく、ひとつまたは複数のチームで役割を分担し、クライアントの要求に応えるプロジェクトとして統制・推進されるのが一般的です。
チーム内のエンジニアはもちろん、クライアントや社内の関連部署といった非エンジニアとも、スムーズに情報共有できるコミュニケーションスキルが求められます。ポジションによっては、チームやプロジェクト全体を統括するリーダーシップも必要です。
IT人材育成が成功している企業事例5選
ここでは、IT人材・DX人材の育成に成功した企業事例5選を紹介します。いずれも新しいデジタル技術の導入とデジタル技術を活用できる人材の育成を行い、デジタル化やDXを推進し、業務効率化や新規事業創出といった経営目標の達成につなげた事例です。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社は、経済産業省・東京証券取引所・IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)による「DX銘柄2024」に選定された数少ない企業の一角で、DX推進のための人材育成プログラムなどが高く評価されています。
2017年には新規事業創出を目的にDX本部を発足し、社内IT人材の育成や共創パートナーとの事業開発を進めました。2023年5月からは全従業員約2万人を対象に、生成AIの利活用を積極的に推進しています。企業のDX支援や社会のDXに向けた新たな取り組みが評価され、4年連続でDX銘柄に選定されるなど、IT人材育成やDX推進を象徴する企業です。
ダイキン工業株式会社
業務用空調機メーカーとして著名なダイキン工業株式会社も、IT人材育成プログラムなどが評価され、DX銘柄2024に選定された企業です。
2017年に社内に設立した「ダイキン情報技術大学」を中心にデジタル人材の育成に注力しており、空調技術に精通した独自のIoT・AI人材の育成に取り組んでいます。新入社員だけでなく経営幹部も育成対象とし、2026年3月期末には社内のデジタル人材を2,000人に増やす計画です。
また、戦略経営計画「FUSION25」に沿って2023年度からの3年間で1,800億円のデジタル投資を行うなど、さらなるグローバル展開を目指しています。
日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスは全社スローガン「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」の下、ここ数年で一気にデジタル化を推進し、業務アプリの内製化や業務効率化を実現しています。
IT部門がサポートしつつ全社的にITリテラシーを底上げし、ローコード・ノーコード開発ツールを駆使して2年間で350超のシステムを内製しました。
他にも、生成AIを活用して3万時間超の業務を効率化する、RPAを活用して約800の業務を対象に年間17万時間の業務工数を削減するなど、歴史ある大手食品メーカーの抜本的なビジネス変革が進んでいます。
グランド印刷株式会社
グランド印刷株式会社は、DXに取り組む中堅・中小企業のモデルケースとなる優良事例を選定する「経済産業省DXセレクション」で2023準グランプリを受賞した企業です。
2009年からIT人材の育成や社内DXを推進し、クラウドサービスの利活用や基幹システムの自社開発、新規事業創出を実現してきました。自社の成功事例に基づき、他社向けに「DXプロデューサー」の育成支援も行っています。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは、DXを成長戦略と位置付け、2026年までの5年間で1,000億円の投資を予定しています。2023年度より、全社員向けにDXの知識・スキル習得を促しつつ、デジタル領域の専門性を有する人材育成のために「DX人材育成プログラム」を開始しました。
DX戦略の実現を主導するコア人材の育成と全社員のリテラシー向上を同時並行で進め、金融業界の内外における意欲的なDX事業も展開しています。
企業がIT人材を育成する手法
スキルマップの作成は、IT人材育成計画の立案や習熟度管理に役立ちます。実際の教育手法を大別すると、OFFJT・OJT・OJDの3種類です。育成効果を高めるために、eラーニングの導入も検討するとよいでしょう。
スキルマップの作成
人材育成の際にはまずスキルマップを作成するのが効果的です。スキルマップとは従業員が、それぞれ何のスキルをどれだけ習得しているかというのを表にしたものです。スキルマップを作成することで現在の全体的なスキル習得状況を把握し、育成計画を立てやすくします。
目的
・可視化する
誰が何の技術を持っているか、またその習得の度合いはどれぐらいかといったものを一覧できるようにします。
・育成の計画が立てられる
可視化することで企業全体として今何のスキルが不足しているか、何のスキルが必要になるかといったことを把握し、経営戦略に基づいた技術の向上をはかることができます。
スキルマップ作成ツール
スキルマップはExcelなどの表計算ソフトで作成することもできますが、専用のツールを使うことでより効率的に管理できるようになります。
SKILL NOTE
スキルや資格、教育などを一元管理するシステムを構築することができるサービスです。
【特徴】
・スキル管理と資格管理
スキルマップだけでなく事業所や部署ごとに資格の取得状況、その有効期限まで管理することができます。
・教育管理
過去に受けた研修の履歴を一覧することができます。
・研修の告知
管理画面から研修の告知を指定した社員に送ることができます。受講側もSKILL NOTEから申し込みできるため、研修をスムーズに実施できます。
【料金】
月額:30,000円~/月
COCOREPO
インストール不要なクラウド型サービスで、視認性の高いフラットなUIが特徴です。
【特徴】
・30名まで無料・アカウント作成ですぐに利用可能
人数によってプランの変わる分かりやすい月額プランとなっています。また、30人以内の少人数なら無料で使用できます。
・人材管理機能
顔写真つきのスキル管理画面からプロジェクトの作成、メンバーの割当を行うことができます。スキルマップを参照しながらの人材の管理が可能です。
・見やすく使いやすい画面
PCの操作に慣れていない人でも問題なく利用できます。
【料金】
初期費用:無料
月額
無料プラン:無料(30人まで)
ライト:19,000円(31人〜100人)
スタンダード:36,000円(101人〜300人)
エンタープライズ:90円/人(301人〜)
カオナビ
顔写真を使った全体をイメージ・把握しやすい画面が特徴です。
【特徴】
・スキルの一覧化
社員の技術や個性、能力状況や過去の実績を可視化、一覧します。
・アンケート機能
オリジナルのアンケートフォームを作成、運用できます。社員の現在の考えや状況の把握を行うことで、それぞれが本来の力を発揮できるようにします。
・顔写真つきの見やすいUI
社員のプロフィールをすぐに確認できます。メンバーから条件を指定し、メールを一括送信することもできます。
【料金】
月額
データベースプラン:39,800~/月
パフォーマンスプラン:59,700~/月
ストラテジープラン:79,600~/月
OFFJT・OJT・OJDの実施
人材の育成には大きく分けてOFFJT・OJT・OJDの3つがあります。
OFFJT
業務を離れた場所での学習をOFFJT(Off the Job Training)といいます。 OFFJTに分類されるものには研修やセミナー、後述のeラーニングなどがあります。ビジネスマナーなどの社会人としての基礎知識や各業種の専門的な知識について座学で体系的・総合的に学びます。
OJT
職場において上司が部下に、マンツーマンで日々の業務に必要な技術を教える教育のことをOJT(On the Job Training)と呼びます。仕事を進めながら育成ができる反面、教える側の負担が大きくなるというデメリットも存在します。
OJD
OJD(On the Job Development)は業務の中で上司が部下に教育するという部分でOJTと共通するのですが、OJTが今の仕事で使うスキルを身につけるのに対しOJDでは将来的に必要になる知識や技術を長期に渡って習得します。
eラーニングの導入
OFFJTのひとつに、eラーニングという情報技術とコンピュータを使った学習があります。具体的にはパソコンやスマートフォンといったデバイスとネットワークを利用します。eラーニングで研修を行うサービスは多数提供されています。
メリット
・コスト削減
会場や教材の費用を抑えることができます。
・時間と場所を選ばない
デバイスとネットワークがあればどこでも学習が可能なため、時間を有効に活用することができます。
・進捗状況を把握できる
eラーニング研修サービスの多くは学習状況を一覧、管理できるシステムを搭載しています。受講者全員のデータを一覧できるため、現在の進捗状況がいつでもすぐに確認できます。
eラーニング研修サービスの例
SAKU-SAKU Testing
コンプライアンス、ビジネスマナー、コミュニケーションなどの豊富な教材が用意されています。
また、SAKU-SAKU Testingが提供している教材だけでなく独自の問題を作成し、オリジナルの社内試験を実施することなどもできるようになっています。
コンテンツは動画以外にPowerPoint教材にも対応しているため、現在研修などで使用している既存の教材をそのままWeb上での教材やテストに利用することも可能です。
【特徴】
・多機能でありながら使いやすい
管理側、受講側ともにシンプルな操作性で、問題の作成や登録なども簡単に行うことができます。
・リアルタイムで進捗管理可能
成績の一覧や進行状況について、常に把握することができます。
・さまざまなWebコンテンツに対応
テキストだけでなく音声・動画・スライドショーといった多様なコンテンツを駆使した教材を利用することができます。
【料金】
月額
サクテスライト30(利用者人数30人~):680円~/ID
サクテススタンダード300(利用者人数300人~):390円~/ID
無料トライアルあり
Schoo
動画による学習サイトSchooの法人向けサービスになります。最初から利用できる4500本以上の動画教材があり、また独自の教材作成も可能です。
学習状況の可視化・分析機能が充実している他、受講側がレポート提出を行ったり、管理側がオンライン研修を実施したりできるようになっています。
【特徴】
・豊富な提供コンテンツ
最初からビジネススキルや各種専門スキルに関する動画教材がそろっています。
・多機能な管理システム
学習の進行状況や受講履歴による興味・関心の分析、オンラインの研修実施などさまざまな機能を利用することができます。
・動画ダウンロード機能
スマートフォン端末には動画をダウンロードすることができます。あらかじめダウンロードしておくことで出先での学習も可能です。
【料金】
都度見積。サイトよりお問い合わせください。
学びばこ
シンプルで使いやすいことに重点をおいたシステムで、eラーニングの運用が初めてであるという場合におすすめのサービスです。
基本的に教材は別途用意する必要がありますが、コンテンツの販売、作成のサービスも提供されており、オーダーメイドの問題を作成することも可能です。
【特徴】
・簡単で直感的な操作
普段PCにあまり触らない人でも問題なく利用できるインターフェイスになっています。
・各種データに対応した教材作成機能
Power Point・PDF・Excel・Word・mp4をコンテンツとしてアップロードし、教材の作成に利用することができます。
・マルチデバイス対応
PCだけでなくスマートフォンやタブレットに対応しており、それぞれで快適に操作可能です。
【料金】
初期設定費用:50,000円
月額
5名:15,000円/月
15名:30,000円/月
30名:50,000円/月
企業がIT人材を育成するステップ
IT人材を育成するステップとしては、育成のゴールを決め、それに基づいて育成対象者を選定し、スキルマップを活用して現状のスキルを把握します。個々の従業員にスキルセットやマインドセットの教育をしたら、実務の中でアウトプットを促すことが重要です。
1.育成のゴールを決める
まずは育成のゴールを設定し、目標とする人物像を明らかにします。
例えば、「新しく導入するデジタル技術で業務を効率化したい」「デジタル技術を活用して新規事業を創出したい」など、人材育成の目的を明確にしましょう。
目的を定めた後は、必要なスキルセットを明確にするだけではなく、目的から逆算していつまでに・どのレベルに到達させる必要があるのかを明確にするとともに、育成する人数などを明確にします。
2.適正人材を選定する
目的を達成するために必要なスキルセットに基づき、視野を広く持って適性のある人材を選定します。
ビジネスモデルの創出を目指すなら、DX戦略を主導できるコア人材を選定するとよいでしょう。クラウドサービスや生成AIを活用して業務効率化を目指すなら、全社的なITリテラシーの向上が必要です。人材育成の先にある組織像を実現するためには、どのような人材がふさわしいのか、という観点で選定すると良いでしょう。
3.育成対象者の能力を把握する
次のステップは、「育成対象者の現在の能力を把握する」です。現状の能力を把握することで、不足しているスキルがどのようなものなのかが明確になり、効果的な育成計画の策定が可能になります。
また、育成対象者のスキルマップを作成すると、どの従業員にどのような教育が必要か可視化しやすくなります。
現在の担当業務で発揮する機会はないものの、プログラミングや生成AI活用の経験がある従業員の発見につながるケースもあります。
4.必要なスキルの学習
「1.育成のゴールを決める」で決めたゴールや、「3.育成対象者の能力を把握する」で把握した育成対象者の現在の能力に応じて最適化した育成プログラムを提供することが理想です。
例えば、IT経験が全くない従業員であれば、適宜質問ができ基礎的なところから学習できる集合研修のが良いと考えられ、反対にIT経験が豊富な従業員が最新のITスキルをキャッチアップするのであれば、コア業務に支障が出ない範囲でeラーニングで学習するといった育成プログラムを計画できると良いです。
5.実務によるアウトプット
人材育成の経験が少ない企業は、インプットを重視した教育を行う傾向にありますが、教育課程を修了すると育成計画の区切りがついたように見えますが、学んだ内容を実務に活かせるとは限りません。
そのため、OJTを通じて実務によるアウトプットを取り入れるなど、身に付けたスキルを実践できる場を提供することで、育成効果が向上しやすくなります。
また、新たなスキルが実務で活かせることを経験すると、継続的な学習に対するモチベーションも上がやすくなります。
企業のIT人材育成で直面しやすい問題点とその解決策
IT人材の育成は、計画した通りに進まないことや好ましくない変化を招くこともあります。育成対象者のメンタルヘルスケアには「ラインケア」が有用です。コミュニケーションスキルの課題や戦力化の難しさなどにも、有効な対処方法があります。
「ラインケア」で適切な対処をする
メンタル不調者の増加や退職者の増加には、周囲の人が適切なメンタル不調の知識を身につけ、適切な対応ができるようにすることが必要です。
上司が部下のメンタルヘルスケアを行うことを「ラインケア」といいます。
「ラインケア」の中には「早期発見」「声掛け」「適切な対応」などが含まれます。
例えば「早期発見」のコツとして有名なのが、ある本でも紹介されている、「ケチな飲み屋」サイン。
- ケ=欠勤
- チ=遅刻、早退
- ナ=泣き言を言う
- ノ=能率が下がる
- ミ=ミスが増える
- ヤ=辞めたいと言う
こういったサインを見つけ、早期に声掛けをすることは、メンタルヘルス不調の防止だけでなく、若手社員の早期離職の防止などにもつながります。
ラインケアの知識を社内研修などで身につけ、適切な対処ができるようになることで、部下のメンタルヘルス不調や、離職を防ぐことができます。
メンタルヘルスについて専門的な内容を習得できるよう、研修やeラーニングシステムを活用しましょう。
厚生労働省のサイトでも、無料のラインケアのeラーニングやコラムなどが紹介されています。
「部下のケアをするほど上司に時間がない。」という声もあります。
そういった企業はHRテクノロジーを活用して、優秀な人材が辞めていく前にぜひ取り組みしてみることをおすすめします。
アクセンチュアや楽天などの企業も積極的に活用し、社員のケアに努めています。
ITの基礎知識を学習
業務を進める上で、営業や企画、マーケティングなどビジネスサイドの人とエンジニアとのコミュニケーションは必要不可欠です。
・インターネットの仕組みを学ぶ
営業サイドで受注してきた案件をエンジニアが開発するケース、企画サイドで考えたものをエンジニアが形にするケースなどさまざまありますが、コミュニケーションを取る上でビジネスサイドの人がインターネットについて理解していることで業務が円滑に進むことも多くあります。
まずは、業務に関わる範囲で普段使っているシステムや見ているサイトの裏側はどう動いているのか理解することが重要でしょう。
・プログラミングの基礎を学ぶ
エンジニアの多くは業務の中でプログラミング言語というものを書いています。
プログラミング言語自体もかなりの数ありますが、システム系の会社であればC言語やJava、Web系の会社であればPHPやRubyを学ぶことをおすすめします。
機能の実装方法を知ることで、エンジニアが作業する上でどれくらい時間がかかるものなのか、どの程度の難易度なのかイメージができるようになり、コミュニケーションも円滑に進むでしょう。
最近では、新卒だけでなく既存の社員向けにもITスキルを身につけるOFFJT研修を行う企業が増えてきています。
1日から数か月のプログラムなど期間もさまざまあるので、状況に合わせて探してみてください。
忙しい管理職をサポートする適切な研修
管理職がうまく育たないという問題には、体系的な教育が有効です。
前述したように、「プレイングマネージャー、管理職両方の業務に集中するのが時間的に困難」ということが背景にあります。
「任命したならしっかりサポートしてほしい」という声がある一方で、いざ管理職に登用されると「新任管理職研修」で心構えを叩き込まれ、その後のサポートが全くないケースが多く見受けられます。
そのため、管理職として求められる要素について複数回の研修などでサポートし、現場での実践を促すことが必要です。
例えば、管理職と部下のコミュニケーション。
「傾聴」「アサーション」「ラインケア」「評価(フィードバック)」「指導」「ハラスメント防止」など多数のテーマが存在します。
自社の管理職に必要とされる能力をブレイクダウンし、それに合わせた教育プログラムを立案しましょう。
特に次世代の役員層として育成したい管理職に対しては、メンター制度を実施して社長や役員などをメンターとしてつけ、定期的に面談をすることでモチベーションを高め、相談にのってもらえる環境を作ることも有効です。
異業種交流で中堅社員のモチベーションを高めよう!
中堅以上の社員の能力育成には、自律的な学習を促す環境作りが必要です。
学習機会として、社内勉強会や、取得した資格に対する奨励金を設けている企業は多いと思います。
そのほかに、社外研修やセミナーによって、他社の社員の技術力や取り組み姿勢、勉強への熱意を肌身に感じる機会を作ることが有効です。
特に、ディスカッションや情報交換などが多く、必然的に他社社員と交流をせざるをえないプログラムを選ぶようにしましょう。
また、学習や研修制度を充実させることで採用の母集団形成にも大きな効果が見込めるため、一石二鳥です。
「内省を促す」ことで若手社員の主体性を目覚めさせる!
・経験した業務を最大限に生かすための「内省」とは
若手社員の成長を促し主体性を目覚めさせるには「内省」が有効です。
時代が変わり、従来のやり方で人も事業も成長しなくなった現代では、「成功したやり方を踏襲させるために教える」という方法が通用するとも限りません。
若手、ベテランに関係なく、これまでやったことのない業務に直面することも多いはずです。
そのため、経験したことを振り返り、経験則を導き、次の業務に活かしていく、「内省を促す」ことが重要となるのです。
・内省を促す方法
内省を促すためには、安心して話せると感じさせる関係構築と、適切な問いかけが必要です。
自分の言ったことが絶対に否定されないという安心感がなければ、若手社員は委縮し、上司の考える「正解」を追い求めようとしてしまいます。
安心して話せると感じさせる環境づくりや、適切な問いかけには、ヤフー株式会社などで取り入れられているコーチングの技術が役に立ちます。
1. コーチングの技術 オウム返し
コーチングの手法にはさまざまなものがありますが、最も簡単なのが「オウム返し」という手法です。
例えば相手が「最近疲れているんです」と言ったら「疲れているんですね」と同じことを言い返すことを言います。
ここで重要なポイントは「疲れているときは早く帰って早く寝るのが一番だよ」などと自分からアドバイスをしてしまわないことです。
「疲れている」という相手が感じていることを、ただオウム返しすることで、相手は「自分の言っていることをこの人は否定しないな」と安心感を持ち、心を閉ざさずに話を続けてくれます。
2. コーチングの技術 具体化する質問
安心感が醸成できたら、さまざまな質問を投げかけてみましょう。
例えば、「その時どう感じたんですか?」「それってどういうこと?」など、部下の発した言葉や起こった事柄を具体化し、部下と同じ目線に立つような問いかけが有効です。
こういった問いを何度も繰り返すことで、部下は経験したことを正確に振り返り、意味づけし、自然と「次はこうしよう」という解にたどりつくはずです。
・「内省」の効果
こういったことを、上司に身に着けてもらい、若手社員が業務に失敗した時やちょっと元気がないなと感じた時などに試すよう継続的に促してみてください。
常に問いかけ、自分自身でできごとの振り返りをさせることで、業務への「やらされ感」が減り、若手社員が自ら考え、成長するきっかけになります。
まとめ
IT人材の育成は、DX戦略の推進や企業の中長期的な成長にとって重要です。即戦力人材の採用は難しくとも、デジタル技術を活用するための教育を既存人材に実施することで、デジタル化・DX推進の土壌を形成できます。
しかし、全社的なITリテラシー向上や十分な専門知識を持つDX人材の育成は、社内リソースだけでは困難なケースもあるでしょう。リソースやノウハウが不足しているなら、IT研修・DX研修に強みのある研修会社を活用し、研修計画の企画から並走サポートを受けるのが得策です。
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