エンジニアの適切な評価方法とは?評価基準ポイント・注意点と事例
エンジニアの評価方法に悩んでおり、どのような評価制度を策定すべきか知りたい方もいるでしょう。エンジニアを評価する目的や主な評価基準、評価制度の策定方法・注意点や事例を解説します。エンジニアも納得できる評価制度を策定しましょう。
エンジニアの評価項目は一般的な業務に比べると多岐にわたります。また、営業職のように売上などの数値で評価ができない項目も多く、評価が難しい職種です。適切にエンジニアを評価できないことで、重要なポジションにいるエンジニアが離職したり、あるいは採用できなかったりという問題が発生します。
このような問題を解決するには、エンジニアの評価基準を適切に設定する必要があります。評価制度を上手に取り入れたり改善し続けていたりする事例からも学び、エンジニアからも納得感のある評価制度を策定しましょう。
目次
エンジニアを評価する目的とは
エンジニアに対する評価は、他の職種と同じく給与や昇進に影響するため、知識・スキルだけでなく実績や貢献度も含めて総合的に評価することが求められます。しかし、エンジニアの仕事内容には、売上や利益などの業績に直接寄与しないものもあります。
例えば、「自社のWebサイトの運営」「社内システムのDX化」といったものがあげられ、後方の業務が評価されずにエンジニアが不満を抱いてしまうケースは起こり得ます。この記事ではエンジニアの適切な評価方法や評価基準について触れ、ポイントや事例も紹介していきます。
エンジニアの評価基準は6つある
エンジニアの評価基準は企業によって異なりますが、以下6つを評価項目として設定する企業が多いようです。
- 技術的スキル
- 業界知識
- プロジェクト経験
- マネジメント能力
- コミュニケーション能力
- 語学力
それぞれの評価基準について、考え方や重要性を詳しく解説します。
技術的スキルの評価
ITエンジニアの評価基準として技術的スキルは基本です。使用できるプログラミング言語や開発ツールなど、業務上必要となるスキルセットを持っているかは重要な指標です。社内で必要な技術的スキルと、プロジェクト単位で見た技術的スキルが異なる場合があり、両方の面で評価をしなければエンジニアに対して適切な評価ができません。
また、プログラミング技術の進歩は早く、新しい技術を積極的に取り組めるかどうかも評価すると良いでしょう。
業界知識の評価
IT業界の動向やトレンドに対する姿勢も重要な評価基準のひとつです。IT業界は新しい技術の登場が早く、トレンドの移り変わりが激しいため、数年前の最新技術が通用しなくなることは珍しくありません。
最新技術を貪欲に吸収していけるか、また技術を応用して他社に先んじてイノベーション創出を起こせるかは、企業価値に大きく影響するでしょう。ただし評価に際しては、評価する側もIT業界の動向をしっかり把握しておかなければ、適切な評価ができないので注意が必要です。
プロジェクト経験の評価
プロジェクトへの参加経験や実績もITエンジニアの重要な評価基準です。分かりやすい指標として、プロジェクトの難易度・規模や求められる知識・スキル、企業や社会に対する貢献度などを挙げられます。
経験に対してエンジニア自身がどのように思っているのかも評価指標となります。その経験で得た教訓や習得したスキル、課題などをヒアリングし、ヒューマンスキルの評価にも役立てましょう。
マネジメント能力の評価
ITエンジニアの評価基準として、マネジメント能力も重要です。プロジェクトには予算・納期・人員・品質などの決まりがあり、プロジェクトリーダー・チームリーダーなど各階層でマネジメントスキルが求められます。ただし、役職によって求める能力が違う点は留意しなければなりません。
例えばSEやプログラマーなど、自身の業務のみで完結する役職であれば、品質管理や期限を守れたかどうか、PM(プロダクトマネージャー)の役職では、プロダクトやチームに所属するエンジニア全体を管理する能力が求められます。役職と評価がミスマッチにならないように、役職ごとに適切な評価を設定しましょう。
コミュニケーション能力の評価
エンジニアは各自が黙々と手を動かすイメージを持たれがちですが、実際にはチーム単位でタスクを割り振ってプロジェクトの完遂を求めることが通常です。チーム内での円滑なコミュニケーションはもちろん、階層によってはクライアントやベンダー、パートナー企業や社内の各部署との折衝も求められます。
基本的な報連相のほか、適切なヒアリングができたりするなど対人折衝能力や情報伝達の積極性・正確性も評価対象です。
語学力の評価
インターネット・プログラミング言語・ネットワーク・セキュリティ・OSなどのさまざまな分野のIT技術は、英語圏で開発・管理されることが一般的です。技術文書の原文は基本的に英語であるため、最新技術に対応するなら少なくとも英語の読解力は必須となります。
外国企業と共同開発するなどコミュニケーションに英語が必要なプロジェクトも増えており、リスニング・スピーキング・ライティングスキルも評価対象です。
エンジニアの評価制度を作る方法
エンジニアの評価制度を策定するには、まず評価目的を定めることが必要です。目的に応じて評価基準を定め、職種に合わせた評価項目を決定します。ここでは、エンジニアの評価制度の作成方法を3ステップに分けて見ていきましょう。
評価目的を定める
まずは何のために評価を行うのか目的を決定しましょう。それにより、評価項目の設定が変わってきます。例えば採用のための評価であれば、入社後の成長を見越した上での評価となります。現在持っているスキルよりも、成長性やコミュニケーション能力を重視する場合もあるでしょう。一方、目標が事業成長であれば、現在のスキルやこれまでの実績を重視して評価する必要があります。
評価基準を定める
評価基準は企業によって異なりますが、経済産業省が策定したITSSを参考にすると評価を標準化しやすくなります。ITSSとは、「ITスキル標準」とも呼ばれ、ITサービスの分野11職種38専門分野ごとに最高7段階のスキル・レベルを設定しています。職種に共通するキャリア・スキルフレームワークに基づくレベル判定は以下の通りです。
レベル1 | エントリーレベル | 職種に最低限求められる基礎知識を有する |
レベル2 | ミドルレベル | 基本的な知識・スキルを有する |
レベル3 | ミドルレベル | 応用的知識・スキルを有する |
レベル4 | 高度IT人材・ハイレベル | 高度な知識・スキルを有する |
レベル5 | 高度IT人材・ハイレベル | 企業内のハイエンドプレイヤー |
レベル6 | 高度IT人材・スーパーハイレベル | 国内のハイエンドプレイヤー |
レベル7 | 高度IT人材・スーパーハイレベル | 国内のハイエンドプレイヤーかつ世界で通用するプレイヤー |
職種に合わせた評価項目を決める
職種ごとの評価項目・達成目標を設定します。例えば、アプリを運用するエンジニアであれば開発力や集客性、ユーザーの満足度など。社内システムを担当するエンジニアなら、社内システムの使いやすさや運用の適切さなどを評価しても良いでしょう。マネージャークラスであれば、マネジメント能力が評価項目となります。
職種ごとに必要な評価項目を洗い出し、目標はエンジニア自身の行動で達成できるものを設定する必要があります。
エンジニアを評価する際に注意すべきこと
エンジニアを評価する際、ありがちな失敗を避けることも大切です。例えばプロジェクト単位の評価を個人の評価に直結させることや、成果物のみで評価することが挙げられます。また定量評価と定性評価をバランス良く取り入れることや、評価基準の定期的な見直し、第三者の意見を参考にすることもポイントです。
プロジェクトの評価を個人の評価にしない
プロジェクト単位での評価を個人の評価に直結させないように注意しましょう。エンジニアの評価基準は、プロジェクトではなく各エンジニアを適正に評価するためのものです。参加したこと自体が大きく評価されると、メンバーごとに異なる貢献度などが反映されないほか、参加できなかったエンジニアに不公平感が生まれます。
大きなプロジェクトに参加することは経験として重要ですが、それとは別軸で役割や貢献度などを詳細かつフラットに評価することが重要です。
成果物のみで評価しない
成果物のみで評価しないことも重要です。成果はチームワークの結果で、プロジェクト進行中にはスケジュールや人員・品質のマネジメントがあり、メンバーそれぞれの発揮した能力や果たした功績も異なります。
また成果物にフォーカスすると「努力してもリーダーの手柄になってしまう」という状況になりやすく、権限の小さいエンジニアは報われず、自社に貢献しようという意識も芽生えないでしょう。成果に関わらず、プロセスを重視して評価することが大切です。
数値化できない部分の評価基準を考える
数値化できる項目のみ評価対象とする定量評価偏重になると、「数値化できないことをやっても評価につながらない」という雰囲気が形成され、成長や価値創出を阻害します。
例えば「誰もが読みやすいコードを書くこと」は、機能追加やバグフィックスなど後工程の作業効率を上げるという意味で重要ですし、「標準化されていない最新技術を率先して取り入れ、結果的に開発レベルが向上した」といったチャレンジ精神も評価されるべきといえます。定量評価と定性評価のバランスを取った評価基準を検討することも重要です。
評価基準は定期的に見直す
評価基準は定期的に見直すようにしましょう。ひとつ目の理由は、より適切な評価を下すためのアップデートです。実際に働く中で、不要な評価基準の削除や新たに必要な項目の追加、重要度の見直しなどを行います。
次に業界全体の動向やトレンドを踏まえた上での見直しです。近年、AIが色々な分野で浸透してきており、AIに対する理解度やスキルが重要視されています。社内にとって必要なエンジニアがより高く評価されるように修正します。
第三者の意見を参考にする
エンジニアの評価は一般的にチームリーダーや上司などが行いますが、発揮した能力や果たした功績を詳細かつ公正に把握するには、さまざまな関係者からヒアリングする必要があります。
特に、エンジニアのスキルは同じエンジニア職の人間でなければ理解ができません。システム開発や運用においては、上司やチームリーダーよりも、実際にシステムを使っている他の社員やクライアントの声の方が重要になります。そうした第三者の意見もキャッチアップした上で評価を行うようにしましょう。
エンジニアの評価制度を取り入れた企業の事例
エンジニアの評価制度は実際に多くの企業で採用されています。例えばGunosyのリードエンジニア制度、GMOペパボの統一された評価基準やエンジニア職位制度などです。ここでは、エンジニアの評価制度を上手に取り入れ、また改善し続けている4つの事例を紹介します。
Gunosyの事例
Gunosy(グノシー)では、ITエンジニアの評価は所属チームのマネージャーが主体で評価を行っていましたが、技術面に詳しい「リードエンジニア」も交えて評価する体制に刷新しました。
これにより短期的な成果だけでなく、「チームやプロダクトが競争力を発揮していくために何が必要か」という中長期的な戦略視点からの要求を、リードエンジニアというまとめ役を通じてエンジニア陣に伝えられるようになりました。技術面に対する相談や助言が可能になり、よりエンジニアが育ちやすい環境に改善できたのです。
GMOペパボの事例
GMOペパボは「作り上げる力」「先を見通す力」「影響を広げる力」という3つの評価軸で、全職種の評価基準を統一しています。CTO以下1等級~8等級のエンジニア職位制度も特徴的です。
1等級~3等級(ジュニア)のエンジニアは、半期ごとのエンジニア評価のタイミングで立候補・面談を経て、通過するとプロフェッショナル軸またはマネジメント軸の上位職位に昇格できます。4等級以上になると報酬が大幅増額され、エンジニアとしてのキャリアアップが非常に分かりやすい評価体制・職位制度です。
クックパッドの事例
クックパッドは、若手の新卒エンジニアが増えたことで、人材育成のための評価体制が問題になりました。エンジニアの評価者である上長がエンジニアではないケースが多く、また上長の面談も行き届かず、キャリア形成を見越した技術観点のフィードバックが課題でした。
そこで「テックリード」と呼ばれる「ミニCTO」のようなポジションを創設し、技術・マネジメントの両面から熟練のエンジニアが評価することで、全エンジニアの様子が手に取るように分かるようになりました。現在はテックリード制度を通じて各社員の自主性を伸ばすことで、「自考自動」できる組織を目指しています。
Rettyの事例
Retty(レッティ)では2015年ごろから社長によるエンジニア評価が人数的に限界を超え、個人によるMBO(目標管理制度)や匿名の360度評価を採用しました。しかし「評価のたびにモチベーションが下がる」という問題が発生し、貢献成果に対する評価から、「エンジニアによるエンジニアの評価」に切り替えます。
その後フィードバックの内容を「成長」にフォーカスしたものの、改善が評価につながらないという問題が発生しました。これを受けてエンジニアFBが評価につながるよう企業の評価制度を変更し、さらに評価基準の不明瞭さを解消するためにコンピテンシー(行動特性)重視にするなど、評価制度を改善し続けています。
まとめ
エンジニアの評価制度は、一般職と比べると評価項目が多くて難しい面もあります。適切な評価ができなければ社内エンジニアの不満がたまりモチベーションの低下や離職にもつながるでしょう。自社で必要なエンジニアの採用や育成が間に合わず、適切なプロダクト運営が行えない可能性も高まります。
エンジニアの役職や目的、それぞれの業務内容にあった評価項目の策定が必要です。また「エンジニアによるエンジニアの評価」であることや、成果偏重ではなく努力やコンピテンシー(行動規範)が評価される体制を構築するなど、公平性・透明性を担保できる環境構築も必要です。
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